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The Safe House  作者: さかな煎餅
第4章「俺たちの家」
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日常

それから数か月。

約束通り、私は家で、勉強と家のお手伝いに明け暮れた……。

家の庭の桜が咲く頃――夕食の席で、母はむすっとした顔をした。


神宮寺ケイ子

「小学校、いくつか受かってたから、私が選んでおいたわ」

神宮寺明理紗

「う、うん……」


私は肩を縮こませる。


神宮寺明理紗

(……褒めて、くれないんだ。がんばったのに……)

神宮寺ケイ子

「明日、東京行くから。荷物は準備したから、今日はとっとと寝なさい」


私はうなずいた。


   ◇ ◇ ◇


――それから、東京に引っ越し、小学校に通い始めた。

ある日、学校からマンションに着くと、母がエントランスにいた。


神宮寺明理紗

「あ……」


彼女は他の若い母親たちと話しながら、笑顔を浮かべている……。


神宮寺明理紗

(お母さん、笑えるんだ)


他の母親が先に、私と、私の同級生に気づいた。


同級生の母親

「おかえりなさい、ふたりとも」

同級生

「ママー! ただいまー!」


同級生は自分の母親にしがみついた。


神宮寺明理紗

(いいなあ……)

神宮寺ケイ子

「あら、おかえりなさい」

神宮寺明理紗

「あ、うん……」


母は無表情だった。


同級生

「今日テスト返ってきたんだよ! 

ママと一緒にやったところ、ちゃんと解けた!」

同級生の母親

「やったね!

……そうだ、家にお菓子たくさんあるから、一緒に食べようか!

今日はいつもより多く食べていいよ!」

同級生

「やったー!」


私はぎゅっと、ランドセルのベルトを握りしめた。

……私と母は無言で、エレベーターに乗った。

玄関に着くと、母は私に手を差し出してくる。


神宮寺明理紗

「?」

神宮寺ケイ子

「テスト。返されたんでしょ」

神宮寺明理紗

「あ……はい」


私はランドセルを下ろし、中からテスト用紙を出した。

母は用紙を私の手から奪い取り、凝視する。


神宮寺ケイ子

「……」

神宮寺明理紗

「……」


私は唾を飲み込んだ。母はテスト用紙を一枚一枚、丁寧に見ていく……。


神宮寺ケイ子

「……全部、満点ね」

神宮寺明理紗

「う、うん」


私は後ろ手で、両手を握った。


神宮寺明理紗

(……褒めてくれるかなあ)


母は私を睨み、


神宮寺ケイ子

「なら、次もそうしなさい!」


私に、テスト用紙を投げつけてきた。


神宮寺明理紗

「!」


私は慌てて、散らばった用紙を拾い集める。


神宮寺明理紗

(……褒めて、もらえなかった……)


母は床に置いた私のランドセルを開いた。


神宮寺明理紗

「⁉」


彼女は中身を漁り、ノートを取り出す。

リビングに入り、テーブルにノートを置いた。

椅子に腰かけ、ノートを開き、丹念に見つめている。

……毎日のチェックだ。


神宮寺ケイ子

「……」

神宮寺明理紗

(キレイに書いたけど……叩かれませんように……)


母はノートを見ながら、口を開いた。


神宮寺ケイ子

「まあ、いいんじゃない」

神宮寺明理紗

「ほ……」


思わず、息を吐いた。


神宮寺明理紗

(よかった、怒られなかった)


母はノートを閉じ、テーブルをはさんだところの椅子を、顎で指した。


神宮寺ケイ子

「座りなさい」

神宮寺明理紗

「は、はいっ」


私は慌てて座った。

母は私をまた、睨みつけてくる。


神宮寺ケイ子

「今日は先生や同級生と、何を話したの?」

神宮寺明理紗

「え、っと……」


……教室ではいつも、ひとりで教科書を見ていることが多い。

私は姿勢を正した。


神宮寺明理紗

「お、お昼休みに……クラスの子に、遊ばないかって……」

神宮寺ケイ子

「それで?」


母は腕を組んだ。


神宮寺明理紗

「あ、謝って……勉強した……」

神宮寺ケイ子

「そう、ならいいわ。遊んでるヒマなんて、ないものね」


母は立ち上がり、キッチンへ向かった……。


白雪明理紗

「はあ……」

(無事に、終わった……)


   ◇ ◇ ◇


私は宿題をテーブルに広げ、解き始めた。

……少しして、母が後ろのソファーに座る。


神宮寺明理紗

(お母さんに、見られてる? ……ううん、集中しなきゃ)

神宮寺ケイ子

「明理紗。ちゃんと集中しなさい」

神宮寺明理紗

「えっ、あ、……はい」


……自分の手元を見ると、

私は消しゴムのカスを集めて、練り消しを作っていた。

それを、母にみられたのだろう。

私は慌てて練り消しを捨て、ドリルを見つめた。

――ガンッ!

猛烈な音が、後ろから聞こえた。


神宮寺明理紗

「!」


……肩越しに後ろを見ると、母がコップをテーブルにたたきつけていた。


神宮寺ケイ子

「イライラする、ホント……」


母は頭を勢いよく掻いた。


神宮寺明理紗

(……私の、せい……?)


私は勉強に没頭しようとした。けど、その日は、うまく集中できなかった……。

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