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第10章ー4

 終に「南京事件」が勃発します。

 1927年の南京事件の発端については、諸説あって定説が無い。

 中国共産党系の主張と、満州国系の主張が真っ向から対立し、日欧米の主流は満州国に味方するという実態がある(満州国という主張も政治的主張なのだが)。

 更にその内部にも対立がある。

 以下は、満州国系の主張の通説に基づく叙述になる。


 1927年3月24日、程潜率いる中国国民党軍は、南京市街を制圧した。

 程潜の黙認の下、南京に入城した中国国民党軍の兵士は南京市民と共同し、日英米の市民に対する略奪や暴行に奔った。

 彼らは、日本海兵隊が警備していないところを巧妙に襲撃して回った。

 彼らにしてみれば、南京にいる日英米の市民は日英米の侵略の先兵であり、彼らを襲撃するのは中国の自尊自衛を護るための正当な行動だというのが主張だった。

(中国共産党系の主張だと、そもそも略奪行為等自体が無く、日本海兵隊が、それをでっちあげて一方的に南京市民の虐殺行為を行ったために、中国国民党軍の兵士がそれを阻止しようと行動したことが発端と言うことになっている。)


「畜生、どうにもならん」

 山田勇助大尉は、ぼやいていた。

 彼は、呉鎮守府海兵隊から分遣された上海駐屯の海兵中隊の指揮官として、日英米の市民保護に当たっていたが、襲撃をしてくる向こうの数が数である。

 南京市民と中国国民党軍の兵士を併せると、どう見ても1万を超える人数が日英米の市民を襲撃してきていた。

 一方、山田大尉の指揮する海兵中隊の人員は200名程、英米の軍艦の水兵から編制された臨時陸戦隊の応援があるとはいえ、それを合流させても300名に満たない。

 襲撃を阻止しようにも相手が多すぎた。

「上海に無線で連絡して、航空隊の支援を仰げ。後、艦砲射撃準備の要請を「檜」等にしろ」

 山田大尉は、部下の通信兵に命じた。

「それから、威嚇射撃は最早、不用だ。国民党軍の兵士は武装している。こちらも容赦なく撃て」

 山田大尉は、更なる命令を下した。


 この時、上海の租界に作られていた飛行場には、日本空軍の戦闘機と爆撃機、それぞれ12機が展開していた。

 万県と漢口で事件が起こったことから、万が一の事態に備え、空軍も日本から派遣されていたのだ。

 その分遣隊の司令官、大西瀧治郎少佐は渋い顔をしながら、山田大尉の要請を受け入れることにした。

「取りあえず、暴動を起こしている中国の市民の上空を飛び回って威嚇に努めろ」

 大西少佐は、実際に南京に赴く戦闘機小隊を率いる柴田武雄少尉に命じた。

 爆撃機ではなく、ニューポール29を日本でライセンス生産した甲式四型戦闘機4機の小隊を南京に行かせる。

 柴田少尉は初陣だが、随伴する戦闘機の乗員の1人は世界大戦の経験者で、独機を撃墜した経験もある。

 柴田少尉が、その経験者の助言を受け入れれば何とかなるだろう。

 大西少佐はそう考えた。

「分かりました」

 柴田少尉はそう答えて、勇躍して飛び立っていった。


 だが、この行動には問題があった。

 南京から上海までの300キロ近い距離を考えると、実際に日本空軍の戦闘機が南京上空を飛びまわれる時間がほとんど無かったのだ。

 大西少佐や山田大尉には、まだできる限り威嚇に努めるという考えが残っていた。

 だから、彼らは、日本空軍機が南京上空を飛ぶだけで充分と考えていたのだが、南京にいて、日英米の市民を襲撃している中国国民党軍の兵士や、彼らに加担した南京市民らの多くは、実際には日本空軍機が攻撃を加えずにすぐに引き上げてしまうのは、日本が弱腰だからだ、と考えさせてしまった。


 そのために、却って日英米の市民への襲撃を彼らは激化させてしまい、日本海兵隊等が彼らに本格的な反撃を行い、死傷者が双方に出る事態が起きた。 

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