少女との接触
俺も少女も信悟達が消えるのを見届けた。裏路地にいるのは俺と少女だけとなった。少女は俺の方へ駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。痛むけど、動けそうだし大丈夫だよ。」
正直、強がっていた。少女が俺の為に助けてくれて、俺の怪我を心配してる顔を見ていると、骨が折れた。なんて言えない。そもそも、俺が招いたミスだし、少女も危険にさらされていた。少女にとっては危険かわからないが…
「危ない所を助けてもらった。ありがとう。」
「いえいえ。」
ありがとうと言われた少女は嬉しそうにしていた。
「名前教えて欲しいな。」
「え?」
「ダメかな?」
「いいけど。」
少女は照れくさそうにしていた。
「私の名前は一十神麗。」
「俺は七見優斗だ。よろしく。」
「よろしく。」
「さっきはどうやってあいつらを倒したんだ?」
「えっ?あっ、そうね…」
「話しにくいことなのか?」
「別にそんなんじゃないけど…冷静に聞いてね。」
「わかった。」
俺は何と言われても納得できる。腕力と言われても、超能力と言われても、気象予報士で「今突風が起こると分かっていたの…」と言われても。
「実は、魔法なの。」
「魔法?」
魔法。魔法ですか。
超能力の少し上を行った。俺からしてみれば、超能力も魔法も変わらないが…
超能力よりは魔法って誰でも使えるイメージがある。思いついたときには、口が開いていて、
「魔法って俺でも使える?」
「えっと、使えるようになると思うけど… そのー」
「それなら、俺に教えて欲しい。」
「そっそれは、すぐには無理だわ。」
「そうか… いつなら教えてくれる?」
「ええっとー 次会った時に…」
「次はいつ会える?」
「ごっ、ごめんなさい。」
一十神は一礼して走って去って行った。追いかけようとしたが、歩くのが精一杯だった。
(さっきは勢いで魔法を教えてほしいと言ったけど、麗のことを何も知らない、次会うときは、何者なのか? 魔法とはなんなのか? 聞こう。)
深く決意した優斗だが、これから数日に起こる事件を何一つ知らないまま、家に帰り、布団の中に入るのであった。
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(私は何百回も人を助けたことがある。喧嘩や今のようなリンチに近いことから、トラックに轢かれそうな子供を… 子供には感謝された。けど、私のことを怖がって逃げる大人がほとんどだった。化け物のように見られ逃げ出す人や、話しかけられるが、すぐに消えてほしいと願う顔をしていたり、いつからか助けるのが仕事となっていた。でも、優斗は怖がらずに私を見てくれた。初めて名前を教えたし、名前を教えてもらった。こんな気持ちは初めてだ。)
一十神が人を嬉しいと感じたのは初めてだろう。実際、一十神が人助けをしていたのは、使命みたいな物であった。
この時、一十神も魔法を教えたいと思ったが、教え方がわからない。いきなり頼まれビックリしただろう。だが、最終的に断ったのは自分と関わるのは危ないと本能的に思ったからだ。
誰に言われた訳でもなく、自分の経験や人柄を見てではない。
そう、麗自身なぜ危ないかはわからないが断ったのだった。
もしかしたら、彼女の使命である父親から託された魔法を完成させる思いと、天秤に架けたのかもしれない。