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魔法のシャボン玉  作者: 土竜健太朗
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 泥水から浮かび上がるかのように重たい意識を覚醒させ、喧しく朝を告げる目覚まし時計を雑に停止させる。


 凄く気分が良くない。体調が悪いわけではなく、ただ、夢見が悪かったことが大きな原因だ。


「また、あの夢か」


 いつからか、同じ夢をよく見るようになっていた。あれは、自分の失態。小学生の頃の愚かな夢で、それはもうきっぱりと諦めている。


 晴れない気分のままに俺は今日も学校に行く準備をする。小学生二年生の僕は時を経て、高校二年生の俺に成長していた。今の俺に夢はない。今の俺が決めなければいけないのは進路だった。


 勉強机の上には、未だ空欄の進路調査票が置かれている。


「今日までに提出だったか……」


 耳にたこができるほど、口うるさく担任の先生に提出するように言われている。クラスの中で提出していないのは、どうやら俺だけのようで昨日の帰り際に深く釘を刺されてしまったから、さすがに空白で持って行ってしまったら、最終手段を使われかねない。


 眠たい目を擦りながら、机の上のペンを取り空欄に向けて適当に走らせる。『進学』の二文字だけを適当に記入して、A4用紙を折りたたみ乱雑に鞄に放り込む。


 なぜ、この二文字を記入するだけでいい課題に俺は手こずっていたのだろうか。自分でもそれは分からなかったが、一つ問題を解決したことで俺の気持ちはほんの少しだけ軽くなった気がした。


 珍しく起きている母親に適当に挨拶を済ませると俺は朝食を食べてから、学校に向かっていくのだった。



 高校二年生になって、もう一か月ぐらいが過ぎた。高校生らしいことなんて特に起こることはなく流れ去っていく。今日も一日、何も起こらないと思いながら一人でトボトボと通学路を進んでいく。


 俺の踏む町は人口減少の波を著しく受けているド田舎だ。俺の通学路もお一人様専用かと思わせられるようにガラリとしている。


 5月の風が木々を揺らす。その葉音はやけに騒がしい。風は少し遅れてやって来た、運命とも呼べる再会を予期していたのかもしれない。


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