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根暗男の迎春誌  作者: 青色蛍光ペン
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4:張られた罠は彼らを偽の答えに導く

5月6日の火曜日。ゴールデンウィークの最終日である。黒木はこのゴールデンウィーク中ずっと家で自堕落な生活を送っていたのだが、今日ばかりはショッピングモールのベンチに座っている。もちろん黒木が自分でショッピングモールなんかに行くわけがなく、永井がわざわざ家に押しかけてきたため、仕方なく付いて行っている、という状況だ。


「はぁ…、俺は家で寝てたいのにな」


独り言を吐く黒木を見て、呆れたように永井もため息をつく。そして座っている黒木の手を引っ張って立たせて引きずるように歩き始める。


「部室に何もないとか言われて黒木君は悔しくないんですか?」


どうやら永井は上月が部室に来て言った感想をまだ根に持っているらしい。おまけに氷川が味方になってから約1週間が経つのだが、未だに謎は解けていない、というか全く捜査が進んでいない状況にある。だから気分でも変えようと永井が部員集まってのショッピングを 提案したのだ。


「別に悔しくねーよ。というか氷川がいるなら俺別にいらないだろ」


そう、部員全員とは言っても黒木と永井しかオカルト研究部に所属していない。だからなのかは知らないが、永井は氷川も誘っていた。当の本人の氷川は、黒木と永井のやりとりを微笑ましそうに見ている。


「2人とも仲良いんだね。幼なじみ?」


「いや、黒木君とはオカルト研究部で知り合いました」


「ま、同じ部活でしかも部員2人だからな。仲良くやんないと続かないって事だ」


「お、意外ですね。ああ見えて仲良くしてくれてたんですね!」


「え、いや、ちげーよ。社交辞令だ、社交辞令。早く行くぞ。なんか飾るもの買うんだろ?」


そんな事を話しながら店を回ってみる。しかし、オカルト研究部の部室に置くようなものはあまり売っておらず、仕方なく安いUFOの模型を2つ購入した。部員が少ないため部費もそれだけで底を尽き、3人はやや遅めの昼食を取るためにフードコートに来ている。


「ん〜! ドーナツ美味しい!」


「いや昼飯にドーナツだけってどうなんだよ。それもうおやつだろ」


氷川はドーナツ、黒木はオムライス、永井はハンバーガーと言った内容だ。基本的に昼に甘いものを食べない黒木は氷川のドーナツに突っ込みながらオムライスを口に運ぼうとしたが、氷川が黒木でもドーナツでも永井でもない方向に視線を向けているのに気付いて黒木もそちらを向く。その方向にはまさしく美男美女と呼ぶにふさわしい男女が歩いている。


「知り合いですか?」


「い、いや? 高橋君は同じクラスだからね」


「高橋君?」


「うん。サッカー部の副キャプテンやってるんだ。同じクラスだから気になっちゃって」


「隣で歩いてるのは川野さんですね」


「あの2人、付き合ってるのか?」


「うーん、あんまり高橋君と話さないから分からないけど、そう言う話は聞いた事ないかな。2人ともモテるから、もし付き合ったりしたらかなり話題になると思うよ」


確かに、話題になるまで存在感皆無だった木山が川野に告白するだけで大きな反響を生んだのだ。モテモテな男女がくっつけばそれこそ学年中が結婚式ムードになるだろう。

黒木は考えを整理しながらさらに高橋と川野を観察する。川野は距離を詰めようとしているようだが、微妙に高橋がそれを避けるようにして歩いているように見える。大変そうだな、という感想が真っ先に出てくるが、それを追い払い、ルーズリーフを取り出して高橋の名前を追加し、川野から高橋に向かって矢印を書く。


「…木山が振られたのは多分これが原因だろうな」


「ですねぇ。元から川野さんが高橋君の事が好きなんだったら、木山君にはなんの可能性も無かったって事になります」


その言い方ちょっと酷いよ永井さん、と心の中で突っ込みを入れておき、ルーズリーフを眺める。が、別に木山が振られる理由なんて知ったところで何も進まないと判断し、即座にルーズリーフをポケットにしまい込み、オムライスを再び食べ始める。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


時は遡り、木山と黒木が初めて会ったあの日の翌日の土曜日の昼過ぎ。木山は氷川に電話をかけていた。5コールほどで氷川が電話に出る。


「もしもし? 木山君から電話なんて珍しいね」


「あー、まぁちょっとな」


電話ってこんなに緊張するものなのかよ、と荒くなる呼吸を抑えるために軽く深呼吸して、内容の説明を始める。


「俺と氷川と高橋の去年の出来事についてオカルト研究部の連中が嗅ぎ回ってる」


「オカルト研? あー、ネクラマンサーってやつだね」


「ん? なんだそれ中二病か?」


「ちゅーにびょー? なにそれ? とにかく、オカルト研に所属してるD組の子が、すっごい頭いいらしいの。なんでも文系科目ならC組のトップ達とも互角で、理系科目でもA組のトップクラスに混じれるぐらいらしいよ」


「…で、なんでネクラマンサーなんて名前なんだよ。ただのガリ勉だろそれ」


「あー、なんか、その子いつも友達とかと喋らずにずっと本読んでるらしいんだよ。木山君みたいだね」


「おい、一緒にするな」


成績優秀な根暗な男でオカルト研究部だからネクラマンサー。多分昨日の放課後に話しかけてきた男で間違い無いな、と確信する。一緒にするな、とは言ったが、多分黒木も自分と同じタイプなのだろうな、と心の中で感じているのも確かだ。内気な性格で友達を作る事が難しい。しかし、そう言う人間に限って、恐ろしく頭の回転が早い。誰も頼れない状況で大きな敵と対面した時にどのようにして1人で生き延びるか。それを常に考える必要がある人種は、自然と頭の回転が早くなるものだ。


「とにかく、そんな奴らに目をつけられたんだ。オカルト研究部とか名乗ってるし、多分全部知られちゃったらどこかで公表されるかもしれないだろ」


「…いやー、流石にそれは考えすぎじゃないかな? でも、確かに詮索されるのはちょっとあんまりだよねー」


「そう言うわけで、氷川には協力して欲しいんだ」


「うん、そう言う事なら私は大丈夫だよ。で、なにしたらいいのかな?」


「オカルト研究部の仲間になれ。もちろん俺とは無関係って設定でな。多分それだけでかなりの妨害になると思う」


「…え、それだけでいいの? なんかもっと脅したりするのかと思ってた」


ちょっと氷川さん怖いよ、と返したくなるのをぐっと堪え、木山は自分の考えを話し始める。


「あの黒木って奴は、俺に『友達すらいない君が』って言ってきたんだ。つまり、黒木は俺とお前が友達って事をまだ知らないんだと思う」


「えっ…、あぁ、確かにそうかもね」


木山にさらりと友達と呼ばれて嬉しくなりつつも、氷川には木山の意図が汲み取れた。オカルト研究部がどれだけ分かっているかは知らないが、氷川と木山が親しい、という情報が出ない限りは、彼らの捜査は進まなくなるだろう。


「そして氷川は普通に俺と喋っていても、オカルト研究部には『捜査の一環』とか適当に言い訳ができるだろ」


「…木山君ほんとに変なところ頭回るよねぇ」


「何引いてんだよ。とりあえず、作戦は話したからな。どうやってオカルト研究部に近付くかは人付き合いが上手いお前に任せる」


「うん! なんかスパイみたいでワクワクするねぇ」


「…遊びじゃないんだからな。とにかく頼んだ」


こうして木山は電話を切る。氷川がオカルト研究部に姿を現した原因はこれである。黒木達が捜査を進める中で、木山も黙ってそれを見ているわけにはいかないのだ。

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