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魔法のシャボン玉  作者: 土竜健太朗
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7

 ハッと目を覚ます。いつもと変わらない目覚ましの音が原因だ。慣れた動きで目覚ましの音を止めると、いつも通りベッドから体を起こす。2日連続で夢を見たが今日の夢はそれ自体が悪い夢ではなかった。


 その後、経験することを知っている俺からしたら、素直に喜べる物ではないが、あの頃の『僕』は多分一番充実していたように思う。


「まぁ……。今の俺にはもう関係ないけど」


 夢の内容を思い出して、そんな言葉を吐き出すことが精一杯の言い訳だ。別に夢の内容なんて自分から言いふらさない限り悟られる心配は無いのに、俺は誰に向けてこの言葉を口にしていたのだろうか……。


 ハッと息を吐くように笑いが零れる。そんなことを考えていたところで、仕方が無いから、今日も変わらず学校に行く支度をするのだった。


 その準備の間も昨日深冬先生から与えられた役割のことを思い出すと気持ちはどんどん下降していく。


『そもそも、顔も知らない相手と話をするなんて俺にはレベルが高いことなんだよな』


 そんなことを考えながら、洗面所の鏡を見ながら寝癖を直す。前髪によって視界が塞がってしまうほどに伸びていて、うっとうしいと感じることあるが、少し見えづらいくらいが丁度良い。


 世界が見えすぎると見たくない物も見えてしまう。人の視線とかもこれによって少しは遮ることが出来るから、昔から俺の髪型は変わっていない。


 クラスでは、勉強ばかりしている根暗だと評価されているらしいけれど、俺は何とでも言えという感じだ。



「おはよう!秋博」


 この声を聞くと時計を確認せずとも、時間を把握出来る。パタリと教科書を閉じながら、光希の方に顔を向ける。


「おはよう。昨日はよくもやってくれたな……。お前が置いていった所為で大変な目に遭ってるんだからな」


 よく考えたら光希はあまり悪くはないような気もしたが、なんとなく言ってやらなければスッキリしなかった。こうやって、思っていることを適当に話していられる間柄は悪くは無いものだ。


「ハハハ。俺は置いていったわけじゃないよ。退場するように決まっていたんだから。この俺がさ、深冬先生の命令に背けると思うか?無理だよ。考えただけで寒気がしてくるもん」


 自分の腕を抱いて怯えた仕草を見せる光希。がたいのいい男がやったところで気持ちが悪いだけだ。やめてほしい。


 それに、このクラスで一番深冬先生に呼び出されているのは紛れもなくこいつだ。言うことを聞かないことなんて誰もが理解していること。


「何が恐いんだよ……。いつも呼び出されてるくせに」

「ハハハ。違いないな!」


 でも、光希は嘘を言う奴ではない。恐らく言っていることは真実なのだろう。深冬先生からあらかじめ俺を巻き込んで問題を起こせとでも言われていたのではないだろうか。俺一人を職員室に呼び出すのが難しいと分かっていた深冬先生の作戦に、俺はまんまとはまってしまっていた。そして難題を押しつけられている。


 そして時間がやって来る。廊下に響く二つの足音を感じ取って、俺は身構えた。


「みんな。おはよう」


 いつも通りの凜とした声が教室内に響き渡る。教室内は深冬先生の登場による緊張感のようなものが張り詰めていた。


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