魔法、聖剣(爆)
さて、シユさんの今後も決まったし、今度はどうやって近くの町に向かうかだが、その点は心配しなくても良くなった。
なぜかというと、このあたりは“探索者”が依頼でたまに来るらしい。日本の異世界系の小説ではあまり聞かない言葉だが、小説で慣れ親しんだ冒険者みたいなものだ。というか、モロ冒険者だ。
今後間違って「冒険者ギルド」とか言っちゃいそうだけど。
で、探索者たちが切り開いた獣道もどきが近くの森から伸びているらしいから、それを辿って町まで行くつもりだ。でもその前に試しておきたい事がある。
「シユさん、さっき見せたとおり、俺の魔法はちょっと特殊でね……どんなことが出来るか試しておきたいんだけどいい?」
そう、魔法の検証だ。
久々にゲーム以外での検証だが、魔法とかマジで憧れる。なんかゴブリンとか居るし、戦闘系の魔法も試せそうだ。しかも、イメージ通りに魔法が出るとかね、いやもう最高でしょう。
「はい、いいですよ」
よし、シユさんからも許可貰ったし、いっちょやりますか。
まずは魔法でどんなことが出来るかだ。まあ、毛染め液出た時点でお察しな気もするが。
イメージが大事だから、とりあえずマ○オのあの地面を跳ねるファイアーボール出してみるか。
イメージ……
「ファイアーボール」
手を前に突き出すと、ボッ、という音がして手からバスケのボールくらいの大きさの火の玉が出た。その火の玉は放物線を描いて地面に落ちて行き――地面を跳ねた。
よし、成功だ。確かに、ゲームとかで見慣れているのとかにするとやりやすい気がする。これと毛染め液しか出してないけど。
「あの……ファイアーボールって、空中を真っ直ぐ飛んでいく魔法……じゃなかったっけ?」
マリ○式ファイアーボールってやっぱり変わったファイアーボールなんだろうか。シユさん口調乱れてるし。
「どう?特殊でしょ?」
「はい……地面にぶつかっても消えない火魔法ってどうなっているのだか」
どうやらファイアーボールは地面に接すると消える魔法らしい。対して今のは壁か敵に当たらないと消えないし、マ○オだったら水中でも使えるからな。
よし、次はどうしようかな……基本何でもできそうだし……そうだ。
そして俺は両手を前に突き出して……
「A○フィールドッ!!」
そう叫んだら、半透明でオレンジ色っぽい障壁(極薄)が現れた。よし、いい感じだな。
にしても万能だな魔素って。ほんとに何でも出来るんじゃないかな?じゃあ次は難しそうなのを……
目を閉じて、意識を集中して……
「ザっ・ワ○ルドっ!!」
その瞬間、世界が止まって――......
「なっ!なんですかこれ!体が動かないっ!ちょ、レティさ――」
なかった。どうやら魔素がかたまったっぽいな、見えないけど。変な格好で固まっているシユさんを見ながらそう思った。さて、救助救助。
「……そして時は動き出す」
ニヒルな笑み(主観)を浮かべながら言ってみた。うむ、いいかんじ。
「――なーにがいい感じですかレティさーん?」
あ、やば。
☆
どうも皆さんおはこんばんちは。シユさんに制裁(物理)を敢行され、頭に大きなタンコブを作ったレティでございます。
やっぱり温厚な人を怒らせると怖いです。いやまじで。
で、あの後魔法でショートケーキを作って出してシユさんにあげてご機嫌をとったんだけど……
「――なんですか?はい、ごめんなさいって本当に反省……あら、今出したそれは……『しょーとけーき』ですか。美味しいから食べてって、そんなことで私が許すとでもふわぁぁぁぁ」
ってなかんじでケーキで許してもらえたよ。甘味ってすごい。
あと、毎日くださいって言われたけどさすがに止めた。糖尿病とか怖いし。結局一週間に一個で許してもらえた。
でも、食べ物を出す魔法が出来るんなら、不安だった装備もどうにかなるんじゃね?って事でやってみよう。ナイフとかでいいのかな?
――そうだ、聖剣出してみよう。
うん、多分イメージでどうにかなるぞ。こう、剣から魔法出るようにしてみようかな。あとは、刀身が6本くらいのナイフに別れてファ○ネルみたいに攻撃したり……面白い、やってみよう。
「……出でよ聖剣、そして願いを叶えたまえー」
……マジか。なんか真っ黒で刀身に龍の紋章入ってる剣出てきたんだが。まあ、多分「そして願いを(ry」のくだりの影響だろう。どことなく厨二臭がするけどこれはこれでかっこいいし。
「もういいです、私は驚きませんからね……」
どうやらシユさんも考えるのを辞めたらしい。石にはなってないみたいだけど。
「あ、鞘出すの忘れてた……よっと」
もう魔法も使うの慣れたし、今日はいろいろありすぎて疲れたから寝るとこ探すか。
8/26 言い回しを微修正。