#01 冒険の始まり
深く生い茂る茂みを掻き分けて
怒鳴り合う声が響く
「だから【もう少し待て】って言っただろ!!」
「うっさい!とろとろしてっからバレたんやないか!!」
走りながら器用に言い合う二人
「もう罠、無いんか!?」
「有るわけないだろ!取って置きだったのに!!」
二人を追い立てるのは
大地を駆ける【巨大な怪鳥】
攻撃されて激怒している
「せっかく、一儲けできるトコやったのに!」
「それをダメにしたのは誰だよ!?」
「ウチのせいだってんか!?」
「違うってのかよ!」
「あにお~!!」
獲物をそっちのけで口喧嘩をはじめる二人
ひとつのことに集中するあまり
その他のことが、すっぽり抜けてしまう性格が仇となる・・・
「あ~あ・・・」
「暇やなぁ・・・」
「ダレかさんが、ちゃんと言うことを聞いてりゃもっと良いメシでも食えてたのにな」
「いいかげんしつこいで!オトコならグダグダ言わんとき!!」
結局、ギルドの依頼であった【怪鳥捕獲】の依頼は失敗に終わり
行き付けの酒場で、暇を持て余す二人であった。
怪し気な関西弁を話す
【ベルカ】
歳は17・8ぐらいだろうか、女性というよりも
少年という面影を持つその姿は、同性に好かれやすい。
対して、彼女の傍らで共に歩むは
涼し気な眼差しを絶やさず向ける
青年【アイン】『全ての女性に愛を』がモットーの優男
が、その愛が実った試しはない。
二人は世界を気ままに旅する流浪の
『トレジャーハンター』である。
「もういい!頼まないわ!!」
ひときわ大きな声が、辺りに静寂を呼ぶ
「誰でもいい! 私と一緒に【黄金竜】を狩る人はいないの!?」
【黄金竜】
その言葉を聞いて、静まり返った酒場が笑い声に包まれる
「オイオイ、何言ってんだよ!?」
「そんなの、おとぎ話じゃないか!」
「今時、子供でも信じちゃいないぜ!?」
その場にいる誰もが、同じ反応だった
「おとぎ話なんかじゃない!」
怒りを込めて叫ぶ
「現に、私の父上は・・・」
しかし、言葉は続かない
うつむいた肩がわずかに震えていた
「そのハナシ、乗ったで!!」
その一声に、再び辺りが静まり返る
涙が滲むその顔を上げたその視線の先に、ベルカがいた。
その顔には一片のくもりも無い
「貴女に、涙は似合わない」
いきなりその手を取ってつぶやくアイン
が、次の瞬間
ベルカに蹴り飛ばされ、壁と語り合っていた
「ウチはベルカ」
満面の笑みで言う
「で、あっちがアインや!」
壁際で、足を痙攣させている物体を指さす
新たなる冒険に心躍らせる瞬間
彼女は何より
その瞬間が好きなのだ。