ぼくのねこ
日曜日の朝、直人は普段は読まないライトノベルを読んでいる。それは昨日のデートで立ち寄った本屋で恋人のゆきに薦められたものだ。読み始めて数ページ、突然視界が暗くなった。
「だーれだっ?」と楽しそうな声で質問された。きっと自分が薦めた本を読んでいるのが嬉しいのだろう。
直人は笑いながら「どうしたの?ゆき」と話しかけた。「どうしてわかったの?」と拗ねたような声で聞いてきたが、この家には直人と昨日の夜に泊まったゆきしかいない。
「あーあ。つまらないの!」
ボソッとゆきを見て、直人は構われるのはあまり好きじゃないのに構ってもらえないと邪魔してくるゆきはねこのようだなと思う。
そんなゆきをみて「ご要望はなんですか、お嬢様」と問う。すると鈴が転がるような声で「プラネタリウム!」と答えが返ってきた。直人がプラネタリウムの新しいプログラムを見たいのを知っているのだろう。人の感情に敏感なのもねこみたいだなぁと思いながら、直人は腰を上げた。