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第7章ー1 日本空軍、海軍航空隊の草創期

 新章の開始です。

 1920年4月に創設された陸軍傘下の日本空軍は、陸海軍航空隊を寄せ集めたものであり、いろいろと課題を抱えていた。

 空軍本部としては、陸海軍軍人の融和を進めると共に、速やかに軍用機の完全国産化を図ろうとしたが、その道のりは遥かなものだった。

 何しろ、航空機メーカー自体を日本は一から創らねばならないという状況なのである。

 1919年早々に、空軍設立という事態から目端の利く三菱財閥と中島知久平を引き抜いた鈴木財閥が航空機メーカーの一員として、名乗りを上げたことで、日本の航空機メーカー創設ということ自体は何とかなったが、空軍は早速、頭を抱え込むことになった。


「とりあえず、DH9やスパッド13のライセンス生産を日本のメーカーで行うことには決まって、その契約自体はまとまったが、速やかに外国人技術者を招いたり、国内で技術者を養成したりしないと、今後の日本の軍用機はどうにもならないな」

 福田雅太郎空軍本部長は、ため息を吐きながら、職務に励むことになった。


 更に福田空軍本部長にとっては頭の痛いことがあった。

 この時期の日本に民間航空の需要等、無いといっても過言ではないのである。

 つまり、航空機メーカーは単体では、軍需に依存しなければ存在できないのだ。

 三菱も鈴木もそういった事情から、他の重工業部門の一部として航空機部門をおくことで、軍の要望に対処するという姿勢を取らざるを得なかった。

 本音としては、航空機メーカー専業で何とかしろ、と福田空軍本部長は吼えたかったが、軍にしても航空機メーカー専業で何とかなるだけの注文を、三菱や鈴木にできるものではなかったので、福田本部長はせめてもの腹いせとして、お礼の言葉は言わずに、黙って頭を下げるしかなかった。


 福田空軍本部長は、いろいろと考えた末に、海軍の航空隊(陸上機を全て空軍に委譲したとはいえ、艦上機や水上機、飛行艇は海軍航空隊の所有として認められていた)と空軍が積極的な協力体制を築くことで少しでも問題の解消を図ることにした。

 空軍と海軍の航空隊で共通、共用可能な物は全てそうする等々、やれる限りのことはやるという姿勢は徹底された。


 幸いなことに、空軍本部次長は、海軍出身の伏見宮博恭中将だった。

 また、山下源太郎軍令部長は、世界大戦時、遣欧海軍航空隊総司令官として奮闘した経歴を持っていた。

 そのため空軍と海軍航空隊の連携は、それなりに取れることになった。


 三菱と鈴木は、空軍と海軍航空隊の要請を受け、海外の航空機(エンジン等を含む)のライセンス生産を行うことで、航空機に関するいろいろなノウハウ(開発から量産の問題の解決方法等々)を徐々に蓄積していき、世界でも一流の航空機メーカーに成長することになる。


 そして、1921年にいよいよ国産軍用機の開発が始まることになった。

 日本空軍としては、(決して公言できない内心では)極めて不本意な事ながら、日本で初めて国産軍用機として開発されたのは、海軍航空機向けの艦上機だった。

 なぜなら、陸上機は外国のライセンス生産で何とかなるどころか、その方が安価で優秀な軍用機が日本空軍には確保できそうだったからだ。


 1921年2月、海軍は三菱と鈴木に国産艦上機の開発を指示した。

 鈴木にいる中島知久平は何としても鈴木で国産艦上機を開発しようとしたが、日本人での開発にこだわったことから、足元をすくわれることになった。

 三菱は、英国からソッピース社のハーバート・スミス技師を招聘し、素直にその指導を受けることで、海軍の指示に応え、10式艦上戦闘機等を見事に開発して見せた。

 このことは、皮肉にも中島に直視しがたい日本の航空界の現実を見せつける効果があった。

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