ガクチカに全てを賭ける
ガクチカ。
学生地下闘技場。略してガクチカである。
ここで勝ち抜けば、将来は安泰とされている。
「ガクチカをお聞かせください」
「はい。わたしは学生地下闘技場で、最高3位までいきました」
「ガクチカですよ。学生時代に力を入れていたことですよ。なんですか、学生地下闘技場って。闇のデスマッチにでも参加していたんですか」
「学生地下闘技場ですよ。そんなことも知らないのですか。今の学校だと、普通整備されていますよ」
「い、いつの間に学校は地下施設――、って面接官にそんなことも知らないとか言って、落とされたいのですか」
「いえ、ジェネレーションギャップに驚いて、つい思っていたことが口に出ました。すいません。学生地下闘技場とは、ガクチカのために学校が独自に考案した様々なバトルを行う場所です。部活や行事や勉強では測れない能力を順位付けするために作られた場所です」
「な、なるほど。それで最高3位とは、どのようなバトルで得たのですか」
「はい。円周率の桁を何桁まで言えるのかを、競い合って3位となりました」
「その能力は我が社でどのように役に立つとお思いですか」
「わたし、数字の記憶力があるので、きっとおそらく、どこかで役に立ちます」
「自信満々なのに、曖昧ですね」
「だって、どの部署に飛ばされるかもわかりませんし。配属ガチャ次第です。できれば星5確定の演出とかあればいいのですが」
「そんなシステムはうちの面接にはありません」
「そうです。ガクチカだと、あとはリングマッチで四位でした。ケンカには自信あります」
「そんな笑顔でケンカ自慢をされましても。暴力沙汰は御法度ですよ」
「そういう建前は知ってます」
「いや、建前じゃないからね。本音だから。うちは清く健全な経営しかしてないから。暴力団と関わりとかはないから」
「え、でも、わたしが入社したら――」
「はい、ストップ。ストップ。面接は終わりまーす。後日、メールで面接の合否をお伝えします」
「待ってください。わたし、今、この場で合否を知りたいのですが」
「あのー、その懐から出して、今僕の眉間に当てられている銃は、偽物だよね」
「引かなければ、どっちでもいいと思いませんか」
「よ、よーし。そこまで弊社に入りたいならば、僕もできるだけ君を就職させるように取り計らうよ」
「ホントですか。ありがとうございます。第三志望ですが、よろしくお願いしますね」
「...…第一志望に受かっていることを心よりお祈り申し上げます」