#13 疾走!ワールドランナーズ!!③『さわがせイントルーダー』
「オイオイ、無茶言うなよ?」
受付の非情な一言
最も、非常識なのはこっちなのだが
「だから言ったろ!?」
呆れた声でアインが言う
『ワールドランナー』
この『リング・リンク』を駆け巡る一大イベント
参加者の条件は『乗り物に搭乗している事』である
「だから、ウチがコイツをおんぶしてやな!」
ベルカが、さらに食い下がる
ベルカのアイディア
『ベルカがアインを背負って走る』
なんとも、とんでもない言い草である
当然、却下されるのは目に見えていたのだが・・・
「とにかく!参加は認めることはできない!」
結局どうにもならずに、門前払いにされる二人だった
「融通のきかんやっちゃなぁ」
酒場に戻って早速、愚痴をこぼすベルカ
「あの案で、出場できると思ってたお前を尊敬するよ」
苦笑いしながらつぶやくアイン
「どうにかして、足(乗り物)を探さないとなぁ」
参加受付用紙を眺めながら考え込む
「いい手があんで!」
自信有り気なベルカの言葉
「アテになるのかよ・・・」
半ば、投げやりなアイン
しかし、一度突っ走ったら止まらないのが彼女『ベルカ』である
結局、仕方なく付いて行くしか無いというのが二人の日常であった
薄暗く湿った場所で・・・
「おった、おった」
まるで、友達と待ち合わせたかのような口ぶり
「お前、本気か・・・?」
先日『トリ騒動』で、捕まえた『トリ』こと『ロードランナー』
どんな目的で、捕まえられたのかは知る由もない
が、その時拾った『宝石の入った巾着』からして
まっとうな依頼主ではないということは明らかである
「確かに、ココからなら手に入るだろうけどな・・・」
それでも、不安と後ろめたさはある
「やるしかないか・・・」
心を決める
「この・・・!おとなしくせいや!!」
檻を挟んで喚き合う一人と一頭
「ここから、出したるって言っとるやろが!!」
ほとんど同レベルで争っている
「あんまり騒ぐなよ!気づかれちまうだろ!!」
こっそり忍び込んでいるので、騒ぐのはマズイ
とはいえ、此処まで警備がザルなのもいかがなものかと思う
「気を付けろ、ベルカ・・・」
こうもすんなりと行くのは、やはり怪しい
何かしら、泳がされていると見ていいだろう
慎重に辺りを伺ってタイミングを図る
「くわぁぁぁぁ!!」
甲高い獣の鳴き声が響き渡る
見ると、ベルカが『トリ』の尻に噛み付いていた
「言うこときけやぁぁぁ!!!」
背中に、しがみついたまま叫ぶ
「仲イイのな、オマエら・・・」
アテにするのは諦めた
「さっさとコっから、オサラバ済んで!!」
暴れまわる『トリ』を、取り押さえながら呼びかける
「用心しろよ!?」
こんなに騒いでいても、誰ひとり出てこない
ふと見ると、中央に何かの円陣が描かれている
「・・・・!」
魔法陣か!?
特殊な文字を用いて描かれているソレは
魔法力を用いて作用する『魔法陣』である
元々、魔法に縁の無い自分たちにとっては
お目にかかる機会は少ない
「ベルカ!急いで外に出ろ!!」
危険を感じて外に飛び出す
瞬間、光が今まで居た倉庫に拡がっていく
夜の闇を貫くように、光の槍が天を貫き消えていった
再び、闇が辺りを包んだ時には
そこにあったはずの倉庫は消えてしまっていた
「なんか、きな臭いことに巻き込まれてきたな・・・」
やれやれと、頭をかく
何者かが『宝石』を、密売するために『ロードランナー』を
使おうとしている
が、こっちが首を突っ込んだせいでその場所もろとも消そうとしてきた
果たして、この『宝石』の持ち主は何者なのか?
またしてもトラブルを巻き起こすベルカを眺めながら
軽く、頭痛を感じて頭を抱えるアインであった