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農大生の俺に、異世界の食料問題を解決しろだって?  作者: 有田 陶磁
第四章 大地の恵み 動き出した歯車
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プロローグ 【動き出した歯車】


 降り続いていた雨が止み、晴れ間を見せている。


 その恩恵を受けた小麦は、頼りなかった背丈を急速に伸ばし続けていく。


 毛を刈り取られた羊たちは、青く伸びた草をむものや、建てられた小屋の中で眠るものと様々だ。


 岩熊の一件から早、一ヶ月。


 あの事件以降、魔物の襲撃は無く平和な日々が続いていた。


 この一ヶ月間の中で最も大きな進歩と言えば、水車が完成したことだろう。


 それは十日前の事だ。以前、チノに貰った荷馬車の車輪で水車の試作機を作り、実験を行っていたところをゲレル達に見つかったのが始まりだった。


 これに興味を持ったゲレル達が面白半分で手伝いだし、さらにそれを見つけたチノが女性陣を引き連れて、一族総出での水車製作プロジェクトが始動することになる。


 本来は、一つの車輪に羽を取り付けて回転させるつもりだったのだが、それだと耐久性が弱いということで一から作る事になった。


 元々、長距離の悪路に耐えられる程の高性能な車輪を作る技術を持っていたモングール族。その技術力には、やはり目が見張る物があり、一週間ほどで水車の核となる二つの車輪が完成した。


 その二つ車輪の間に水受けの板を取り付けることで安定性と耐久性が増し、最終的に完成した水車は、試作機の倍近くの大きさとなっていた。当然、回転のパワーも大きく上昇している。


「で、勢いで作ったばってん、こいで何ばすっと?」


回転を続ける水車を物珍しそうに眺めるチノ。きっと水を受けて回転する玩具程度にしか考えていなかったのだろう。


「はぁ、やっぱり知らないで作ってたのかよ······どうせ、農作業に飽きて逃げたかったんだろ?」


「き、き、気分転換たい! そいでこいは何ね?」


「あー、色々できるぞ? まぁ、力仕事を勝手にやってくれる機械だと思ってくれれば良いかな」


「機械? 力仕事ば勝手に?」


 いぶかし気な視線を交互に水車と俺へ向けるチノは、どうやら俺の言う事を信じていないらしい。


「機械ってのは自分で動かさなくても、勝手に動いてくれる道具のことだ。ほら、実演してやるから見てろよ」


 水車から伸びる車軸の先端には、試作機で使った車輪が設置されており、その側面に等間隔に杭をはめ込む。


 そのすぐ傍に石灰岩を入れた石臼を置き、水飲み鳥の要領で固定したハンマーを設置する。そして回転を続ける杭と柄が触れ合った時、それは動き出した。


 ハンマーの柄が回転する歯車の杭に押し下げられ、ハンマーヘッドが持ち上がる。そして回転と共に杭が柄から離れると、勢いよく石灰岩に振り下ろされた。


 気持ちの良い音とともに砕ける石灰岩は、ハンマーが振り下ろされる度により細かくなっていく。

 

「まぁ砕くだけじゃなく、他にも歯車を組み合わせることで固い物を磨り潰したりすることかできる」


「へぇー、こがん便利か道具もあるったいねぇ!」


 チノは石臼を眺めながら、素直な感想を述べた。


「な、作ってよかっただろ? それにこの砕いて粉にした石灰岩を畑に撒くと作物の育成を助けてくれる。まぁ、その辺はまた今度説明するよ」


「うん!」


 石臼の周りでは、チノと同じように勝手に動き続けるハンマーを眺める子供達。その後ろでは大人達も感心した様子で見つめていた。


「おい皆、明日も晴れたら白芋収穫すんだから、いつまでも見てねえで樽の準備に行くぞー!」


 育成が進んだ白芋は収穫期を迎え、既に茎の部分が黄色く染まっている。 


 この地に来て、慣れない農作業に励み、魔獣を撃退したこともあった。


 様々な苦難を乗り越え、それが明日ようやく報われる。


 これで、食糧の備蓄が減少していく恐怖からチノを救えることだろう。


 そんなことを考えながら、俺は明日の収穫の準備に取り掛かったのだった。





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