前世の記憶!
突然ですが私、前世の記憶というものがあるんです。
だけど、どれだけ仲のいい友達に恥をしのんで、
だってこんな事言うと頭おかしいんじゃない? とかはいはい、もういい加減子供じゃないでしょ。とか言われて笑われたり、ちょっと可笑しな子とかに見られたり、哀れまれたりするからほんとーに、恥とかその他もろもろを飲み込んで告げているというのに、結果はもうすでに言った通り。
もれなくあげた結果のどれか、またはフルコンボで反応が返されます。
はっはー、うっそー、まじーぃ? じょーだんきついしー。
…………え、マジで? 真面目に?
……あんた…………。
って感じに最終的には可哀相そうな子に向ける、どこか冷たい視線を向けられます。
その度に地味に傷つく私のハートは傷だらけです。
きっと骨とかのレントゲンじゃなくって心のレントゲンとかあれば、はっきりと私のそれは傷だらけなのです。
だから痛い子認定される前にどうにかこうにか、嘘だよ、そんな訳ないじゃん! とかあっはーって笑って返すけど、やっぱりどこか告白後はみんなに距離を置かれます。
あ、ねぇ。ちょっと、みんな、ちょっと、壁がなぁい? みたいな。
あははははー。 みたいな。
地味にその繰り返しで私のハートはぼろぼろとなっていくのです。
こりずに繰り返す私が馬鹿なのか。そうか、そうなのか……。
でも実際馬鹿だからそこで納得しちゃうんだけど、でもやっぱり分かってもらえないのって辛いから。
隠しておくのもなんか、自己否定みたいな、なんかちょっと辛いから。
本当に友達だって思ってたみんなに、さりげなく告白ーみたいに言ってただけだったのに。
それでも、やっぱり異質は受け入れられないみたいです。
これで何度目だろう、一体。
何も無いふりして友達と別れてから徐々に固めていた気持ちが溶け出して、家に付く頃には顔が涙の雨嵐。……わざとだよ。いくら私が馬鹿だからって雨はあられだよ。
とか脳内言い訳しながら声だけはなんとかこらえていたんだけど、あとほんの二、三……四、五、……六、七、八、九、十……二十五歩位のところでお隣の幼馴染。誠ちゃんを発見しちゃって、誠ちゃんもいつもの無表情ながらよおって軽く手を上げてくれたものだから、ぶわって顔に流れていた涙も倍増。こらえていた泣き声もわんわん。
誠ちゃんにだーっと走っていって、鼻水だらけの顔面を誠ちゃんの胸にがっつんこ。
びーびーわんわんしているくせに、がっしりと誠ちゃんの体に腕を回して離れない、悲惨な顔も離さない私にどうしたらいいのか分からなくなった誠ちゃんは、とりあえずがんとして離れない私をそのまま誠ちゃん家に連れて行きました。
まるでこなき爺のようだとちらりと思ったけれど、手は離さなかった。
そしてもちろん、誠ちゃんママはご在宅中。
びーびーわんわん煩かった私の声は誠ちゃんママにも届いていたみたいで、あらあらどうしたの? って優しく迎えてくれて、でもびーびーわんわんの私の対応を誠ちゃんに一任してくれた。
誠ちゃんママ煩くしてごめんね。
びーびーわんわんしていた私を自分の部屋に引き連れていって、誠ちゃんは落ち着くまで抱きつかせたままでいてくれた。
ぐずりながらも、もう悲惨すぎる誠ちゃんのシャツから顔を離したのは三十分後。
誠ちゃんは嫌な顔もせずに、落ち着いたかって一言だけ言ってくれて、ぽんと頭を撫でてくれる。
誠ちゃんはいつも優しいし、そのおっきな手が暖かくて好きだったから、なんだか気持ちがほんとうに落ち着いてきて、ごめんねって言って大丈夫って頷いた。ら、誠ちゃんはふっとちょっとだけ目を細めて笑ってくれた。
そのふだんあんまり笑わない誠ちゃんの笑みに、落ち着いて、落ち着きすぎて緩々の気持ちと緩々の口がだーっと泣いた理由を誠ちゃんに吐き出してしまったのです。
誠ちゃんなら笑ったりしないっていう確信はあったけど、……でも。それでも、不安だったから。今まで言わずにいたことを吐き出してしまった後で、口から出てしまったのは、
「誠ちゃんも私の事、信じて、くれない……?」
なんて、心とは裏腹の不安めいた声と、言葉だった。
でも、やっぱり誠ちゃんは私の信頼に応えてくれた。
「いや、信じてる」
あっさりと、だけどはっきりと、何か確信をもった一言だった。
今まで欲しくて、期待して、それでも貰えなかった一言。ぱぁっと視界は晴れ渡って、一気に世界がぴかぴかときらめいて見えた。
「本当!?」
私自分ではっきりと分かってる。今の私の顔。これ以上ないくらいの満面笑顔だ。
うれしくってうれしくって、誠ちゃんだったら絶対嘘つかないって分かってるから、心のそこからうれしくって、声がはずむ。
だから、
「あぁ、お前にそんな嘘が言える程の頭があるとは思えないからな」
「え?」
なんか、こう、ぜんぶをぜんぶ。耳と、頭に入れたらぐさってするだろう言葉が素直に頭に、耳に、入り込んでは来なくって、ばっちり笑顔のままに顔は固まって、ただ声だけが出た。
え?
「…………あ」
「いや、その、あの……」
私のぴしりとした反応に誠ちゃんも自分で何を言ったか気付いて、頭が良いはずのその頭が理解するには少し掛かったようで、理解した後に、しまったっていう顔をして、しまったっていう声を出した。それでもってごまかそうとした……から。
私も自分の馬鹿さ加減は分かっているし、なんと言っても私の世間一般、ふつーなら突拍子も無い話を信じてくれた誠ちゃんだから、差し引きゼロなような、そうでもないような気持ちで明るく声を出して応えた。
「そっそうだよね!」
「私にそんな事言える程の頭も無いし、知識もないし、空想力もないし、発想もないし、ひらめきもないし、アイデアもないし、何もあるわけないもんね!」
やけっぱちのすてっぱち。あははーって声にだして笑って笑って、笑ったら。
「あぁ、言っていることも重複してるしな」
さらって。さらってまたぽろって、ぽろってまた。返された。
「……え」
そしたら私はやっぱりまたぴしって歪んだままの笑顔で固まって、ただ声だけが出て。
そしたら、誠ちゃんもまた
「…………あ」
って、頭が良いはずのその頭で。同じことを繰り返してしまったっていう顔をして、しまったっていう声を出す。
ねぇ、誠ちゃん。
やっぱりね、いくら何でもね、やっぱりね。
本当の事言われたら、私だって傷つくんだよ。
「ふっ、くっ!」
止まったはずの涙がまた溢れ出してきて。誠ちゃんの部屋からダッシュで逃げ出した。
「誠ちゃんが苛めたぁ!! 誠ちゃんママぁ!」
泣きつく先は、一階にいる誠ちゃんママ。
誠ちゃんに理解してもらえた心は、嬉しくってでもどこかくすぐったくて、だけどちょっぴり傷ついて。
そんな心を持って私は誠ちゃんママに文字通り泣きついた。
わんわんびーびー泣く私を、誠ちゃんママは優しく受け止めて誠ちゃんと同じあったかい、優しい手の平で背中をぽんぽんと叩いて宥めてくれた。
誠ちゃんはちょっぴり口が素直なだけで、優しいのも、私を信じてくれるのも変わらない。
誠ちゃんママが優しいのも変わらない。
だから、私は誠ちゃんも誠ちゃんママも大好きだ。
あ、今はいないけど、誠ちゃんパパもね。




