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コズミック・ドリフター③鋼鉄の闘技場(ヘパイストス・ファウンドリ)  作者: naomikoryo


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8/10

第八話:二つの力

「――来るぞ!」


ザインの鋭い声がトンネルに響いた。

通路の曲がり角の向こうから、数機のクロノス・オーダーのドローンが、単眼のカメラアイを赤く点滅させながら姿を現す。


「チッ、しつけえ蝿共が!」


悪態をつきながら、ザインは損傷していない五本のエネルギーアームを展開した。

青白い光の腕が狭い通路を明るく照らし出す。


「俺が前に出る。お前ら、後ろに下がってろ!」


そう言い放つと、ザインは壁を蹴り、弾丸のようにドローン部隊へ突っ込んでいった。

まさに鬼神の強さだった。

狭い通路ではドローンは物量と機動力を生かせない。

ザインは地形の有利を最大限に利用し、六本の腕から繰り出されるエネルギーブレードで、次々にドローンを切り刻んでいく。

火花が散り、金属の破片が飛び散った。


陸は、その圧倒的な戦闘力を呆然と見ていることしかできない。

これが一流の傭兵。

これがスキルチップを極めた人間の戦い方。


だが、ドローンの数は減らない。

一体倒せば、二体が後方から現れる。

そして彼らはザインの強さを学習し、徐々にフォーメーションを変え始めた。

一部がザインを足止めし、その隙に残りが壁や天井を伝って、陸とリラへ迫ってくる。


「まずい! 陸、こっちにも来るぞ!」


リラが叫ぶ。


「くそっ……!」


陸はリラを背後にかばい、惑星渡りの準備をする。

だが、どこへ跳ぶ?

迷路のような通路で闇雲に跳躍すれば、壁の中に埋まるか、あるいはさらに敵のど真ん中に出てしまう可能性もある。


その時だった。


「おい、そこのガキ!」


ドローンを一体蹴り飛ばしながら、ザインが叫んだ。


「お前のその跳躍スキル、こっちに使えねえのか!」


「はあ!? あんたに使えるかって……!」

「いいから、やれ! あのドローンの背後に俺を送り込め!」


ザインが指し示したのは、陸たちに迫ってくるドローンのさらに奥――編隊の中心に位置する一機だった。


無茶苦茶だ。

だが、もうやるしかない。


「リラ、指示を!」


陸が叫ぶ。

リラは一瞬ためらったが、すぐに意図を察した。


「……分かった! ザイン、三秒後、右に跳べ!」

「陸、あんたはザインの動きに合わせて、彼が着地するであろう空間ごと、あのドローンの背後五メートルに転移させろ!」


神業のような連携を要求される賭けだった。

だが三人は、アイコンタクトだけで意図を共有した。


「三、二、一……今だ!」


リラの合図とほぼ同時に、ザインが右側の壁へ跳躍する。

陸はその動きに全神経を集中させた。

跳躍の軌道、速度、そして着地する一点。

その空間の座標を正確に読み取り、さらにその空間ごと敵の背後へ送り込むイメージを、脳内で組み上げる。


「――跳べ!」


右腕のチップが眩い光を放った。

壁を蹴ったザインの姿が、一瞬青白い光の粒子に包まれ、その場から掻き消える。


そして次の瞬間。

ザインはドローン編隊のど真ん中――指揮官機と思われる一機の真後ろに出現していた。


「なっ……!?」


予期せぬ方向からの敵の出現に、ドローンたちの動きが一瞬止まる。

そのコンマ数秒の硬直が命取りだった。


「もらったあああっ!」


ザインの雄叫びが響き渡る。

五本のエネルギーブレードが閃光となって走り、周囲のドローンをまとめて切り刻んだ。

死神の舞踏のような連撃。

爆発、また爆発。

狭い通路が炎と煙に包まれる。


「……すげえ……」


陸はその光景に圧倒されていた。

だが、それ以上に彼を興奮させたのは、自分自身の力の可能性だった。

逃げるためだけの力じゃない。

使い方次第で戦況を覆すことすらできる、強力な戦術ツールになりうる。

他者の力と組み合わせることで、一人では決して見ることのできない景色が見られる。


「おい、ぼさっとするな。次が来るぞ!」


ザインの声に、陸ははっと我に返る。


「今度は俺を、あの天井のパイプの上に送れ!」

「了解!」


もはやそこに敵意や不信感はなかった。

ただ、この窮地を切り抜けるという共通の目的のためだけに、二つのまったく異なる力が、リラの戦術指示というタクトの下で、一つの協奏曲を奏で始めたのだ。


ザインが暴れ、陸が跳ばす。

いびつで危険で、そして恐ろしく効率的な戦闘スタイル。


ザインもまた、惑星渡りの戦術的な価値に舌を巻いていた。

ただ逃げ回るだけの鬱陶しいスキルだと思っていた。

だが、これほど戦場のルールを書き換える力だったとは。


彼はちらりと後方の陸を見る。

金色の瞳に、侮りの色はもうない。

代わりにそこには、「使える奴」を認めた戦士の光が宿っていた。


戦いは、まだ終わらない。

だが三人の間には確実に、敵意とは別の奇妙な絆が芽生え始めていた。

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