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ベア

作者: 84

“ベア”とは、「ベースアップ」を省略した言葉です。つまり、「基本給ベースの水準を上げる(アップ)」ことをいいます。

21時を過ぎ1人きりになったオフィスで拓也はwikipediaで最近話題の賃上げについて調べていた。

大学を卒業してから7年。拓也は今年29歳になることにとてつもない焦燥感を感じていた。

30歳手前まであっという間に感じた要因は2022年まで猛威を奮っていたコロナウイルスである。

遊び盛りの20代前半から半ばにかけて思い切り遊ぶことができず、ただただ日々を過ごした。それだけではなくリモートワークが中心となった影響で仕事へのモチベーションは下がり、出社することが増えた近頃も以前のような熱量はもうない。

そんなときにさらにモチベーションが低下する出来事が起こった。それは多くの大手企業がこぞって賃上げを始めたことである。拓也が務める地元の中小企業は世間の賃上げの流れについていけず、とりわけ安くも高くもない給与を支給し続けている。

「転職するにしてもここ2年がラストチャンスか…」乾いた言葉がオフィスに響いた。


〜10年後〜

カシャンカシャン…

20円のお釣りをポケットに放り込む。

「さぁ今日もやるか…」レッドブルを渇いた喉に流し込む。

10年前拓也は東証プライム企業への転職が成功し、時代の流れに乗り「ベア」を勝ち取り、基本給が5万円アップした。

給与アップと世間体を同時に勝ち取り、自分への自信を取り戻していた。

そんな時間もわずか2年しか続かなかった。

レベルの高い同僚、複雑かつ高度なレベルを求められるようになった業務について行くことができず、あっという間に窓際社員に。

気づけば、転職前の会社の同期は役職に就き、平社員の拓也と給与の差はあまりない。

今日も一本300円に迫ろうとしているエナジードリンク片手に1人オフィスで残業をしている。


ブーブー。

暗くなった部屋にスマホの明かりが光った。

「〇〇社からスカウトが届いています。」


「転職するにしてもここ2年がラストチャンスか…」乾いた言葉がオフィスに響いた。



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