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第7章ー10

 1923年、日本空軍は、三菱、鈴木、川崎の三社に日本独自開発の戦闘機の開発を命じた。

 できれば完全に日本人のみでの開発をと、空軍も、民間三社も内心では考えたが、そんなことが現実としてできるわけもなく、三社共、外国の技術者との協力によって開発を行うことになった。


 三菱は、艦上機の絡みから引き続き英国の技術者との協力に重点を置いて開発した。

 川崎は、ドイツから来日したフォークト博士に戦闘機の開発を依頼した。

 そして、鈴木はボーイング社の技術協力を得て、米国のPW-9戦闘機を参考にした戦闘機を開発した。

 かくして、日本を舞台に英独米の三国の航空技術がしのぎを削ることになった。


 だが、国産初の戦闘機開発がそううまく行くはずもない。

 日本空軍としては、1925年には制式採用できる国産初の戦闘機の開発が完了できると見込んでいたのだが、遅れに遅れることになり、最終的な制式採用は1927年のことになる。

 その間に、三菱や川崎が他の機種の開発、改良に注力したいとして、空軍の国産戦闘機の開発から降りてしまう。

 その結果、最終的には完全に満足のいくものとは言い難かったが、空軍は鈴木製の戦闘機を制式採用することにした。

 後に国産初の空軍戦闘機と謳われる87式戦闘機の登場である。


 ある意味で既に枯れたエンジンである米国製の400馬力のリバティ液冷エンジンを、日本でライセンス生産して搭載した87式戦闘機は、後世の書籍では、エンジン問題が無く、ボーイング社の協力も得ながら、こんな戦闘機の開発に何で4年も掛かったのだ、と書かれていることが多いが、当時の日本の航空機産業の実力からすれば、これが精一杯な代物だった。

 そして、87式戦闘機は、性能はともかくとして、結果的に後に鈴木の救世主になるのである。


 話が先走り過ぎた。

 ともかく、1925年春、鈴木製の87式戦闘機は、ようやく試作機の開発、製造に成功して、第1号機の試験飛行を未だに試みている段階に過ぎなかった。

 その試験飛行に駆り出されたのは、やはり、日本空軍のエースだった。


 大西瀧治郎少佐は、試作戦闘機に搭乗しながら、何とも不思議な気分になっていた。

 1915年に、欧州へ海軍航空隊の一員として派遣されて以来、航空機の操縦に一貫して関わり、今や空軍に転籍までしている。

 あれから、10年。

 終に空軍に国産初の試作戦闘機が完成し、それに自分が乗り組むことになったのである。

「本当にこんな時代が来たのだな」

 大西少佐は思わず独り言を呟いた。


 実際問題として考えれば、海軍航空隊に残った吉良俊一少佐は、既に2年前に国産艦上戦闘機で空母「鳳翔」での初発着艦までも成功させているのである。

 陸上機よりも本来から言えば開発困難な艦上機を既に日本は開発しているのだ。

 それから言えば、空軍が国産試作戦闘機を開発するのには時間が掛かり過ぎたともいえる。


「それでは、取りあえず地上滑走に問題ないかの確認をお願いします」

 古参で顔見知りの整備員が、大西少佐に声を掛けてきた。

「ああ、エンジン整備に問題は無いな」

「言うまでもありません。空軍魂にかけて」

「よく言った」

 大西少佐は笑って、地上滑走を行った。


 取りあえず、地上滑走に問題は無い。

 国産初の試作戦闘機の地上滑走の結果、大西少佐は確信した。

 次は離陸だ。


 国産初の試作戦闘機は、大西少佐の操縦により見事に離陸した。

 事故に備えて、いつでも着陸できるように低空飛行に徹せざるを得ない。

 だが、空中に見事に浮かんで見せた。


「やったぞ」

 大西少佐は誰にも聞こえる筈が無かったが、思わず絶叫した。

 ほぼ同じ頃、地上でも歓声が沸き起こった。

 国産初の試作戦闘機は、見事に初飛行に成功した。

 第7章の終わりです。

 次話から第8章になります。

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