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第1章ー3

 かくして新日本空軍のトップ4人の顔ぶれが固まった。

 陸軍から3人、海軍から1人が集まる。

 陸海軍航空隊を統合して、陸軍の傘下に空軍を建設することから考えると、無難で順当に4人が集まったともいえる。

 そして、その下に着く人事を新日本空軍は、相次いで検討しては発令していくことになった。


 そのために、1920年2月現在、福田雅太郎中将は、新日本空軍本部長として空軍内の最終的な人事等を握ることになり、多忙極まりない日々を送る羽目になっていた。

 秋山好古参謀総長は、心から福田中将に同情しており、新組織を作るのは何処も大変だが、福田中将が壊れなければよいが、とまで内心では想っていた。


「できる限りのことは私もするし、田中陸相も協力するから、空軍をまともな組織にするためにできる限り頑張ってくれたまえ」

「分かりました。精いっぱい努力します」

 よもやま話をした後、最終的に福田中将は秋山参謀総長と上記のやり取りをして、秋山参謀総長の下を辞去した。


 その前後、海軍省の海相室では、山本権兵衛元首相が加藤友三郎海相と膝を交えて話をしていた。

「それにしても、伏見宮博恭中将を海軍から空軍に差し出すことを、山本元首相から積極的に言いだされるとは。私は思いもよりませんでした」

 加藤海相が首を振りながら言った。

「海兵隊の故智に学んだだけだ」

 山本元首相はにこりともせずに言った。


「海軍の大先達、西郷従道大将が、海兵隊を潰したがっていたのは知っているか?」

「それは当然」

 海軍軍人なら誰でも知っている話だった。

 元老でもあった西郷大将は、いろいろな事情から仲が悪い海兵隊を潰したがっていた。

「だが、潰せなかった。何故だと思う?」

「北白川宮能久大将のためですな。北白川宮大将は、明治天皇の義理の叔父に当たられた。北白川宮大将が甥の明治天皇に、私の居場所である海兵隊を潰さないでくれ、と直接、何度も頼まれたとか。その言葉を受けて、明治天皇も西郷大将に働きかけられたとか」

「そうだ。さすがに明治天皇には、西郷大将も逆らえなかった」

 山本元首相は、少し遠い目をしながら呟いた。


「海兵隊がここまで生き残り、4軍の中の1つになったのは、北白川宮大将がおられたからだ。それと似たような効果が、伏見宮中将が海軍から空軍に異動されることによって起こる筈だ。伏見宮中将の父、伏見宮貞愛殿下は、元帥陸軍大将でもあるしな。伏見宮中将の目が光っていては、陸軍も海軍から空軍に異動した者に対して、下手なことはできないはずだ」

 山本元首相の言葉に、加藤海相も肯きながら、話を続けた。


「それにしても、伏見宮中将の説得には往生しました。海軍に生涯を捧げるつもりでいたのに、陸軍傘下の空軍に異動しろ、とはどういうことか、と私は半分、詰問される羽目になりました」

「ほう、どうやって説得した」

「海軍から空軍に異動する多くの海軍の軍人を、君の力で護ってくれ、と言いましたら、分かりましたと」

「うまい殺し文句だな」

 山本首相は笑みを浮かべた。

「海軍の後輩たちを護ってくれと言われては、伏見宮中将も肯かざるを得なかったか」

「ええ」

 加藤海相も笑みを浮かべた。

「伏見宮中将は、空軍本部次長になることが決まっている。空軍の第3位だ。海軍出身者を護り、空軍と海軍の橋渡しを務めて下さるはずだ。日本は島国だ。陸軍と海軍、更に空軍や海兵隊は協調せんとな」

「全くです」

 山本元首相の言葉に、加藤海相は力強く肯いた。


 同じ頃、伏見宮中将は、空軍本部次長へと異動するために、身辺整理をしながら想った。

 時の経つのが早すぎる、生粋の海軍軍人として果てる予定の私が、空軍に異動するとはな、伏見宮中将は思わず自嘲した。 

次話から第2章になります。


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