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【完結済み】The Safe House  作者: さかな煎餅
第1章「新たな使命」
12/58

もう後悔したくない

メグ

「……陽!」

スーツの男

「ほら、帰りますよ」


メグは夢野に手を伸ばした。

小さな足をバタバタさせているが、引きずられているばかりだ……。


女性

(これでいいんだ……)


そう、これでいい。メグは実家に帰る。

そこで、幸せに──


女性

「…………」


泣きぬれたメグのほおには、濃いあざができている。


女性

(幸せに……?)


……とても、そうとは思えない。


女性

(でも──メグは、赤の他人だ。私がかつて、夢野陽に言った通り──

私の人生に、メグは、なにも──)


……白い棺……

……燃え盛る建物……


女性

「……‼」

(わたしは……また、目の前で命を失うのか⁉)


どくどくと心臓が鳴る。うるさいくらいに。


女性

(今──ここが、分かれ道だ……)


ヘリが下降してきている。もうすぐあのヘリに、メグが乗る……。

そして永遠に、私の前から──


女性

(いいのか? 本当にこれで、いいのか……?)


「ただ、生きていてほしい」


女性

「‼」


「生きる気力を! 取り戻してほしくて!」


……夢野陽の言ったことが、なぜか今、もう一度思い出された。


女性

「馬鹿野郎……」

(尊い命を失ったことのある私に、それを言うか……‼!)


……もう、二度と、後悔したくない。


女性

「……ふーっ」


私は頭をぐっとさげた。そして、


女性

「オラァ!」


私を羽交締めする男の顎に向かって、思いっきり跳ねた。


スーツの男

「ぐっ⁉」


……男の腕が緩んだ! 私はその太い腕から抜け出し、


女性

(陽が薪割りしている時に、見えた……‼)


倉庫に向かって駆けだした。


   ◇ ◇ ◇


メグ

「陽……!」


メグ

(そんな……陽、死んじゃったの⁉)


……私のせいだ……。


メグ

(私が、この男の人たちに、逆らったから……

でも……おうちに、帰りたくない……!)


ブロロロロロ───


??

「ぐああっ!」


遠くの方で、もう一人の黒い服の男の人が、何かに突き飛ばされていた。


メグ

「‼」


何かに乗った女の人が、陽を後ろに乗せた。


女性

「メグ! 手を!」


私は咄嗟に手を伸ばした。ものすごい勢いで、女の人が近づいてくる。


メグ

「!」


ぱしっ、と音がして、女の人に手を掴まれた。


スーツの男

「待て!」


そのまま、ふわっと身体が浮く。


メグ

「わっ──」


――気がつくと、ぐったりしている陽の後ろに座っていた。


メグ

「え? え?」

女性

「どこか痛むところはないか? 平気か?」

メグ

「え、あ、はい!」

女性

「ならよかった。……しっかりつかまってろ!」


女の人が手を動かす。周りの景色が、どんどん過ぎ去っていく。

私たちは林へと入っていった。


   ◇ ◇ ◇


女性

(なんとか、間に合った──)


……さっき、倉庫の空いた扉から、バイクが置いてあるのが見えた。

鍵が刺さっていて、無事に動いたのが幸いだった。


女性

(かなり強引だったが──すこし、気分がいい)


林を抜けると、崖に仮の橋が既にかかっていた。


女性

(ちょうどいい!)

工事の人

「あ! 住人の方ですか!」


こちら側にいる、作業着を着た男性に話しかけられた。


女性

「ああ、そうだ!」


私はバイクを橋へ走らせた。


   ◇ ◇ ◇


山を下り、道に出る。……幸いなことに、雨が降ってきた。


女性

(これで、ヤツらを撒けるか? 

……いや……陽の傷にさわる……)

メグ

「陽……大丈夫なの……?」


バックミラー越しに、メグの暗い顔が見えた。


女性

「わからん。だが……なんとかなるかもしれない」

メグ

「え⁉」

女性

「腕利きの医者を知ってる」


私はバイクのスピードを上げた。背中には、ぐったりしている陽の温もりがある。


女性

(間に合ってくれ──)


コイツを、死なせるわけにはいかない。


女性

(もう、命が失われるのを見るのは、イヤなんだ………………)


医者へつながる、遥か遠くへ続く道を、睨みつけた。


女性

(別に、コイツのためじゃない。

私自身の、個人的な事情があるからだ。

それは……陽の目が覚めた時に、言わないとな)


そんなことを思いながら、私はバイクのスピードを上げた──。

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