表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の魔女の憂鬱〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/72

45 お側に行くのです!

 まだ、日がある内に王都に着くことができた。

 目線の先に王都の外壁が見えてきた。近づけば巨大な石が積み重なった壁と金属製の重々しい門に圧倒される王都の外壁だ。

 しかし、近付けば近付くほど物々しい雰囲気がヒシヒシと感じられる。とても嫌な予感がする。


 いつもなら長い列を作り、検問までに長い時間がかかってしまうというのに、今はというと検問などそっちのけで、人々を門が飲み込んで行っている。外壁の上には武装した騎士達がいる。その中に顔見知りも見受けられる。


 私は外套のフードを深くかぶり門の中へと急ぐ人々の列に混じる。


「何かあるのか?」


 斜め上から同じくフードを深くかぶり仮面を被った彼が声を掛けてきた。しかし、私が王都に居たのは2年前までだ。あの嵐が終わったあとに人々が王都に向かう事柄は無かったはずだ。


「わからない。でも、用が終われば直ぐに王都を出るから関係ない」


 そう関係ない。私はもういいように使われる名ばかりの聖女ではないのだ。ここで、私の知りたい情報を得られればそれでいい。


 フードの下から遠見の魔術を使って外壁の上を垣間見る。顔見知りが何かを指示をだしている。魔術師を配置しているようだが、今は彼が魔術師長になったのだろうか。しかし、彼の魔力量で魔術師長になれるのだろうか。


 暗い·····目を塞がれた。塞いだ大きな手をのけて斜め上を睨みつける。


「なに?」


「いや、なんとなく」


「ふぅ、外壁の上を見ていたのに」


 煙を吐き出し、愚痴りながら視線を周りにむける。周りの人々は焦るように早足だ。耳に聞こえる音は人々の息遣いのみ、無駄話をする余裕もないのだろう。

 再び前方の外壁に向ける。大分、門が近づいてきた。


「魔術師を配置をしているから移動砲台として使うのだろうね。何かが西?いや、南から来るのかな?」


 そう、人々は私達が来た西からというより、南の方からこちらの門に来たように思える。多分南門に人々が押し寄せ入れないから、こちら側に回ってきたのだろう。


 南···ああ、嫌な予感がする。とてもとても嫌な予感がする。早く王都を離れたほうがいい。



 検問も何もせずに門を通り、甲冑を着た騎士が人々を誘導していた。私は隣の彼の腕を取り、人々の波を横切り路地に入り込み、足早に入り組んだ路地を駆け抜ける。ここは西門だ東門の方に行くには少々困った状態だ。大通りはきっと人々が溢れ返っているのだろう。


 足を止め、考える。あまり時間を掛けたくない。地下通路は存在するけど、この状態だ、人がいる可能性はある。そこに知り合いがいたら面倒くさい。

 屋根の上を駆けるのであれば人々は関係無いけれど、外壁の上にいる騎士達に見つかってしまう可能性の方が高いだろう。困った。


「アリアどうした?」


 彼がかがんで話しかけてきた。いや、近いし。私は一歩距離をとるが、その分詰められてしまった。うっ。

 視線を東側に向け、紫煙を吐き出す。


「西門から東門の方に行きたいのだけど、人が多くて閉門までに間に合わなそう。地下は入り組んていて、まっすぐに東方面に行くことが出来ないし、屋根の上はまだ明るいので、外壁の上にいる騎士に見つかりそうだと思って」


 すると体がふわりと浮いたと思えば、彼に抱えられながら、屋根の上にいた。ああ、忍者仕様の外套の効果を用いるのか。


 人々を眼下に見下ろしながら、西から東へ抜けていく。その間を忙しなく甲冑を纏った者たちが、南門の方へ行くのがみうけられ、魔術師たちもそれに続いていた。物々しい雰囲気だ。


 そして、彼に指示を出しながら方向の調整をしていき、東側の薄暗い路地に降り立った。


 人がすれ違えればいいほどの幅に歪んだ石畳が敷かれ、家々が押し寄せるような圧迫感を感じるほどひしめき合っていた。

 私はそこに建ち並ぶ一軒の店の扉のノブに手をかけるけど、扉が開かない。扉の上にはキセル屋の看板が掲げられていることを確認して、もう一度扉を開けようとする。しかし、私は迎え入れられなかった。


 扉を拳で叩く。何も反応がない。ここに居ないようだ。

 そうなると当分の間、戻って来ないだろう。何と間の悪い。いや、この現状だからこそか。


 ここの住人が居ないとなると、もう王都には用はない。直ぐにここを出ていこう。


『副隊長お待ち下さい!』

『隊長に怒られてしまうじゃないですか!』

『今は非常事態なんですよ!配置に戻ってください!』


 何やらガシャガシャと音と共に声が聞こえていた。どうやら、副隊長が勝手に動き回っているのを部下が止めに付いてきているようだが、あまり強く出られないようだ。


『フォーデリア副隊長!』


 ん?


『あなた達付いて来なくていい!私はリーゼ様のお側に行くのです!』


 あ、この声は·······路地の隙間から甲冑を纏った騎士が飛び出てきた。


「リーゼ様!」


 ガシャンという音と共に甲冑によって私はプレスされた。痛い痛い!甲冑の金属の胸板と腕にぎゅうぎゅうに挟まれている。

 圧死する······。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ