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青の一口  作者: 昼想夜夢
2/2

噂のA子ちゃん

やはり青春というのは,あまずっぺぇ恋もしたい!

そんな私の気持ちを込めて書きました!

今日も私は嘘をつく。

それはとっても悪いこと。

でも、隠さなきゃ私は耐えられない。

私は、成本が好きだ。

「けっ、今日も生徒指導の前島に怒られたぜ。」

成本は、上半身をのけぞらせ,あくびをしながらそう言った。

「またあんたバカなことしたんでしょ。」

私が嗜めると,不機嫌そうに眉を下げて、別に何もしてない。と小さく呟いた。

「俺,どうしていっつも目つけられるんだろ」

首を傾げて、私になんでだと思うと問いかける。

「成本のことを前島が気に入ってるからだよ。」

私が軽く笑って答えると、そっかな。と軽く言って、ならいっかと笑った。

成本は、サッカー部で、肌が焼け,足の所々にあざや傷があり,theサッカーボーイって感じで、親しみやすさがオーラから感じ取れる。

だからこそ,彼のことを好きな人も多い。

私は,それこそ,人の恋愛になんて興味がないから、彼のことを好きな人の名前も、どんな人でなぜ好きなのか知らない。

ただ、そういう噂を聞くだけである。

「はー、ほんとあんたってたくさんの人から好かれるのね。」

「別に好きで好かれてるわけじゃないし。」

廊下に落ちてる紙屑を拾って成本が言った。

「お前のこと好きな、A子ちゃんはさぞかし可哀想だ。」

皮肉気味に言うと、成本は紙屑をギュッと手に握りしめて、遠くのゴミ箱目掛けて投げる。

こいつの投球力は凄まじく、簡単に紙ごみはゴミ箱の中に入ってしまった。

「A子ちゃん、ね。お前いつもその子の話してるけど,なんで名前教えてくれないの?」

成本は,私の顔を覗きながら駄々をこねる。

「A子ちゃんに失礼でしょ。私は友達の秘密をバラしたくないの。」

A子ちゃん…、これは私のことだ。

私に恋愛話をしてくる友達は数少なくいるけれど、興味がないから知らないし、

きっと成本を好きなA子ちゃんが、本当にいるとして、本人にあなたのこと好きなA子ちゃんがいるよ、とは言わない。

「イニシャルがAってこと?」

「Aは別に関係ないよ。適当に名付けただけ。」

「えー、じゃあA子ちゃんのこと俺全然わかんないってこと?」

「そ、卒業式の時にでも教えて貰えば?どうせ,あなたの靴箱の中は愛の手紙でいっぱいなんでしょーから。」

「ふーん、A子ちゃん。俺に告白するって言ってたの?」

「さあ、どうでしょうね。…するんじゃない?」

もちろんしない。私は成本の友達でいたい。

好きなんて伝えたら,

この関係が崩れてしまうのではないか,と恐ろしくなり,体が震えてしまう。

んー、と成本が小さく声を出しながら

背伸びする。

「俺のこと好きな人がいるって幸せだよな。」

「急にポエム?」

「っちげーよ!…別に,それが誰であろうと、誰かの愛を受け取るってすごく嬉しいことだよな。誰かに愛されてるって思うと、ほんの少し,ほんの少し…自分のことを好きになれる気がする。」

成本は,サッカー部の引退試合前、足を骨折して、3年の最後の試合、ベンチで仲間が負ける姿を目に焼き付けたのだと言う。

その時の、成本は,目が死んだようになり、

教室の端っこで、自分の骨折した右足を、痛みに耐えながら殴っていたそうだ。

あの時から,成本は自分のことが心の底から好きになれないのだと言う。

私はこんなに好きなのに…。

「…ごめん。卒業前なのに、なんか,暗い雰囲気にしちまって。」

「いいや、大丈夫だよ。卒業式、A子ちゃん分かるといいね。」

卒業式まで後3日、高校は成本と離れてしまうから、もっと、今のうちにもっと思い出を作りたいと思う私は,傲慢なのかもしれない。

卒業式の日

顔がぐしゃぐしゃになるまで泣いた。

代表生徒の言葉に心打たれ、みんなで最後に歌う合唱で泣き、人生でたくさん泣いた日の一つだと思う。

卒業式が終わり,教室へ帰ると、最後のホームルームが始まった。

「えー,みなさん…、卒業ですが,どうかお元気で。自分の未来へ元気よく羽ばたくことを先生は願っています。」

桜井先生が、涙ながらにそう言った。

卒業式の後の教室は、卒業式とは違う、物寂しい雰囲気がある。もうここともお別れだ。

そして,成本とも…。

高校でも連絡が取り合えたらいいな,と思う。

窓の外を見ると,桜が降りしきっていた。

これは,絶好の告白日和じゃないか。

成本の机の中を遠めに覗く。

そこには一つの手紙が入っていた。

あぁ、きっと告白されるに違いない。

成本に彼女ができても、私は…、私は…。

クラスの泣ける雰囲気も相まって私の瞳からは涙が出てきた、。

あぁ、嫌だな。取られたくないな…。

でも,そんな気持ちを持ってても、私は告白しないのだから、手紙をあげたその子に一歩負けている。

ホームルームが終わった後、学校前の広場で写真を撮った。みんな顔がぐしゃぐしゃの真っ赤だった。15年間ありがとうって。みんなで抱き合って笑った。楽しい。楽しい。

でも、私の心の中には楽しいだけじゃなかった。ずっと心につっかえてる。

成本はどうなったのか、誰かと付き合ったのだろうか。

私は一度,友達と離れ、成本を探した。

だが、人が多くなかなか見つけることができない、歩き回っていると友達に捕まって、写真を撮り合う。これでは埒があかないと思い、

私は,一度校舎の裏側に避難することにした。

校舎の裏側に行くと,

成本と、……、女の子がいた。

よく見ると,同じクラスの飛鳥あすか

だとわかった。

2人は向き合い、何も言わずに黙っている。

飛鳥は下を向いており、

成本は飛鳥の後頭部を見つめている。

私はごくりと喉を鳴らし、

その様子をじっと観察する。

2人の沈黙に、

引っ張られるように私も緊張したのだ。

張り詰めた空気に、細々強い声が発された。

「…、す、好きです…。晃樹こうき、私と付き合って…!」

飛鳥が、頭を下げる。そして手をかざしている。成本は、3秒ほど沈黙し、こう言った。

「ごめん。気持ちは嬉しい。告白してくれてありがとう。でも,俺,…お前とは付き合えない。」

辛そうな顔をして成本が言った。

一説によれば,告白は、振られる側より振った側の方が辛い…そうだ。

きっと成本も優しいから辛いのだろう。

「どうして、!?他に好きな人がいるの?」

飛鳥は食い下がる。

お前とは付き合えない。この言葉が飛鳥には深く突き刺さったのだろう。

「…、他に、好きな人がいるんだ。」

その言葉を聞いた瞬間、

飛鳥はその場に倒れ込んだ。

私も衝撃を受けた。

成本,好きな人いたんだ…。

飛鳥は,泣きながら…、走り去ってしまった。

その背中を成本はじっと見つめ,見えなくなるまで目を離さなかった。

私は,今行くべきではないなと思い、大回りしてみんなのいる広場に帰ることにした。

ゆっくりとした足取りで戻る。

きっと,成本は最短ルートで広場に帰るだろうから。と、安心しきっていた私がバカだった。

「おーい、柳!」

後ろから声をかけられた。

その声は正真正銘成本だとわかった。

私は後ろを振り向かず、

そのまま、「何?」と言った

その行動を不思議に思ったのか、

成本が「どうしたんだよ、」と肩を叩いてきた。

今,私の顔見て欲しくない。

「なんでもないっ、卒業式後で、顔がぐちゃぐちゃだから,顔見て欲しくないの!」

嘘だ。本当は違う。

成本が飛鳥を振ったことを喜んでる

自分を見て欲しくないだけだ。

今も,口の端が上がってしまってる。

最低な顔だ。

「お前の顔見たい。」

成本がそう言って、

顔を隠してる私の手を握った。

『なんで,そんなことするの,』

心の中で思う。

その瞬間、私は成本の手を力一杯振り払った。顔から手を離してしまったんだ。

私,どんな顔してる、?

沈黙が流れ,成本が口を開く。

「やっぱさ,……A子ちゃん、って飛鳥のことじゃないよな。」

急に成本が俯きながらそう言うから、何か気づかれたのか,と、心臓がどくどくと音を立てて、早く鼓動する。

「、さあ、?どーでしょーね。」

平気なふりを振る舞う。

でも,成本の真剣な顔を見ると、嫌でも息を呑んでしまい、戸惑いを隠せない。

「A子ちゃんって、お前のことじゃないのか。」

「っ!……!」

声に出せない、あぁ、気づかれちゃったんだ。

やっぱり,嬉しい顔してたのかな。

絢音が振られて、安心し切った顔してた?

ポロポロと涙が目から落ちる。

大粒の涙だ。卒業式の時よりもしょっぱくて、顔を濡らす面積も多い涙。

「…。ずっと思ってた。お前みたいな秘密主義のやつが、他人の秘密を本人に言うかって…、それこそ,名前は隠してたけど。お前がわざわざA子ちゃんって子がお前のこと好きだよなんて言わないって、ずっと疑問だった。」

成本は私の涙を指で掬って、ふふッと笑った。

「やっぱ、A子ちゃんってお前だったんだな」

優しい声色だった。

それとなく、嬉しそうだ。

「怒ってないの?嘘ついたこと。」

「別に,怒るわけないよ、」

「私、最低な女なの!成本…、」

「どうして?」

「だって、A子ちゃんって言ってさ、私の事を居るはずのない他人に押し付けて、嘘ついて、…あんたが飛鳥を振った時だって、…!」 

力一杯な声だった。

わたしも自分で驚くくらい必死な声だった。

「…、」

成本は何も言わず,わたしの言葉が終わるのをただ待っていた。そして重く口を開く、

「…あのさ、俺、サッカーで試合出れなかったじゃん?最後の大事な引退試合。俺,あの時すっげぇ、くやしくって、自分の無力さに打ちのめされて、俺,心が弱いからさ、死んでも良いやって思ったんだよ。右足に八つ当たりして、自分に八つ当たりして,…、仲間に八つ当たりして…、最低なやつに成り下がってた。」

ひどく悲しい声だ。嗚咽混じりの、掠れた声。

「…そんな時、お前が、俺に言ってくれたじゃん。お前は,今までの痕跡を見ないバカなのかって、結果が全てじゃない。確かに結晶を作ることはできなかった。けど、跡がある。お前の努力の跡がって…、あれ,俺すげぇ嬉しかったんだよ。」

成本が、言う。

今にも泣きそうな表情に目を惹かれてしまう。

「あの時から、いや,そのずっと前から…、」

成本は,耳を真っ赤にして俯いている。

そして、ばっ、と顔をあげ、こう言った。

「…好きだ。」

私は,ブワッと顔が赤くなり身体中から汗が吹き出た。そして、目に溜まっていた涙もボロボロと流れ落ちた。

「…、…わたしも、…すき!」

我ながら不細工な顔だ。

でも,成本はそんな私の顔でさえ愛おしそうに見つめ、頭を優しく撫でた。

「ほんっとっ!お前って可愛いなっ!」

「な、!成本の方が!かっこいいもん!」

2人で笑いながら,泣きながら,みんなの広場へと足を踏み出した。

まだ登り途中の日が嬉しそうに、私たちを優しく照らしている。

私たちの影が伸びる。

今日が私が人生で

1番嬉しくて泣いた日だった。

           ーendー

こんないい人いるんか、本当にいるんか、

結局、好きな人さえできれば

好きな人は、何しててもかっこいいし

何しててもかわいいですよね。

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