表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トレジャーバンディッツ  作者: TAMA-RUN
2/28

#02 不器用な言葉

それは

夜空の月が大地に舞い降りたようだった


その翼を広げた雄々しき姿は

何よりも美しく


そして


得難き存在


それ故に

その姿は


幻なのだ。




ジメジメとした空気が、肌を濡らす

鬱蒼と茂る木々によって昼なお暗い

この『沼地』で獲物を追う。


今回の依頼ハントは『怪鳥・ブライトランナー』撃退

主に沼地を縄張りとしているモンスターだが

時折、近隣の村の畑に現れては作物を食い荒らしてしまう

基本的に害は少ないのだが村人にとっては死活問題だ。


「まずは、腕前を見せてもらうわ」

『ツバメ』と名乗った女性ハンターが放った言葉


それを示すために、三人はやってきたのだが

不意打ちの閃光攻撃を受け、そのまま見失ってしまった。


「まるで素人ね・・・」

呆れたように、そしてふてくされたように言う


「貴女の美しさに比べたら、奴の閃光なんて霞んでしまう」

すかさず、ツバメの手を握りしめる


「その閃光で、逃げられたんやろが!!」

ベルカがアインの後頭部にツッコミを入れる


「まぁ時間は有るし、ノンビリいこうぜ?」

当事者のアインが言う


どんな時でも楽観的なのが、彼らである


「それにしても、珍しい戦い方やな・・・?」


ベルカの視線の先は、ツバメのもつ武器

それぞれの両手に、剣を持つ俗に言う『二刀流』だ


この地域では、それぞれに『剣』『盾』という

オードソックスなスタイルが支流であるのに対し

ツバメの『二刀流』は防御を捨て、攻撃の手数に特化した攻撃技術である。


「私の国では、これが支流よ」


ツバメは元々この『リング・リンク』の人間ではない

極東の島国である『ヤマト』と呼ばれる国の出身なのだ


ヤマトは他の国との交流は薄く

独自の文化によって成り立ってきた


リング・リンクの出で立ちが

獣の皮や、鱗で作られているのに対し

ヤマトのそれは、主に布を使用し作られている


「・・・来るで!」

「ああ!」


上空に怪鳥のいななきが響き渡る


「まずは、足を止めるんだベルカ!」

「トサカは任せたで!」


ブライトランナーは、トサカにある突起物を自ら膨張させて閃光を放つ特質を持っている


つまり、トサカさえ破壊すれば閃光攻撃にさらされる危険はなくなるのだ


「どっせぇぇぇい!」


着地の際に、ベルカの一撃が決まる


そのまま転倒した頭部に、アインのブレードが轟音を立ててトサカを破壊する


「そのまま一気に仕留める!!」


一気に間合いを詰めたツバメの圧倒的な手数の攻撃で、ブライトランナーはあえ無く力尽きた


「・・・やった!」

「まだだ!!」


武器を仕舞うツバメにアインが叫ぶ


突然の衝撃に吹き飛ばされたツバメ

とっさにアインが、それを受け止める


「コイツは、死んだふりで不意をつくのが得意なんだ」


その言葉は、何度もそれを食らってきた経験者特有の

説得力を持っていた。


「でぇぇぇい!」


並みの男よりも、男らしい雄叫びと共に

バスターソード(大剣)を振るうベルカ

その一撃は、戦意を失わせるのは十分だった


そのままフラフラと、その場を離れていくブライトランナー


「と、止めを刺すのよ!」

「無駄に殺すだけが、狩りとちゃうで」


何もせずに、獲物を見逃すベルカ


「ど、どうして・・・!?」

「戦意を無くすだけで、十分ってことさ」

「今回の依頼は『撃退』だからな」

反論しようとするツバメを諭すように、アインがつぶやいた。


ツバメが向けた視線に応えるベルカは何処か寂しげな表情だった

そんなベルカの脇を抜け、歩きだしたツバメが不意に言う


「言っておくけど、黄金竜はそんなに甘くないわよ」

少し不器用なツバメの言葉が、二人の表情を和らげた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ