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第二話
「我、我……」私は泣きながら、いつもの茶館に向かう。
茶館《茉莉花》では、店主の女性が優しくもてなしてくれる。通称:マーマ で通っている。
マーマはいつもと変わらない笑顔で私を見て、いつもと同じセットを持ってきた。
白い陶器に青い線で二胡が描かれた茶器と月下美人が描かれた器。茶器には私のお気に入りの凍頂烏龍茶が入っており、器には椰子の実入りの月餅があった。
茉莉花の残り香を移した懐紙も添えられている。
私は、泣きながら頬張った。マーマは私の隣に座り、目を赤くしながらこっちを見ていた。
「美花、どうしたの?」
「……好きだった人に振られた」
私は、事のあらましを伝えた。
「なに、その男。ただの日本鬼子じゃない。いっぱい傷つけられる前に振られて良かったのよ。元気出しなさい。そんなの、見返してやんなさいよ!」
マーマは、特大の包子を二つに割り、私に片方をよこした。
「もう泣くの止めよ。今日はもう遅くなっちゃったから……そうそう、美花、明日から餃子の特訓しよう!餃子も出来なかったらアンタ、いい嫁にもなれないんだヨ!」
「好!」