記者
とある週刊誌のオフィス。
煙草の煙が充満する、暗い部屋の片隅。
デスクには小太りの男性が腰かけている。
メガネをかけた青年が、デスクの前に立っている。
記者
「編集長、白雪家って……警察官僚の家じゃないですか!
そこを、僕なんかに調べろなんて……」
メガネをかけた青年――記者はそう叫んだ。
編集長
「大丈夫だ」
小太りの男性――編集長は、書類の束を記者に渡した。
編集長
「一人娘への虐待、奥様のパワハラ、旦那の不倫疑惑――
怪しい家だと、すでに色んな筋からの情報がある……。
お前は証拠を押さえるだけでいい」
記者はぺらぺらと、紙の束をめくる。
記者
「……そう、カンタンにいきますかね。相手は官僚ですよ……」
編集長は手のひらを上にしてにぎりしめ、
編集長
「だからこそ……証拠が出たら、ドカンだ」
開いた。
編集長
「雑誌は売れるし、お前のやりたかった、
正義の鉄槌とやらも下せるじゃないか」
記者
「……はあ。わかりましたよ」
記者はむっとした顔でうなずいた。
◇ ◇ ◇
白雪明理紗
「はあ……」
私はリビングのソファーにドッと腰掛けた。
白雪明理紗
「まだ、恵は見つからないの?
犯罪者どもを逃がしてから、もう1か月は経つじゃない……」
私は痛む頭を手で押さえ、傍らに立つ部下を見た。
明理紗の部下1
「申し訳ございません、奥様……」
ピンポーン
……インターホンの音が聞こえてきた。
白雪明理紗
「……出なさい」
明理紗の部下1
「はい」
部下は廊下に出た。
白雪明理紗
(なに? 今日は来客の予定なんてないわよ……?)
部下はすぐに戻ってきた。
明理紗の部下1
「奥様、週刊誌の記者と名乗る方です」
白雪明理紗
「はあ⁉ 週刊誌⁉」
(下品な連中が、何の用よ⁉)
私は立ち上がり、インターホンの画面をにらんだ。
……眼鏡をかけた、おどおどしている青年が、こちらを見ている……。
記者
「あのう……白雪明理紗さん、真さんについて、
お伺いしたいことがあるのですが……」
白雪明理紗
「お話することはありません! 帰って!」
私はインターホンを切った。
◇ ◇ ◇
ブツン‼
記者
「あ‼」
記者はインターホンを押さえた。
記者
「切られちゃった……」
彼はスマートフォンを出して操作し、耳に当てた。
記者
「あのう、編集長……
今、白雪さんのお宅でインターホンを鳴らしたのですが、
切られてしまいまして……」
◇ ◇ ◇
週刊誌の、編集室――。
編集長は煙草を口にくわえ、電話に出ていた。
編集長
「ごほっ、ごほっ!
……お前、証拠集めなのに、本人に話を聞こうとしてどうする⁉
……すみません、って、俺に謝られてもなあ。
これから、相手はかなり警戒するはずだぞ?
……まあ、いい。
具体的にはお前が考えればいいが……
まずは外堀を埋めて行くんだ、いいな」




