表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/120

第6章ー9

「日英が同盟を維持するのは、日英が中国を最終的に分割するという野望を持っているからだ。実際にチベット問題で、日英は我々や北京政権では無く、チベット政権を支持しているではないか」

 ワシントン会議当時、中国国民党や中国共産党は、中国の民衆に懸命に訴えていた。

 当時、チベットではダライラマを首班とするチベット政権が半独立政権を樹立しており、中国国民党や中国共産党どころか、北京の軍閥連合政権でさえ、チベットには事実上介入できないという現実があった。

 その現実から、チベット政権を日英は事実上認めていた。

 実際に中国を分割するつもりは当時の日英共に全く無い。

 それを言えば、ソ連が後押ししているモンゴル政権はどうなのだ、中国国民党や中国共産党は承認しているではないか、と日英が反論しても、中国国民党や中国共産党は、それとこれとは別という態度を貫いていた。


 これは、中国国民党や中国共産党の特質と言うべきではないかもしれない。

 都合の良い現実しか主張せず、都合の悪い現実は主張しない輩というのは、いつでもいるものだ。

 自分が主張する、主張しないのは自由だ、と言われては、それ以上、非難する側も言うことはできない。

 都合の悪い主張も同様に主張すべきとか下手に言うと、荒唐無稽な自分の主張も相手も同じように主張するように言いだし、言えば相手も認めていると言い、言わなければ相手が悪いという、自分が無敵な主張をするのが目に見えているからである。


 そういった現状認識から、日英は共に中国国民党や中国共産党の主張を結果的に無視していた。

 だが、真っ赤な嘘も100回言うと真実と化すと言われる。

 そして、日英同盟が存続していることは、米国の軍拡派を力づけてもいた。


「日英が連合しても対抗できるような海軍力を整備すべきだ。我が国の国力はそれを可能にしている」

「最低でも万が一の日英連合に対抗できるように、日英連合と対等な海軍力が必要だ」

 米国の軍拡派は主張していた。

 問題は、本当に米国の国力は、日英連合を上回る海軍力の整備を可能にしていることだった。

 だが、そんな軍拡を、集団安全保障の下で、日本は米国に認めるわけには行かなかった。


「冗談ではない。米国の軍拡派の主張が受け入れられたら、日本の防衛は不可能だ。日英同盟を上回るだけの海軍力を米国に保持された上に、集団安全保障の美名の下、日英同盟は廃棄される。日本は単独で、米国の海軍力に対峙することになる。米国は日本の3倍の海軍力を保持するだろう。どう見ても必敗だ」

 加藤友三郎海相は、そう考えた。

 では、どうするのが最善か?


 加藤海相は、原敬、高橋是清両内閣が潰れた後、首相に就任するだけの人物だった。

 ワシントンで、英国の外交団の代表、バルフォア首席全権と膝を交えて話し合い、幣原喜重郎全権委員を半ば強引に説得した。

 そして、当時の英国政府内では、日本が世界大戦が始まって早々に欧州に海兵隊を派兵することを表明して、その後も艦隊に、陸海軍航空隊に、とできる限りの欧州派兵を日本が行ってくれたことを、心から感謝する雰囲気が横溢しており、何としても日英同盟は維持されるべきという主張が極めて強かった。

 そのために、先日の日英米三国で協定を結ぶというバルフォア試案が、英国から日本に予め提示されていたのである。


「バルフォア試案を日英共同で、米国に提示して、米国を説得しましょう。日英同盟は表向き廃棄されるのだから、米国の軍拡派も黙らせることが出来ます。そして、日英連合に対して7割の海軍力に米国を迎えましょう」

 加藤海相は、日本の外交団をその意見で取りまとめ、英国と協働して米国を説得し、最終的にそれに成功した。 

 こんな都合のいい話が有るか、と言われそうですが。

 第6章完結後に活動報告でまとめて書きますが、史実でも英国から提案された試案に準じたものです。

 ですが、史実では幣原喜重郎が潰して、日本から日英同盟を破棄してしまい、史実の4か国条約になりました。


 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ