表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】The Safe House  作者: さかな煎餅
第3章「変化」
32/58

死ぬ理由と生きる理由

……翌日も、ベッドから上手く立ち上がれなかった。また、床に膝をつく。


夢野照

「早く、早く責任を」

夢野陽

(なにをしているんだ、オレは、早く、料理を、しないと――)


……ふらふらと立ち上がり、部屋を出て階段の手すりにもたれる。


メグ

「陽⁉」


メグちゃんが、オレを見上げて叫んだ。


氷室零

「陽、大丈夫か⁉」


二人が、オレに駆け寄ってきた。


夢野陽

「ごめん――うまく、動けないんだ……」

メグ

「そうなの……?」

氷室零

「動けるまで、しばらく休んどけ。熱は……?」


オレは額に手を当てた。……熱くはない。

オレが首を振ると、ふたりはホッと息を吐いた。


氷室零

「とにかく、休め。な?」


メグちゃんは激しく首を縦に振った。

……氷室さんに支えられ、ベッドに戻った。


   ◇ ◇ ◇


――翌日も、その翌日も。

なぜか、オレはベッドから立ち上がれなかった。

やっていることといえば、

ベッドに横たわり、木の天井を見つめているだけだ……。


夢野陽

「やっと、自由になれると思ったのに!」


幼いオレが、頭の中で叫んだ。その幼顔に、大きな影がかかる。


夢野照

「お前は無能だ」


父さんが、幼いオレを殴りつける。


幼い夢野陽

「うっ!」

夢野照

「お前が始めたことなのに、その責任ひとつ果たせないのか」


彼は拳を振り上げた。


幼い夢野陽

「や、やめ――」


ドガッ


幼い夢野陽

「うう……!」

夢野照

「責任を果たせないのなら、無能なままなら――死ね」


彼は幼いオレの首を両手でつかみあげ、締め上げる。


幼い夢野陽

「う、う……‼」


その細い足が、むなしく宙を蹴る……。

……胸のあたりが、重くなった。


夢野陽

(何もしないオレに、価値などない……

オレは、無能だ……死んだ方が、マシ……)


   ◇ ◇ ◇


……いくつか、死ぬ方法を考えてみた。

一番楽で簡単なのは、

湯船に水をため、睡眠薬か酒を飲んでから、顔をつけるというものだ。

――翌日の夜、暗い浴室に入った。


夢野陽

「…………」


……湯船の水面を、見つめる。


夢野陽

(オレなんて、死んだ方が……)


持ってきた睡眠薬の箱を取りだし、封を開けた。


夢野陽

「あっ」


……手が震え、風呂の中に、睡眠薬が全て落ちた。

――これでは、使い物にならない。


夢野陽

(なら、酒を――)


ガクッ、と膝が落ちた。


夢野陽

(どうして――オレは、死ぬべきなのに!)


……立ち上がろうと湯船の縁をつかんだが、足に力が入らない……。


夢野陽

「くそお……」

(いっそ、死ねたら楽になれるのに……‼

もう、苦しまなくて済むのに‼)


――オレには、死ぬ覚悟すらなかった。


   ◇ ◇ ◇


……浴室から出ると、着替えとタオルを持ったメグちゃんと出くわした。


メグ

「あっ……ごめん、陽……」


オレは首を横に振った。

彼女は俺の全身を見て、


メグ

「お風呂、入ってなかったの? 服着てる」


首を傾げた。


夢野陽

「うん……」


オレは力なく頷いた。


メグ

「……陽、元気出して?」


メグちゃんは大きな目を細めた。


夢野陽

(ああ……心配させてしまっている……。

……こんな優しい子を置いて……

オレは、何をしようとしていたんだ……?

オレにはこの子がいる……。氷室さんも……。

だから、今、死ぬわけには……)


オレは軽く、何度かうなずいた。


夢野陽

「うん、ありがとう……」


オレは脱衣所を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ