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青の一口  作者: 昼想夜夢
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憧れはいつだって君。

青春ってのは甘酸っぱい恋だけじゃないですよね…。

私も特に部活は人間関係などで、

試合や練習のプレッシャーでよくお腹痛めてました!

その少し暗くなっちゃう部分を書きました!

ぜひ読んでみて欲しいです!


「風早、今日は部活、どうする?」

私に話しかけてきたのは、

同じクラスの牧谷だ。

「別に…行く気もないけど。」

私がそっけなく返事をすると、

バツの悪そうな顔をして、

「そっか。」

と呟き、俯いて、

またどこかへ行ってしまった。

私は今、部活を連続して休んでいる。

昨日も一昨日も、そしてその前も…。

行きたいけど行けない。

行きたくないけど行きたい。

ずっと頭の中を、行く,行かない,行きたくない,行きたい、そんな言葉が反芻していた。

「そんな顔すんなよなぁ、」

小さく呟き、机にヘタレ込む。

私の所属している部活は、バスケ部だ。

県の中でもそこそこ強いけれど、

厳しすぎる練習も特にはなく、

コーチの先生も優しくて、

いわゆる、優良物件?優良部活?

と言ったところだろうか。

だが、私の足は部活にはなかなか

進まないのである。

その主な理由は、

さっき話しかけてきた牧谷にあった。

あの牧谷の顔を見ると,どうしようもない葛藤と怒りが私の心を包むのだ。


牧谷は,強い選手なんだと思う。

強く、凛々しく、それでいて茶目っ気があって

沢山の人に好かれるような存在だった。

男バスと,女バスは、コートの間にネットを張ってよく一緒に練習することがある。

だから、私はよく牧谷をみる。

コートの中を縦横無尽に駆け、ディフェンスを避け,ゴールにボールを決める。

そんな彼を私は尊敬していた。

だが、2年に上がって少し経った頃…

そんな彼が妬ましくなってしまったのだ。

それは、私がチームのエースとなったこと

がきっかけだ。

他の仲間で、絶対にエースに

向いている子がいた。

だが,その子は首を振るばかりで、

私の背中を押し,絶対に風早がいいです!と、

エースの座を私に押し付けたのだ。

最初の方は特に気にしていなかったが、

練習が進むにつれ,チームをまとめなきゃとか、仲間同士の関係をもっと見つめ直さなきゃとか、自分で自分を痛めつけ始めた。

それだけではない。

優しいコーチの「エースなんだから。」

この一言が私の胸に深く刺さって抜けなかった

なりたくてなったわけじゃないとか、

あの子の方が向いてたのにとか、

人にまで責任を押し付けるようになって、

そんな時、チームをうまくまとめて、

仲間と笑い合い、楽しそうにしている、

男バスのエースとなった牧谷を見て、

どうしようもない、絶望感に押し流され、

私は部活に行かなくなった。


誰もいなくなった放課後の教室で、

私は机の上で項垂れる。

逃げてる自分が嫌だ。変わりたい。

でも、もうあんな辛い思いしたくない。

涙が滲んで目の前の景色を濁す。

鼻がむず痒くなって顔全体が引き攣る。

ポロポロと涙が流れる。

私はエースで,みんなをまとめなきゃ行けなくて、それで…。

「やっぱり。」

私の後ろから声が聞こえた。

「泣いてたんだな。」

後ろをバッと振り返れば,

それは正真正銘、牧谷だった。

「は、な、なんでここに?」

「動揺してるみたいだな。…まあそーだよな。」

牧谷は,頭をぽりぽりとかきながら言った。

「牧谷、今日練習でしょ?」

「あーまあな。ははっ、」

歯切れの悪い返事にムカついた。

こいつはなんで、ここにいるんだろう。

馬鹿にしているんだろうか。

嘘だ,そんなことする奴じゃない…。

「何しにきたの?」

「お前と話に。」

「は?どういう意味?」

そっけなく返事をしてしまう。

牧谷は何も悪くないのに、今もなお、この目の前の男に劣等感を抱いてしまう。

スゥーッと息を大きく吸って、

牧谷は言った。

「俺,お前のこと昔っから嫌いだった」

「は」

声が口から漏れた。

何を言われるかと思えば、私への罵倒だった。

「すぐに凹むし,怒るし,自分のこと責めるし、人に意外と厳しいし、一丁前にカッコつけるし,たまに意味不明なこと言うし、」

目の前の椅子に腰掛け、

牧谷は、私と目を合わせる。

「だけど、…、お前は優しいし、責任感が強くって、人のことたくさん考えられて…。良いとこ盛りだくさんだよな。」

「何の話をしてるの…?」

「お前,俺のこと妬んでないか?」

ヘラっと笑いながら牧谷が言う。

「…妬みたくて、妬んでるわけじゃない。」

私は泣いて赤くなった目を擦りながら言った。

「…まあそうだよな。」

牧谷はまた俯いて、でも顔を上げて目を合わせて,私のことをじっと見つめた。

「お前はなんか勘違いしてんだな!」

「え、は?勘違い…?」

「そ、俺のことかっこよくてちょーハイスペックなつよつよエースだと思ってるだろ。あのな

それ全く違うから!」

牧谷が身を乗り出して言うもんだから、

一瞬気後れしてしまう。

「じゃあ何で、…何で…あんなに楽しそうに、あんなにうまくチームをまとめられるの…!?

そんなのあんたが、…あんたがすごいから!」

「違うよ。俺は人をまとめるのが苦手だし、自分で手一杯だから、お前が憧れるような奴じゃないよ。」

「嘘、嘘つき!」

「なあ、風早…。お前には俺がどう映ってるのかわかんねぇーけど、…。」

一呼吸おいて、牧谷は言った。

「俺の目に映るお前は、誰よりもかっこよくて、立派なエースだよ。」

息を呑む。

初めて,お前は立派なエースだと言われた。

「俺は,エースだけど、いつだって仲間に頼ってる。試合してて大体1番最初に落ち込むのは俺だし,落ち込んで試合に支障をきたすのも俺。そんな時に仲間が、頑張ってこーぜって励ましてくれる。エースとしてまとめられない時は、みんなで声を合わせて頑張ろうって、逆にチームの方がまとまっちゃってて…。」

牧谷は笑いながら言う。

「でも、お前はいつだってめげないし、落ち込んでる仲間がいたら背中を叩いて励ますし、

チームがまとまらなかったら手を取って頑張ろうと引っ張ってくれる。…。俺とは全然違う。

本当にすごいやつだ。立派なやつだ。尊敬できるやつだ。」

迫真に言う巻やから目が離せず、

瞬きも忘れて、話に入り浸る。

『俺の,憧れなんだよ。』

その言葉を聞いた瞬間に、

目から鼻にかけてむず痒くなった。

そしてしょっぱい雫が頬をつたい机に落ちる。

ずっと言われたかった。

ずっと頑張ってた自分を認めて欲しかった。

牧谷みたいに…

誰かの憧れになりたかった。

笑い合う声、ボールが床を跳ねる音、きゅっきゅと言う靴の音、練習が始まる笛の音が

遠くでなっているこの音が聞こえた。

まるで近くにいるかのように。

「だから風早…、俺の憧れのお前が、

こんなとこでいじけてほしくない。一緒に頑張ろう、一緒にやっていこう、一緒にバスケってやつをやり尽くそうぜ。」

牧谷は私の目の前に手を差し出した。

私はそれを見て,重たい口を開いた。

「……。牧谷…、ありがとう…、」

涙を拭って、その手を取る。

いつだって部活は葛藤の繰り返し。

人間関係も技術面も、ストレスは溜まり放題だし…、逃げたくなる時も、何度だってある。

でも,憧れさえあれば、

そんなの屁でもなくなるのかもしれない。

「牧谷…、」

「ん?」

「…言い忘れてたけど、私の憧れも…」

きっと、きっと、こうやってまた背中を押してくれる人を、

「お前だよ。」

私たちは憧れというのだろう。

どうだったでしょうか。

憧れは嫉妬と1番近いところにいますよね,

一歩間違えれば,嫉妬深くなってしまう。

こういう時に、

励ましてくれる人がいると嬉しいですよね!

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