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農大生の俺に、異世界の食料問題を解決しろだって?  作者: 有田 陶磁
第三章【未来へ繋ぐ種 生命の息吹】
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第二話【皮算用と種の名は】



 白芋、それは俺の居た世界でジャガイモと呼ばれていた物と非常に酷似している。


 というより、メイクイーン種その物と言っても過言では無いだろう。


 それを芽の配置を確認しながら真っ二つに切っていくのは、チノを筆頭とする女性陣だ。


 大きい包丁を巧みに使い、見事なまでに両断していく。


 斬った芋の入った籠を外に持っていき、草木を燃やして作った灰の中に潜らせるのが、ここに残った俺達の仕事だった。


 他に手が溢れている者達の半分は今、小麦の種蒔きをした際に開けたスペースで、芋を等間隔に植えるための穴を掘っている最中だ。


 もう半分が、ここから種芋を畑へと持っていき、斬り口を上にして植えるのを担当している。


「なぁカズヒサ、そういや何で芋に灰なんて付けるんだ?」


 そう聞いてきたのは、俺と同じで運良く楽な仕事にあり付けたゾンだった。


「あれ、説明してなかったか?」


「難しゅうて、おいには分からんやった」


「そ、そうか。土の中には土壌細菌ってやつが居てだな」


「その土壌なんたらって何だ?」


 そう、彼らには俺が持つ常識は通じない。彼らだけではない、この世界に居るほとんどの人間達には理解できない話だろう。


「そ、そうだよな。土の中には目に見えない小さな生き物が居るんだ。良い奴も居れば、悪い奴もいる。いい奴だったら······ほら、チーズを作って置いておくと白い粉が付くだろ?」


「あぁ。付くな」


「それも、目に見えない小さな生き物が集まってようやく見えるようになった姿なんだ。それが悪い奴だと、白芋を切った所から腐らせてしまうんだ」


「そうか、その目に見えん悪か生き物ば追っ払うために、灰を付けるってことでよかや?」


 知識は無いが、どうやら理解力は悪くないらしい。


「そんな所だな。灰を付けて悪い奴が寄りつかなくなる。つまり、この種芋も腐らずに芽を出すことができるって訳だ」


「守り神みたいなもんってことか」


「まぁ、そう考えるのが一番簡単かもしれねえな」


 そんな感じで会話が途切れ、俺とゾンは作業に戻った。


 二十数樽分の芋の処理が終ったので、俺とゾン、その他数名も畑に向かって植え付け作業に入った。


 開拓した土地は十ヵ所あり、一つが約百メートル×千メートルの十ヘクタールになるようにしている。


 大まかな計算にはなるが、一人当たり、十アールあれば食べていけるため、三百人が食べていくためには三十ヘクタールが必要となる。


 納税の事も考えると大よそ必要となる面積は四十ヘクタールとなるが、保険を含めて五十ヘクタールと言ったところだろう。


 現在、使われている土地は七つ。その内の一つが居住スペースで、もう一つが家畜達のために使っている。小麦を植えて農地として運用しているのは五つだ。


 現在その大半が小麦の播種が行われており、病害が発生した際の伝染を防ぐため小麦と小麦の間にその他の作物を植えていく。


 帝都とレトリアで買い足した白芋を合わせても大樽二十五個分。一つ九十キログラムとして約二二五〇キログラムだ。


 ジャガイモ換算で一アール当たり、二十キログラム必要となるため、種芋にある芽の数で切断数を増やすことで節約したとしても、一.五ヘクタール分まで増やせれば御の字である。


 畑に到着して種芋を植えていると、道具の手入れを終えた女性陣も手伝いにやって来た。


 重労働ではあるが、小麦の時よりは楽なため皆の表情は明るい。


 実際に、二百人がかりで白芋の植え付けが終るまでにかかった時間は、準備を含めても一日とかからなかった。


 小麦と白芋を合わせて約三十五ヘクタール。この世界の麦が元の世界で栽培されている麦の半分程しか実らない計算でも、小麦だけで十分に税は払える計算だ。


 白芋の育成が上手く行けば、一アール当たり二五〇キログラム、一.五ヘクタールで四万五千キログラムの収穫になる予定。


 だが、翌年の小麦の種子と白芋の種子を残して、三百五十人以上の食料が足りるかと言われれば心もとない。日照りや、逆に日照不足、長雨になった場合の事も考えなくてはならないのだ。


 ゆえに、残りの十五ヘクタールに何を植えるかはもう決まっていた。


「そこでこいつを植える」


「そいは何ね?」


 俺の説明をあまり理解していなさそうな表情のチノに、残りの農地に植える作物の種を見せると、首を傾げてそう問いかけてきた。


 この状況で、この作物の名前を普通に教えても、チノには伝わらないと予想ができていた俺は、地元の爺様と婆様しか使わない名前でこう答えた。


「何を隠そう、こいつはボウブラの種だ」


 芝居がかった俺の答えを聞いたチノは、口を軽く開いて何度も頷き納得した様子を見せた。


「あぁ、ボウブラやったたいねぇ。西の方の国に荷物ば届けに行ったとき食べた事あるばい。甘く煮てあって美味しかったちゃんねぇ、また食べたかーって思いよったとよ」


 昔食べた味を思い出したチノは、笑みを浮かべて喜んでいる。


 本来は苗まで育てて畑に植えるのだが、庭に捨てた種が芽を出して生育してしまう程強い作物であるため、そのまま播種しても問題ないだろう。


 取り合えず、それぞれの作物の種蒔きを行う時期に間に合った事をチノに説明し、その日の俺達は眠りに就いたのだった。  

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