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詩集

支柱

作者: ロースト

支柱


世界樹のようにそこに君臨する。

だが、世界樹とは対なる存在である、ソレ。存在感と迫力とを併せ持ち、すべての因果の結晶のような、ソレ。

いったいどうやって、いつ、なぜ、現れた。

それを知るものはいない。そして術もない。

人々は感銘を受け、感服し、直感を得、痛感する。

人のなんとも小矮で、拙く、幼く、無思慮な、力無き者なのかを、思い知る。

そして、絶望と後悔、憤慨と悲嘆に苛まれる。


それを見て思う。

今まで信じていなかったことを信じるかのような、そんなのが具体例。

ソレ、は霊力とでも言うようなものに包まれている。ソレ、は万物の流転を表す。

ソレ、は『今まで』を、理を、裏返す。悉くが、違う、ナニカ。

たとえば、地で在るはずが空にある。たとえば、空に在るはずが地にある。

天と地を結ぶかのように、空と海を繋ぐかのように、在る。

根本を揺さぶる存在。律を翻した存在。


周囲には、ブラックホールのように、吸収する、ナニカ。

何の区別もなく、ただ、モノを食べる。

それは捕食というより、一体化という行為に近い。世界のバランスが崩れることも厭わずに、吸収し、膨張し、成長する。

その為だけに、そんなことの為に、動物に、そして人に、それを課す。死という運命を冷酷なまでに通告し、背負わす。

慈悲深くも、残酷に、取り込んだ後には内にある、優しい夢を見せながらも死を迫る。

優しい優しい夢を見て、未練を残し死んで行くのが常の状況。

誰もわからずに死んでいく。何もかもを忘れ、優しい優しい夢の中、生への執着心だけを残し、死んでいく。だから、気づかない。

その優しい夢さえも作り物で、作為的で、恣意的で、人為的で、悪意と欺瞞と害意に塗れた、整えられた、創られたものであることを。

気づかず、無邪気に、それでいて欲望に忠実に、優しい夢を視る。

その行為こそが作った者の思惑だとも気づかず。


そんなことには構わずに、ただ黙々と、作業を続ける、ソレ。光が、地上に降る。

雪のように、触るとなくなってしまうそれは、甘い毒。

触れてしまえば、そこから内側に入り込み、徐々に精神を破壊する。綺麗な見た目とは裏腹の強力な遅効性の毒。

その光は、ソレの血であるかのように、勢い良く噴出し、世界中に散らばる。

幻想的な景色とは裏腹に世界を闇に貶すための優しい毒。世界はソレの出現で一気に傾いた。

今、まさに、闇に飲み込まれそうになっている。それでも、ソレは稼動し続ける。その目的を果たすため。止まれない。

もうすぐ、もうすぐ、何もかもを飲み込みすぎたソレが小規模の、だけど確かなブラックホールを生み出す。それでも止まらず、世界は更なる深みへと落ちていく。

それでも、何も変わらない。

律が崩れ、ブラックホールが出来、生物のいないこ地球に対して、世界樹は起動しない。役目を果たさない。それはなぜだ。

そんなこと、わかりきっている。

導き出される答えは、世界樹がすでに機能できない状態にある。つまり、本当の世界樹など存在しないから。もしくは、世界樹が壊れている。どちらかなんて、別に問題ない。現在問題定義しているのはこの状況であって、どちらにしろ、動かないのならば、どちらでも同じ。意味など無い。

神も干渉してこない。いや、神という存在があるかどうかは、はっきりいって、わからない。ソレの出現で、幻想だと思っていたものが存在することは知った。

だが、世界樹がないのなら、ソレが人工的なものならば、判断はつかない。わからない。何も、何もかもがわからない。私もまた、わからずに死んでいく。

最後の、最後の一人だというのに、知らずに死んでいく。

知者と呼ばれた私が知らずに終わる。

いや、『人には知るべきでないことがある』とは学んだ。それが、私にもたらされた結果であった。私はここで死んでいく。ここまでだ。

コレを読むものもいないだろうが、記す。希望が残っていることを望み。


@*#□!年 ○月×日

記入者 アルフレディン・ロスク・ルノワークス

最後の人類から、再生を願う。


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