#16 疾走!ワールドランナーズ!!⑥『うらかたダークネス』
「さて、お前達の実力みせてもらおうか?」
言いながら、その手に怪しげな火が灯る
その火はやがて、人の形となって地面に降り立った
「その基礎となった試作品と模造品どちらが優れているのかを、な」
視線の先に居るのは、緑石の輝きを放つ青年『クリン』
「氷刃時雨!!」
口にしたのは、魔術を込めた詠唱言霊
天に輝く魔法陣から、おびただしい数の氷の刃が『ネア』たちに降り注ぐ
地面に激突した際に、巻き上がる爆風が一気に視界を奪っていく
「おやおや・・・あっけないものだな」
物足りないといった表情で、つぶやく
森の暗闇から姿を現したのは、漆黒のフードを目深に被った人物
その瞳は、フードの陰に隠れてよくは見えないが
そこから溢れ出る光は、緑石の輝き
「不意打ちとはまた、随分とみみっちいやり方ね?」
爆風が吹き抜けて、そこに現れたのは宝石のように煌く金髪をなびかせて
仁王立ちするネア
「やっと、現れたわね!?」
不敵に微笑みながら、手にした杖を天にかざす
「魔法ってのは、こう使うのよ!!」
くるくると杖が回転し、そこに魔法陣が浮かび広がっていく
「爆装束縛!!」
魔法陣から無数の炎の蛇が現れ、フードの人物に絡みついていく
「おやおや・・・あっけないものね」
同じセリフをつぶやく
「じゃ、ゆっくりと聴かせてもらいましょうか・・・?」
腰をくねらせながら、屈強な男『サムソン』がフードの人物ににじり寄る
「その、宝石どこで手に入れたの!?」
わずかに怒りがこもる声で、尋問する
「答えると思うか・・・?」
口元が、わずかに歪む
「思いませんねぇ」
覗き込むようにクリンが言う
柔らかな口調と裏腹に、手にした短剣を眼前に突き付ける
「ならば『殺す』か・・・?」
動じることなく言い放つ
「そんなことするだけ無駄、でしょ?」
クリンの手を下げさせる
「しかし、お前達を道連れにできるなら無駄でもないな」
「!!?」
瞬間、閃光が広がっていく
閃光に晒されて見えたその顔は、見慣れた顔だった
「な、何が起きたんだ~っ!?」
上空に浮かぶ気球から、アナウンサーが叫ぶ
まもなく、陽も落ちようとしていた空の端で
夜の闇に割り込むように広がる閃光
閃光が闇に溶ける頃、そこにあったはずの風景は
ただの荒野へと変わっていた
「おやおや、あっけないものだな・・・」
暗闇の空に浮き、またも同じセリフをつぶやいていたのは
緑石の瞳を持つ青年と同じ顔を持っていた