#26 疾走!ワールドランナーズ!!⑯『うつりぎネクスト』
混乱の内に様々な謎を残し『ワールドランナー』は終焉を迎えた
街は次第に活気を取り戻しつつ
優勝者である『Dr.T』(博士)の指揮の下
復興が進んでいた
もっとも、ギルドによっておだてられ
気分を良くした『彼』が無償で事を成すという構図は
毎度のように繰り返されてきたものであるのだが・・・
彼にしてみれば『様々な成果』を得たという満足感と
有用な『実験対象の発見』という事になるのだった
「おっちゃ~ん!き~た~で~?」
「おおっ!早速、実験体・・・ゲフンゲフン!」
「よく来てくれたな、キミたち」
途中、怪しげな単語が入り混じるものの
特に問題にする事無くベルカを招き入れる博士
「ハーポ君、さっそく『アレ』を準備してくれたまえ」
「・・・本当に大丈夫なんですか?」
「私の計算に狂いはない!・・・はずだ」
「知りませんよ?私」
奥の部屋に引っ込んだ彼女の方から
ガタガタと何かを引っ掻き回す音が聞こえてくる
「キミたちには・・・おや?」
よくよく見るとこの場にはベルカ一人しか居ない
「もう一人の方はどうしたね?」
「アインか?アイツやったら疲れて動けんよって」
やれやれと、首を振って言う
「それはまた、好都合・・・」
「?」
どうも胡散臭さが漂っているが
当のベルカは気に留めることも無く
周りのガラクタに興味を引かれていた
「では、今回の依頼を説明しよう」
テーブルに拡げられたのはとある『鉱山の地図』
「この鉱山には、時折奇妙な鉱石が採れる事があってな」
彼が指示したのは鉱山の最深部
「この場所に、特異的な『歪み』があるのだ」
「ゆがみ??」
「簡単に言うとですね『とにかく怪しい』ということです」
考えることが苦手なベルカを察してか
単純にして明快な言葉で説明する
「何が有るのか判らない場所に行くには『適任者』が必要と思いまして」
言いながら何やら持ち出してきた
「コレをお持ちくださいです」
渡されたのは一本の『剣』
「コレ、何か変やな・・・?」
まじまじと眺めながらつぶやく
「さすがですね、ご明察です」
あくびれる事も無く言葉を続ける
「この剣には、とある『意思』が憑いてまして」
「彼女が、今回の『案内役』という事か?」
「おわっ!?」
突然割り込んできた声に驚きを隠せない
「なんやコイツ!?喋りよるんか??」
「『コイツ』とは失礼なものだ」
『自分の意思を持った剣』
どういう原理かは知らないが
かつては『生物』であった彼
そんな彼が滅び逝く身体を捨て去り
その『剣』へと自らを宿すこで永遠ともいえる時間を過ごしてきた
何の因果か偶然か
博士に拾われたことによって彼は自らの存在を示すことになる
「で?コレ持ってどうしろってんのや?」
「コレではないというのに・・・」
「目的地である鉱山に赴いてもらい『歪み』の正体を確認してきて欲しいのです」
愚痴る剣をよそに更なる説明は続く
「こんなん、ウチだけで行ってきたるわ」
「そこに入るには『彼』の力が必須なのだよ」
地図に示されるのは謎の紋章と謎の文字
「この場所は『歪み』が存在する
その歪みを突破できるのは『彼』だけだ」
「だが、私は『身体』を失くした身
そこで君が必要という事だ」
「勿論、依頼達成の暁には報酬も用意させてもらいますよ」
怪しげな依頼に
怪しげな者達
それでも、彼女の好奇心の前には
些細なものでしかないのだった




