荒野に打ち捨てられた肉(カルネ)に、神の残滓(サルクス)を見れる者は幸いである
おお・・
美を冒涜する一座がやって来る。
墓場の喜劇を
上演する為に。
見ろ!!
玉乗りの熊は死骸であり、
目の空洞の中から
黒い甲虫が不機嫌に顔を出す。
座長は飢饉そのものだ。
顔は無数の蝗で出来ており、
実体の無いその下には虚しかない。
ああ、
白塗りの道化師は、
肉が腐り、蝿共が集る美を書いた
腐臭のリチェルカーレを
リュートで奏でながら
舞台から落ちていく。
台車の上の魚籠には
聖週間の魚と
「SITIO・・」
と呟く二枚貝達が
積まれている。
顔を二羽のカラスに
啄まれている
ファド・プパリウムの歌姫が言う。
「十字架に
神の死骸と永遠の命を磔にし、
栄光から見放され、
それでも懇願するのか?
恥知らずに・・」
体を銀色に塗りたくり
鰯の仮装をした陰気な男が言う。
「低き地では神聖さは冒涜され、
ラテン語の真理は
赤痢の血で殺される」
座長が、
蝗の羽音の中から
死んだ者達の声で唱える。
「さぁさぁ、
キリストが去った地を彷徨い、
荒野に打ち捨てられた肉に、
神の残滓を見れる者は
幸いである。
そうでなければ、王や民達は
有るものを全て喰い尽くす。
牛が野の草を食い尽くす様に・・
そして、
我々の牛も馬も肉である・・」
奇抜な一座は、
陰惨な空気をばら撒き、
馬車道の草木は枯れ、
子羊の死骸は起き上がり、
奇声をあげる・・
ああ、ご覧の通り!!
十字路は汚染される。
群衆の中の魔女ピヌスは言う。
「死だろうと、徳だろうと知った事か。
目の前の日々を生きる事で手一杯。
だったらあらゆる事を
目で見て感じ楽しむ事を
一体何方が咎めるだろう?」
一座はさらに大通りを進む・・
キリストの磔刑像が
哀しげな顔で涙を流しはじめ、
ラテン語を呟く。
QUIA VIDISTI ME, CREDIDISTI
(私を見たから信じるのか?)
一瞬の静寂の後、
座長がキリストの像の方を
くるりと向く。
「しかし、キリストよ・・
ご存知ですかな?
砕かれた骨達の悲しさを・・
低地にて、
低い魂と肉の中で生きる
本当の苦しみを・・」
風になびく山羊の皮が
笑って唱える。
「在るという滑稽な悲劇・・
在るという滑稽な悲劇・・」
それを見ていた
通りすがりの天使が呟く。
「または・・
命をこぼしながらも生き、
笑われ、這いつくばりながらも
決して凡俗を許す事は無い気高さ・・」
ああ、皆
内側に向けて乾いてゆく・・