ある夜の魔法少女の出会い
4月18日月曜日
俺が少女と出会ったのは、人生で一番最悪だと思った瞬間だった。
俺の名前は七見優斗。
都内在住の18歳だ。
今までの人生を不自由なく過ごして来た。特別秀でた才能もなく生きてきた。そして社会人になった。社会人と言っても高校を卒業してそれほどたってないし、社会人とかっこつけて言っているが、ただのフリーターだ。
なぜフリーターになったかと言われると、自信を持って言い返せないが、何も考えていないわけではなかった。
大学へ進学するにもしても、お金は大量に必要だ。行くためには、親に払って貰うか、奨学金制度が考えられるが、大学へ行かないと進めないほど困難な夢と言うものではない。寧ろ夢などない。
わざわざお金を払ってまで行く必要がない。
就職の道もあった。フリーターと比べて、収入や保険など様々な待遇があり、社会的に保障されている。
だが、会社に縛られ、自由が少ないイメージが強い。そこまでしてスーツに袖を通すほどでもないと考え、バイトをしている。
働かなくても、生きて行けるであろうが、いつの日かの為に、お金を貯めるため、コツコツとバイトしている。もし、欲しい物ができたり、彼女と遊ぶ為だったり、もしかすると起業するかもしれない。まだ興味を注ぐ事柄はないが…
そして、一番の理由が、都会に出たいからだった。小さい頃から、旅行に行ったことがない。せいぜい修学旅行ぐらいだ。小中高と学校も、地元だったし、遊びに中心地に出ることもなかった。都内在住と言っても県境にある町で中心地から遠い。折角のチャンスなのだから、若者で溢れている町でバイトをしたいと考えた。
そして、入ったのがコンビニエンスストア。通称コンビニ。電車で20分かけて通勤している。今まで自転車が移動手段だった俺にとって、新鮮な物だった。ほぼ毎日乗っている訳だから新鮮さも無くなってきた。
ここまでは、普通の定義に当てはまる部類だ。俺は普通の人と少し違う性格だ。
人一倍正義感が強い。人一倍とは、人より激しい様子の表現で使われがちだ。漢字の意味から考えて(一倍しても変わらないだろ!)と心の中でツッコミながら使っている。
要するに、困った人を見ると助けずにはいられないのだ。
学校の帰り道、友達と帰っているときに、川で遊んでいる子供が流されそうになっていたら、普通なら警察か消防に連絡をする。
だが、俺は飛び込んで助けようとした。周りも気にせず、勝手に体が動いた。流されかけたのを今でも覚えている。冷静だったのか、動けなかったのかわからないが、一緒いた友達も助けに飛び込んできて、大事には至らなかった。
そのあと、子供の両親が来て、無事を確認して自分達に感謝しきりだった。感謝されるのを期待して、助けた訳ではないが、嬉しいものである。その子の父親は警察官のお偉いさんだったらしく、友達と警視庁に招待され、お偉いさんが周りを囲む中、表彰された。それまでならよかったが、全校生徒の前でも表彰された。あの恥ずかしさは今でも覚えている。友達は堂々としていて、満更でもない感じだった。
人生で良いことばかりではない。高校生の時には、自転車の追突事故もあった。俺は交差点をゆっくり自転車で走っていたが、横から猛スピードで来た自転車とぶつかった。ダイレクトヒットし飛ばされ病院送りだ。結果、骨折と打撲。暫く病院に滞在し松葉杖が友達になったことは言うまでもない。
そのあと、ぶつかった相手がどうなったのかは、聞かされていないが、相手が加害者であることは明白だ。骨折したときの生活は、被害者な分、不便で最悪だと、心の底から思った。
それよりも最悪だと思った瞬間が今だ。バイトの女子高生がナンパされて困っていたところを助けようした。彼女は無事帰ったが、俺は裏の通りに連れられて、肋を折られるぐらい殴られた。
その時、少女がやって来た。音も無く少女が声を発して初めて気づいた。それが、少女との初めての出会いだった。