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【完結済み】The Safe House  作者: さかな煎餅
第4章「俺たちの家」
56/58

制裁

数日後――

明理紗さんの言葉通り、オレと氷室さんは起訴されず、警察から解放された。

なぜ、氷室さんもそうであると分かったか?

解放されたあとに向かったログハウスに、すでに彼女がいたからだ。

ログハウスに帰る途中に買った雑誌の、あの記者の書いた記事――

そこには、あの日のことや明理紗さんの障害が、余すことなく書かれていた。

記事はフラットな視点で、淡々と書かれていた。

が――


   ◇ ◇ ◇


ログハウスのリビングで、オレと氷室さんはソファーに座っていた。


夢野陽

「氷室さんも、解放されたんだね」


彼女はうなずいた。


氷室零

「メグの母親は、約束を守ったということだな」

夢野陽

「うん」


――暖炉の中で揺れる火と薪が、音を立てる……。


夢野陽

「でも――人を誘拐しておいて、何もないっていうのも……なんだか……」

氷室零

「まあ、それはそうだな……」


ふと、窓の外を見た。


夢野陽

「⁉」


家の前で見知らぬ男女たちが、怒った表情をしている……。


夢野陽

「だ、誰……⁉」

氷室零

「誰かいるのか、」


氷室さんも窓を見た。

ガシャンッ‼

窓に石が投げつけられ、割れた。


夢野陽

「なっ」

氷室零

「⁉」

男性1

「犯罪者! 誘拐犯!」

女性1

「ロリコン!」


ガチャガチャ、と、ものすごい勢いで、玄関のドアノブがひねられる。


夢野陽

「!」

氷室零

「誰なんだ、こいつら!」

男性2

「窓から入るぞ!」


その声を皮切りに、窓にバッドが当たり、石がさらに投げつけられる。


夢野陽

「や――やめてください!」


オレは窓に歩み寄った。


氷室零

「陽、近づくな! 危ないぞ!」


彼女はちらと後ろを見て、


氷室零

「……裏口から出るぞ」


ぼそりとつぶやいた。

玄関のドアがバンと開き、雪風が吹き込んできた。


夢野陽

「‼‼」

女性2

「死ね!」

男性3

「ぶっ殺してやる!」


見知らぬ男女たちは目を血走らせ、オレと氷室さんに向かって走りだしてきた。

その時、ガシャン! と窓が大きく割れ、そこから人が入ってきた。


夢野陽

「……!」

氷室零

「行くぞ!」


彼女はオレの手を引いて、キッチンのドアを開けた。


夢野陽、氷室零

「!」


ドアを開けた瞬間、太い腕がこちらに伸びてきた。


夢野陽

(裏口もダメなのか⁉)

氷室零

「こっちだ!」


氷室さんはオレの手を引いて、トイレに入った。

彼女と一緒に、なかばむりやり入り、鍵を閉める。

オレはドアを背にして立ち、氷室さんは便座の蓋の上に座った。


夢野陽

「ほ……」


ドンドンドンドン! ガチャガチャガチャ!

トイレのドアは猛烈な勢いでたたかれ、ノブも素早く回される。


夢野陽

「!」

男性3

「逃げんな、犯罪者ども!」

女性4

「開けろお‼」

男性4

「好き勝手やって逃げるなんて、卑怯だぞ!」

夢野陽

「……っ」


オレはうつむいた。


夢野陽

(それは――そうだ……)


氷室さんはポケットからスマートフォンを取り出す。


氷室零

「警察に電話する!」


――鳴り響くノック音、ノブを回す音、怒鳴り声。


夢野陽

「うん、でも――犯罪をしたオレたちが警察に頼るなんて――虫のいい話だよ……」

氷室零

「……それとこれとはちがう、仕方ないだろ」


氷室さんは通話し始めた。

オレはうなだれ、ただ、暴力の音に、耳を傾けた――。


   ◇ ◇ ◇


十数分後、突然、ノックが止んだ。


「警察に頼るなんて、ずりぃぞ!」

「逃げるよ!」


――男女の声が、遠ざかっていく……。


「大丈夫ですか⁉ 警察です!」


トイレの外から聞こえた声に、オレはドアを開けた。


夢野陽

「……!」


ログハウスのリビングの床には、ガラス片が散らばっていた。

カーテンは破かれ、ソファーはひっくり返され、窓は割れ――

壁に飾っていたメグちゃんの絵は、引き裂かれて床に落ちていた。


夢野陽

(なんて――ひどい……)

警察官1

「――大丈夫ですか?」

夢野陽

「は……」


警察官が、オレの顔を覗き込んだ。


夢野陽

「あ、ああ、大丈夫です……」


彼はあたりを見回す。


警察官2

「――ひどい有様ですね……」

夢野陽

(そうだけど、でも……)


オレは拳を握りしめ、首を横に振った。


夢野陽

「……当然の報いです」

氷室零

「陽……」


   ◇ ◇ ◇


俺たちは警察官たちに事情を説明した。

彼らが帰ったあと、リビングを片付け、ログハウスを出た。


夢野陽

「……」


――ログハウスには、雪が降り積もっている。


氷室零

「……しばらく、ここともお別れか。まあ……仕方ない」

夢野陽

「……そうだね……」


布とガムテープでふさいだ窓を見た。

――あの向こうのリビングで、キッチンで、寝室で、屋根裏部屋で――

オレたちの日々が、あった。


氷室零

「――行くぞ」


氷室さんは荷物を背負いなおし、バイクへと向かった。


夢野陽

「……」


オレはもう一度ログハウスを見つめた後、氷室さんの後を追った。

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