カラオケボックスの幽霊
きさらは喫茶店でお昼をそこそこに食べて本日の依頼主に会いに行く。
駅から数分のところにあるカラオケ店である。ここは普段から学生の客で賑わっているカラオケ店で、きさらの高校の生徒も数多く行っている。
まずカラオケ店に入ると受付のお兄さんに声を掛ける。
「すみませーん。今日、お祓いの依頼を受けた宇都宮きさらと申します。店長さんはいらっしゃいますか?」
きさらは丁寧な挨拶をするが、受付の店員は巫女の格好をした女の子がいきなり目の前に現れたから少し驚いている。
「すみません、店長さんは・・・?」
「あっ、店長ね!いるよ。すぐ呼んできます!」
店員のお兄さん、少しきさらの格好に見惚れていたのかボーっとしていた。
しばらくして店の奥から現れたのは体格の良いおじさん、このカラオケ店の店長であった。
「やぁこんにちわ。ここの店長です。少しお話があるので別室に案内します」
やはり心霊やお祓い関係のことは受付では話せないものである。きさらは店長に連れられて関係者以外立ち入り禁止の部屋へと連れて行かれた。
部屋へと連れて行かれて、きさらは椅子に座るといきなり店長が鍵を渡してきた。
「これは・・・?」
「カラオケボックスの鍵だよ。実は一か月ほど前にこのボックスで心霊現象が起きてね・・・。お客さんの間で凄い噂になっていたんだ。だから使用禁止という事にして鍵を閉めているんだ」
「なるほど・・・」
部屋を閉め切るのは上策ではない。閉め切った部屋は陰気な空気が漂うから幽霊が寄ってくるのだ・・・。
だが、この霊が浮遊霊だとしたらあちこちを彷徨うかも知れないから悪い策でもない。
「心霊現象とはどういう現象が起きているんですか?」
すると店長らメモ用紙を持って来る。
「僕は実際にその心霊現象を見たことがないから全てお客さんと従業員の話になるけど・・・」
店長はメモ用紙を読み上げた。
その内容は昼間なのにカラオケボックス内から軋む音がする、歌っているはずなのにマイクから別の人の声がする、カラオケの画面が突然砂嵐になる、突然テーブルが揺れる、誰も居ないはずの隣の部屋から壁を叩く音が聞こえる・・・等である。
「うーん・・・」
店長が言った内容を聞いて、きさらは少し考える。
気の所為ではないか?と思える内容もあるが、明らかに心霊現象なのもある。特にマイクから別の人の声がするとかカラオケの画面が突然砂嵐になるのな怪しい。
「本当に幽霊の可能性もありますね・・・。店長さん、過去のこのカラオケボックスで何か事件でもありましたか?」
すると店長は言いにくそうな顔をする。
「じ、実は・・・!」