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トレジャーバンディッツ  作者: TAMA-RUN
10/28

#10 空の彼方に

凄まじい轟音を響かせて崩れていく遺跡の中を

脱出口を探して、疾走するベルカ達


「アイン!お前、今までどこ行ってたんや!?」

1人、はぐれていたアインを、問いただす


「こっちは、こっちで大変だったんだよ!!」

唄姫を背負い必死についていく


「ハヤブサ様、ベルカとお知り合いだったのですか?」

ツバメもまたハヤブサに問いかける


「ああ此処でな、荒削りだがいい筋をしている」

「ハヤブサ様は、あんな男女の方が、お好みでしたのね・・・」

「・・・は?」

ツバメの呟きに足を止め考えこむ


「!?・・・このハヤブサ、一生の不覚!!」

ベルカが女だということに、気付いていなかったようだ


「何やってんのや!?とっとと行くで!!」

ベルカが急かす


通路を抜けて大広間に出たベルカ達

先を急ごうと奥へと向かう中、立ちふさがる影


「こ、こいつは!?」

アインが息を呑む


「轟竜・・・だと!?」

ハヤブサが呟く


「なぜ、こいつがこんなところに・・・!?」

思わぬ対面に、全員の足が止まる


「おもろいやないか!ウチが、ぶっ倒したる!!」

ただ1人、嬉々として武器を構えだすベルカ


「無理だって!こいつの強さは半端じゃないぞ!!」

「ウチの強さも、半端ないで!!」

アインが引き止めるも、聞く耳持たない


「時間がないにゃ!急ぐにゃ!!」

案内してきた獣人が手を振って急かす


「ここを通るには、やりあう以上にあるまい」

「及ばずながら、手を貸すわ!」

「俺は、向こうで応援してるからー!」

意を決して、戦闘に入るハヤブサとツバメ


「一緒に、戦わないにょか?」

獣人が尋ねる


「この状態で、何が出来るんだよ?」

唄姫を背負ったアインが言い訳のように言う


「・・・行くで!!」

ベルカの掛け声と共に全員が轟竜に挑みかかる


轟竜の咆哮が洞窟に響き渡る中、最後の決戦が始まった


一方、地上では


「おのれ・・・まさか、私の人形が倒されるとは・・・」

肩で息をしながら、地上に落ち延びたヴォルドーが忌々しげに言う


「そこまでよ!ヴォルドー!!」

一呼吸置いて、現れたのはヴォルドーを追いかけてきたあの

『女性ハンター』であった


「しつこいやつめ!」

「そのセリフ、最早、ただの悪党ね」

やれやれと肩をすくめる


「ここで、終わるわけにはいかんのだよ!」

言いながら、合図を送る


「まだ、無駄な足掻きを!?」

突然、視界が突風で塞がれた


「くっ、待て!お前の獲物は、あいつだ!!」

上空からの衝撃が大地に走る


「や、やめ・・・・ぐあぁぁぁぁぁ!!?」

何かが、押しつぶされる音

そしてヴォルドーの断末魔


視界が戻ったその眼には、まばゆく光る金色の壁


「こ、これは・・・!?」

ヴォルドーを、その脚に掴みこちらを見つめる一頭の飛竜

その身体は黄金の眩い鱗に覆われていた


「黄金竜・・・」

その翼を広げ再び空に飛び立つ

その雄々しき姿は、ただ美しかった


「邪悪な者の、哀れな末路ね・・・」

その場に背を向け歩き出す


「任務完了」



「でぇぇぇぇい!!」

力任せに大剣を振り下ろす


「くっ、なんて、タフな奴だ!」

「つ、強い・・・」

いくら、ダメージを与えてもまったく引かない轟竜

しかし次第に動きが鈍くなってきたのも確かだ


「こいつ・・・なんで、こんなに必死なんや!?」

「動きを拘束する!」

手早く罠の用意を済ませるハヤブサ


「一気に畳み掛けましょう!!」

「おら!こっち来いやぁ!!」

ベルカが挑発する


轟竜が吼え、跳躍して襲いかかる

その重い一撃を、大剣で防ぐ


その刹那、閃光がほど走り罠が作動する


「今だ!止めを!!」

踏み込もうとした瞬間、小さな爆発と共に罠が消滅する


「なに!?」

予想しない状況に戦局が一変する


「・・・・!!?」

が、何故かそこから動こうとしない轟竜


「どうやら、瀕死のようだな・・・」

息を荒げてこちらを睨み付ける轟竜を見下ろして言う


「止めを・・・」

言い掛けて言葉を詰まらせるツバメ


「どうした?ツバメ?」

心配そうにハヤブサが肩に手をかける


「・・・せん・・・」

「私には・・・出来ません・・・」

肩を震わせるツバメ


【愛すべきものと生き 子を産み 育てよ・・・】


ツバメの胸に父の言葉がよぎる


【それもまた闘いなのだから・・・】


轟竜の背後には、新たに芽生えた小さな命達

小さい声で必死に母親を呼ぶ


そのまま轟竜に背を向けその場から離れるツバメ

ベルカは、満足そうに笑みを浮かべ彼女を見つめていた


轟音と共に崩れ落ちる遺跡

最早それはただの瓦礫の山でしかなかった


「ぷはぁぁーーーーー!!」

「何とか、無事に出られたな」

「生きて出られたにゃ・・・」

瓦礫の山を背にお互いの無事を喜ぶ


「あのお方は無事なのか?」

ハヤブサが獣人達に問う


「当然にゃ!オイラ達がちゃんとあんにゃいしたんだから!」

「結局、黄金竜なんて伝説に過ぎなかったのかしら・・・?」

ツバメが寂しく呟く


「いや、判らんもんやで?」

大空を仰ぎベルカが言う


見上げる空のはるか先には、優雅に舞う金色の翼がきらめいていた       


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