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無感情少女と有感情少年  作者: みゃお
2/2

ドキドキ編(1)

かれこれあの日から一週間が経った。

二人の進展は、あまり無い。


「っはぁー…結構無責任なこと言ったけど俺にできることなんて何があるんかなぁ…」

俺にはわからない。感情が無いなんてこと、寧ろあり得るのだろうか…。

なにかの病気なのでは、とか考えてしまう。

「しっらねー。俺もあの子のことよく知らねーからさ」

と、祐太の友達、鼓雨こうは言った。

正直なところ、俺も夢乃さんのことを詳しくは知らない。だけど、これから知るんだ。多分。

「感情無いってことはさぁ、喜怒哀楽が無ぇってこと?」

「多分そうだと思う。夢乃さんもそんなような事言ってた」

「うわー、なんか辛いなそれ」

確かに、喜怒哀楽が無いということは、人と一緒に喜んだり、人のために怒ったり、悲しんだり、楽しんだり出来ないわけだ。

どうやって生活しているのだろう。さぞかし周囲から馬鹿にされたのではないだろうか。

「私の話が聞こえたような気がします」

噂をすれば夢乃さんだ。地獄耳なのだろうか。

「なんでもないよ」

と俺はあしらう。

普通の人なら、「えー?なになに?」と気になって聞き入ってくるはずだ。

夢乃さんにはそんな、『気になる』という感情が無い。

「そう。では西野君、またお昼に」

鼓雨はギョッとした顔で見てきた。そんなに珍しいのだろうか…。

「おまっ…もう昼間で食べる仲なのか…」

「いや…なるべく一緒にいたほうが夢乃さんのこと知れるかなぁと…」

浅はかな考えだっただろうか。



――お昼。

二人は屋上にて集合した。

「夢乃さんおっせぇえ……」

しっかりしてそうに見えて意外とうっかりなのだろうか。集合時刻より10分過ぎている。

そう悶々考えていると、屋上の扉が開いた。

「ごめんなさい。購買が混んでいまして、遅れちゃいました」

お弁当作ってそうに見えて購買で買ってるのか…。これはまた新しい発見だ。

夢乃さんの手にはメロンパンが入った袋が一つだけ有る。

「え…夢乃さんそれだけ?」

「はい。何故か昼夜関係なくあまり量を食べれないんです」

それは少食っていうんだよ、夢乃さん。

………と突っ込みたい。

女子の友達ができたときに、「私少食なので」なんて真顔で言ったら、半分の確率で「少食アピールかよ…」とイラッとさせるに違いない。

「さて、西野君食べてなかったんですか?」

「まぁ夢乃さん待ってたからね」

「ありがとうございます」

ちょ、ちょっとぐらいドキッとしてくれぇええと思ってもそんなの通用しない。

そんなこと言っても夢乃さんの頭には訳わからない、はてなマークしか浮かばないだろう。

そして、ここで事件が発生。

……話題がない!!!

だって俺夢乃さんの趣味とかわからないし、サッカーのことなんて絶対夢乃さん分かんないだろうし、なにを話せばいいんだ…。

趣味を…聞いてみるか…?

「夢乃さん、好きな趣味とかはある?」

「強いて言うなら読書です」

おぉ…俺とは程遠い趣味だなぁ…。

はい。これで話題終了。駄目だ…もっと繋げないと会話ができない。

「えっと…どんな本とかが好き?」

「そうですね、源氏物語などですかね」

恋愛にも程遠いな…。てっきり少女漫画かと…。

源氏物語って古くないか…。なんかでも新古今和歌集とか好きそうな感じする。うん。(無理矢理)

シン…。沈黙のこの時間、一番嫌いかもしれない。

「………夢乃さん」

「はい」

「好きだよ」

「知ってます」

本気がちで」

「はい。もう一度いいます。知ってます」

少しはドキッとしてくれないかなぁ…。なんかいい方法無いかな。

「好きにさせるためだったら、何したっていいよね」

「えぇ…」

夢乃さんは承諾をしたものの、少し考え首をひねった。

「待ってください。それはどういう意…」

承諾は頂いた。遠慮なくさせてもらう。

屋上の柵に手をかける。そして俺と夢乃さんは見つめ合った。

「貴方は西野君ですか」

「うん、西野 祐太だよ」

「でも何故いきなりこんな…」

「好きだからだよ。俺は夢乃さんが好きだ」

「本気なんですね」

「そうじゃなきゃこんな事しない」

無感情のこの子にはよくわからない感情だと思う。無知の世界だ。

両手を柵に掛け、夢乃さんにまたがいだ。

「なにを…」

「何度でも言うよ?好きだ」

「知ってま…」

「いや、知る知らないじゃない。夢乃さんが動揺を見せるまで止めない。好きだよ」

夢乃さんは、ぽかんとしている。多分だとは思うが、きっと今、無心だろう。動揺はしていないように見える。

俺だってそんなことで挫ける男じゃない。

柵から手を外す。その手は夢乃さんの背中の方へまわった。

そしてギュッと夢乃さんを抱きしめた。

「これはハグっていうんだよ。知ってる?」

「知りません…無知なものでして」

「そっか」

そしてもっと強く抱きしめる。

「っ…」

苦しそうにした。でも止めない。それが俺の鬼畜方法。

「夢乃さん……好きだ…」

「っは…分かっています…それよりそろそろ離して…」

「嫌だ。好きだよ」

「分かっ…!!!」

…?何だ、今の荒げた声は。聞いたことがない。

夢乃さんもビックリしている。両手を口に当てている。

「なに…今の…」

「どうした…?」

「なんか…胸がギュッとなって…これ以上やられると破裂しそうで…」

胸が苦しくなったってことか…?

もしかして…ドキドキしたのか…?

「っ…お昼!お昼食べましょう」

そう言って黙々メロンパンを食べ始めた。


しばらく沈黙の時間が続いたそうだ。

ドキドキ編(2)につづく

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