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#3

パンッ!衝撃があった。

何が起こったのかよく分からない。

俺は確か飯を食って、ゲームして、そのまま寝て……。


え?げっ!?うえええっ!?

俺の目の前にごつい体をした女装家が居るっ!!

「……やっぱり似合ってるわー、あんたの恰好。

いつものださパーカーよりずっといいわよー。」

恰好?

恰好って……えっ、えっ!!


俺は座っていた椅子から飛び降りると俺の体、全身を見る。

「なんだよこの恰好!?

かわいい……けどなぜ俺がこんな恰好を!?」


***


イチジクの様子がどうもおかしい。

ここ、カフェのオープンテラスで食事をしていたのだが、

急に驚いた顔をして、椅子から飛び降りるとぴょこぴょこと小躍りしながら一回転、二回転をする。

何をしてるのかしら?

「ねえ、どうかしたの?」

「どうかしたって……お、おおおお前、誰だよ…。

こ、ここどこだよおっ!!オープンテラスじゃん!通行人に女装姿丸見えだしっ!!

誘拐か!お前、おおお、俺、誘拐されたのかっ!?」

何言ってんだこいつ。

「そ、そうだ、サイトーに電話しよう。

いいか誘拐犯!!俺にはサイトーという北斗神拳を学んだ男がい、いて。

お前など一瞬であべしだ!覚悟するのだこのラオウもどき!」

……。

「ね、ねえ、ねえあんた。

もしかしてサオトメなの?」

「え?……そ、そうだ!サオトメ・リューだ!

誘拐犯のくせに名前も覚えていないのか!?」

やばい。

私は思わず机の下へ体を隠した。

私のでかい体を無理やり机の下へ押し込んだからガコンっとでけえ音が響く。

やばい、やばいやばいやばい。

何故か分からないが、イチジクが人格チェンジしてしまった。

さっきまでは確かにイチジクだったのに…。なぜ?

そして私の秘密がサオトメにバレそうになっている。

サイトーに電話するとか言ってたから私がサイトーだということはバレていないようだけど……。


……はっ、いや待て。

ピンチなのは私だけではない。


私はそろっと机の下から鼻の上だけを出す。

女装しているサオトメを眺める。

焦ってうまくスマホのタッチ操作ができていないサオトメを眺める。

彼はビデオを撮ったときのイチジクと同じ顔をしていた。


そう、サオトメが鏡を見たら……バレる!

イチジクの存在がバレる……可能性がある!!


私はそれに気付くとばんっと机から飛び出した。

そしてサオトメをひったくってメイク落としでぐいぐいと顔の化粧をそいでいく。


「痛い!痛い痛い!毒薬!?麻薬ですか!?」


おっけい、友の危機は脱した。

次は私の危機を……。


そのとき、私のカバンからラインの着信音が流れた。

私は一瞬固まってしまった。

だがサオトメは気付いていない。

偶然だと思ったのか、ともかく良かった。


ほっと腕を撫で下ろすと私のかぶっていた帽子が脱げて地面に落ちた。

さきほどの騒動で脱げやすくなってしまっていたらしい。


そんな私の顔をサオトメはじっと眺める。

そしてライン電話のコールを一旦切る。

そして再び鳴らす。

そして再び切る。

鳴らす。

切る。


サオトメはでかい声を出した。

「お前、サイトーかあああっっっ!?」


帽子が、帽子が最後の砦だったらしい。

確かに深くかぶっていたから顔はよく分からなかったかもしれないが……。


あー!!やっぱり顔をまじまじ見られたらバレるか!!

そう思ったから机の下に隠れたというのに!!


「何してんのサイトー!そ、そんな恰好で。」

床に落ちた帽子を拾い上げ、かぶりなおすと私は言った。


「お茶してただけですけど?」

いやに冷静である。

言い訳も思いつかないし、ここはドンっと構えて置くのが一番いい方法だろう。

私は瞬時にそう思った。

こういう気転が効くところは自分の長所だと思う。


「私は休みの日、こうして女装して街を出歩いてるの。

何か問題あるかしら?」

「問題って……いや……ないけど。

ないけどーーーっ!?いや、インパクトが……なんかごめん。」

「謝らないでよ……。」

「……はあ、いや、サイトーの趣味には別に……咎めるつもりはないけど。

はい、すみません……。」

「だから謝らないでよ!!」


つい声を荒げてしまった。

その私の姿にサオトメはビクッと体を震わす。

やばい、冷静かと思ったがわりとショックを受けているようだ。

私、同様しているっぽいぞ。


「……その、惨めになるからいちいち謝らないでよ。

何も恥ずかしがることしてないのに、同情とかされたくないし……。」

「……すみま、いや、うん……。」

「……今日あったこと、忘れてくれない?

今日あったこと一日まるまるがっさいよ。

そうすればあんたの恰好のことも言いふらさないであげるわ。」


ガーン!サオトメは自分の今の恰好に気がついたらしく、口に手をやり、恥ずかしがるようなポーズをした。

なによ、なよなよしちゃって……かわいいじゃないの!!

「そ、そうだ俺、なんでこんな恰好してるんだろう……。

やば、恥ずかしすぎ……通行人に見られたら俺……やば……。」

「そ、そうでしょう。

だから今日はまっすぐ家に帰って、眠るの。

何があったかとか考えずにね?寝るの。」


「う、うん……でも俺、なんでサイトーとお茶して……。」

「そのことに関しても!!」

私はサオトメにずずずいっと迫った。

「すっきり忘れましょうね。」

にっこり笑って見せる。

この蔓延の笑みを見れば分かるよね。ね?

「は、はい……はいい……。」

うむ、よろしい。


「おいサオトメ!

誘拐犯はどこだ!!」

聞きなれた声。

毎日聞いている声が響く。

声に気付いたサオトメが振り向き、言った。

「あ、タナカ……。」

「サオトメ!誘拐されたんだってな!!

家にあったモデルガン持ってきた!あとニンニクと十字架!!

誘拐犯はこれで血祭りだ!!」


これは……これはこれは……


ヤ ヴ ァ イ。

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