プロローグ
「暑い・・・、暑過ぎるぞ東京!」。
そんな叫びをあげていたのも束の間、鈴谷斗真の右頬を冷たい刺激が襲う。
周囲の状況とそぐわない快感とも受け取れるような刺激であったため、斗真は驚いた表情で右に首を振る。
すると青く澄み切った瓶が景色いっぱいに広がる。中央には「ラムネ」の3文字。
「ふふん、冷たかったでしょ?あたしの奢りなんだから深く感謝しながら味わうことね。そして全部飲んだら道のど真ん中で奈緒様は偉大なり!と声高らかに叫んで空を仰ぐこと。分かったかしら!」
斗真の顔に向けてラムネ瓶をかざしている銀髪で21歳にしては童顔で雰囲気も高校生くらいの五十風奈緒は満足した様子で斗真にラムネ瓶を渡し隣に腰を掛ける。
「ところで奈緒様や。藍は今何処へ?」
「藍なら結構前にお花を摘みに行ったわ。あたしの藍で変なこと考えないでよ?さもないと・・・分かってるわよね」
「誰が好きで女しか興味がない女を好きになるかっての。まず男がグッと来るような言動がまったく無いんだもんな。あとは見た目くらいしか見るところないだろう。まあそれを言ってしまうとお前も同じことが言えるんだけどな」
「ふん、分かってるじゃない!あんたはあたしたちがずっっっと幸せな結婚生活を送れるようにあたしたち婦婦を養い続ければいいのよ!」
「まず日本では同性婚が禁止されてるんだけど。まあ形だけでも同棲してれば法律上は認められていなくても結婚生活みたいなものは送れるかもしれないがな」
「同棲は既にしてるのよ!あたしは!こ・う・し・き・の!同性婚が!したいの!」
この収まるところを知らない叫びが空港の中を飛び回り多くの視線をを集めている。
「おいアホか!?なんちゅうこと叫んでくれとんじゃ!」
「だってぇ!あんたが分かり切ったことわざわざ聞いてくるからぁ!」
あーだこーだと言い合いになっている間にギターケースを背負った銀髪の美少女・・・と言うには少々大人びた風貌した女性、能代藍が何やら慌てた様子で2人の元へ駆け寄ってくる。
「2人とも何馬鹿なことやってるのよ。そんなことよりもうバス来ちゃったんだけど!?」
丁度彼女の成分を欲しがっていた奈緒が飛び掛かって来たがそんな状況ではないような様子で藍は奈緒を抱きしめる。
「とりあえずどんな状況でもやって来た奈緒を拒むことは無いのな」
周りの視線を気にする暇も無く3人は走り出した。
空港にいた人間は誰一人としてこの3人が「アメリカメタルの奇跡」などと言われていたことは分からないだろう。それは当然だ。なぜなら彼らは18歳にして一度も姿を見せずにして音源の売り上げだけで「奇跡」と言われる程の能力を有していた天才の集まりだったからだ。
普段は普通に家でパソコンをポチポチして音楽を作ったりしています。