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第6章ー8

幕間と言うか、何故、日英同盟存続にこの世界の日本がはしったのかの事情説明回です。

 ワシントンに集った各国の外交団が頭を痛めたのは、海軍軍縮問題以外にもあった。

 今後の外交機軸をどのような基本線に置くべきかという考えに基づき、東アジアの問題に対処しようというのだが、それについての基本線で鋭い対立があった。

 集団安全保障を基本線にするのか、同盟を基本線にするのか、と言う点である。

 そして、同盟を基本線にするというのは、このワシントン会議の当時、極めて旗色が悪かった。

 なぜなら、世界大戦が発生したのは、同盟によるものであり、同盟は却って平和には有害ではないのか、という主張が極めて強かったからである。


 実際、第一次世界大戦の開戦経緯を見ると間違った主張とも言い切れない。

 独墺同盟と露仏同盟の対立が背景にあったために、墺皇太子の暗殺によって、世界大戦にまで至ったというのは、確かに一面の真理だった。

 そして、日本国内でも日露戦争において、日英同盟により日本が勝てたというのも事実だが、そのために戦争に飛び込んだのも事実だ、更に世界大戦で日本軍が欧州まで派遣されたのも事実だ、このままいくと英国が世界各地で紛争に巻き込まれた際に、日本は軍隊を英国の傭兵のように派遣せざるを得なくなるのではないか、という声が高まっていた。

 ワシントンで日本の全権委員を務め、後に外相を務める幣原喜重郎も、同盟を外交の基本線とすることについて内心では懐疑的だった。

 では、集団安全保障を基本線にするのは、妥当なのだろうか。


 結論から言うと、この当時の東アジアの問題への対処に、集団安全保障を基本線にするというのは、後知恵を承知で言うならば、実際には夢物語でしかなかった。

 何故なら、集団安全保障は、敵味方全ての国のためのルールを作って、それを全ての国が守っていきましょう、そうすれば平和になりますよ、というものだからである。

 では、ルールを守らなかったり、自分勝手に解釈したりする国が現れたら、どうするのですか、という問いに対しては、それは自力で対処してください、という答えがこの当時は返ってくる(下手をすると、そんな問いを発すること自体が、集団安全保障否定論になる。)。

 そうなると、どこかの国がルール破りを図ると、他国も自衛のための軍拡が止まらなくなり、却って戦争が拡大してしまうのである。


 そして、今回の場合は、中国にルールを守るつもりが毛頭ないのだから、東アジア問題に対処するのに集団安全保障ではどうにもならないのである。

 何故なら、中国政府にしてみれば、中国にある英米日等の各国利権の全面返還を求めており、それは各国がルールとして絶対に呑めないものだからだった。

 香港を中国に、日米共同経営している満鉄も中国に返還せよ、それを中国の主権として尊重せよと中国政府に言われては、幾ら親中の米国政府と言えど、同意はできなかった。

 それならば、中国はルールを守りません、と中国政府がいうのだから、各国による集団安全保障が成り立つわけがない。

 米国は太平洋という障壁があるので、集団安全保障でも事実上問題は無いのだが、日本はそう言うわけには行かなかった。

 そうなってくると、同盟を基本線として、中国に対して、日本は外交を行わねばならない。

 では、同盟国が日本にあるのか、といえばあるというのが、皮肉な話だった。


 それも、英国だった。

 太陽の沈むことが無いと謳われる大国である。

 日本の同盟国として申し分が無いどころか、日本から頭を下げて同盟を維持すべき国だった。

 だが、大きければ大きいだけ、日本の国内外にいろいろな波紋を引き起こすことになる。

 日本の国内世論は、世界大戦の反動で廃棄論が強かった。

 そして、日本の周囲の国家に与える影響も大きかった。

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