表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/120

幕間ー2

「それにしても、原敬首相が暗殺され、高橋是清蔵相が後継首相になったのには驚いたが、更に加藤友三郎海相が首相になったのには驚いたな」

 一しきり、土方勇志提督の母、土方琴の回想録を読みふけった後、林忠崇元帥は、土方提督とよもやま話をしていた。


「全くですな。元老の山県有朋元帥が亡くなられたのも衝撃ですが」

 土方提督は相槌を打ちながら、考えを巡らせた。


 ワシントン会議開催直前の1921年11月4日、原首相は暗殺されていた。

 まだまだ現役首相として活躍を続けると思われていただけに、日本中に衝撃が走った。


 そして、高橋是清蔵相が後継首相に元老会議の結果、決まったが、鉄道改軌問題等から始まった立憲政友会内部のゴタゴタは、仲裁に奔走していた原首相を失うことによって完全にどうにもならなくなった。

 特に床次竹二郎は党内融和のために、あらためて高橋首相から内相にと要請されて就任したにもかかわらず、高橋首相に半公然と敵意を示した。

 こういったことから、そもそも首相の地位に熱意を示していなかった高橋首相は、1922年6月、首相の地位を放り出してしまった。


 後継首相がどうなるか、世間は注目した。

 立憲政友会内部では、衆議院で多数を立憲政友会が占めている現状から、床次内相が後継首相に選ばれるのではと観測する者が多かったが、元老の西園寺公望と松方正義、山本権兵衛の3人は立憲政友会の体たらくに失望していたことから、加藤友三郎海相を後継首相の第一候補とし、ダメなら加藤高明憲政会総裁を後継首相の第二候補として摂政(大正天皇陛下は当時、体調が悪化しており、皇太子殿下(後の昭和天皇陛下)が摂政に就任していた)の諮問に答えたため、立憲政友会は慌てて加藤海相を後継首相として認め、準与党として加藤内閣に閣外協力することにした。

 こうして、加藤海相が首相に就任することになったのである。


 そして、高橋内閣が在任中の1922年2月に元老の山県有朋元帥が亡くなられていた。

 林元帥や土方提督が聞いた話だと、それ以前から80歳を過ぎた高齢もあり、体調を崩しがちになっていたが、原首相の死に大きな衝撃を受けたことが、急激に体調を崩させてしまい、死に至ったらしい。

 林元帥も、戊辰戦争以来、山県元帥とは、いろいろとかかわりを持ってきただけに、あらためて時の流れというものを痛感させられる羽目になった。


「とりあえず、加藤首相はそれなりに頑張っているようだな。財部彪大将を海相にしたのはどうか、とわしは思うが」

 林元帥は、土方提督に話を振った。

「全くですな。本来、首相になるつもりは無かったという点では、高橋是清前首相と同じ筈ですが、加藤首相は頑張っています。財部大将が海相になるのは、海軍人事としては妥当なのですが、元老の山本権兵衛予備役海軍大将に対して、自らを首相指名してくれた礼に見えますからね」

 財部大将は、山本予備役海軍大将の娘婿である。

 財部大将自身に才能が有ったことから、山本予備役海軍大将に見込まれて娘婿に迎えられたのだが、世間では義父の威光を笠に着て出世した奴と見る人間が多い。


「このまましばらく平穏な日々が続けばいいな。内閣が次々に代わってはかなわん」

 林元帥は土方提督に語りかけた。

「全くです」

 土方提督も相槌を打った。


 2人の願いは叶わなかった。

 1923年8月末、加藤首相は大腸ガンを悪化させて、現職首相のまま亡くなった。

 そして、後継首相を誰にするのが妥当なのか、摂政からの諮問に対して、返答をどうしようかと元老間で話し合っていた9月1日昼、関東大震災が起こった。

 林元帥も被災し、土方提督は横須賀鎮守府海兵隊司令官として対策に奔走することになる。

 

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ