#14 疾走!ワールドランナーズ!!④『むんむんスタンディング』
「さぁ、遂にこの瞬間がやってまいりました!」
会場を埋め尽くす群衆の中でも、ひときわ目立つ声が響き渡る
「大陸全土を、舞台にした一大イベント『ワールドランナー』!」
「今回もまた、曲者揃いの参加者でいっぱいです!!」
状況を解説する実況が、気球から熱く語っていた
「まずは、帝都の強者集団『鋼鉄騎士団』!」
その名の通り鋼鉄の鎧に身を包んだ騎士達から成る騎馬兵団だ
その重厚な姿は見るものを威圧する。
「帝都のエリート集団である彼らの実力は如何なるものか!?」
その言葉に応えるように、自信満々で両手を天に掲げる
「そして、対抗馬とも言えるのは、屈強の傭兵団『紅蓮の風』!」
炎を思わせる深紅の出て立ちの鮮やかさが目を引く
「果たして、どのようなぶつかり合いとなるのか必見です!」
実況が、むやみに両チームを煽る
それぞれの重馬車が、火花を散らし睨み合う
「お次は、これまた華麗な一団『ネアと愉快な仲間達』・・・ってこれチーム名か!?」
金髪をきらめかせた少女が、屈強な男と緑色の瞳が特徴的な中性的な青年を引き連れて3人乗りの自転車で現れた
「ちょっとネア!なんなのそのチーム名は!?」
屈強な男が不釣合いな女言葉を発している
「いいじゃない別に、事実でしょ?」
それを、軽くあしらう少女
「僕は気に入ってますけどね、割と」
適当に受け流す青年
「初参加のこのチーム、実力はいかに!?」
半ば、呆れ気味に言う
「そして、こちらも初参加だ!」
気を取り直して叫ぶ
「『トレジャーバンディッツ』!」
「これは珍しい、ギルドからの参加者だ!」
「コラ!言うこと聞かんかい!!このトリ!!」
「くわぁぁぁ!!!」
「ホント、仲イイのなオマエら・・・」
『ロードランナー』を引き連れ、なんとかこのレースに参加できたベルカ達
が、明らかに下馬評的な存在である
「大丈夫か?コイツら・・・」
不安を隠せない実況者だった
「そして、今回もやっぱり参戦!」
「自称『世紀の天才メカニック』こと『Dr.T』!!」
何やら、怪しげな歩行機械が現れた
「はぁーっ、はっはっ!!今回こそは勝ぁぁ~つ!!」
言うならば『脚の生えた戦車』に搭乗しているのは、この街では有名な男で
『科学を制する者こそ、世界を制す』を掲げている
俗に言う『マッドサイエンティスト』と呼ばれる類の人物である
「今回は、どんなやられっぷりを見せてくれるのか!?」
「別の意味で期待できます!!」
どうやら、勝利を手にしたことはないらしい
「そして、最後は・・・」
視線の先には、黒いフードを目深かに被った一団
「全てにおいて、詳細不明!!」
「一体、どのような実力を持っているのでしょうか!?」
彼らの視線の先に映るのは『ベルカとアイン』
いかにも、怪しげだ
「さぁ、間もなくレース開始であります!!」
否応にも盛り上がる熱気に包まれて
それぞれの思惑が、渦巻く一大イベントが始まろうとしていた