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第6章ー7

 紆余曲折を極めた末、各国は次のように(巡洋)戦艦を保有することになった。


 日本:扶桑級2隻、金剛級4隻

 米国:テネシー級2隻、ニューメキシコ級3隻、ペンシルベニア級2隻、ネバダ級2隻、ニューヨーク級

    2隻、ワイオミング級2隻、フロリダ級2隻

 英国:クイーン・エリザベス級5隻、リヴェンジ級5隻、レナウン級2隻、フッド

   (なお、アイアン・デューク級4隻、タイガーを予備艦として保有)

(仏伊は省略)


 トン数比率で言えば、英:米:日:仏:伊は、5:5:2:1.75:1.75となる。

 量はともかく、質で言えば、日本は満足すべき結果と言えた。

 何しろ米国は巡洋戦艦を保有していないのに、日英は巡洋戦艦を共に保有できた。

 数話後で詳述するが、日英同盟は事実上維持されており、万が一の際には、日英が巡洋戦艦を活用した遊撃戦を行うことを米国は警戒せねばならないが、米国に対抗艦が無いのである。


 米英は共に海軍内に不満が残る結果となった。

 米国は、メリーランドを廃艦にせねばならなかったし、日英は全て超ド級(巡洋)戦艦なのに、フロリダ級やワイオミング級は12インチ砲が主砲のド級戦艦である。

 質的には米国が一番不利だった。

 英国にしても、キング・ジョージ5世級3隻やオライオン級4隻といったまだまだ使える超ド級戦艦を廃棄せねばならなかった。

 世界大戦が無ければ、と英国海軍軍人の多くが陰で泣いたという。


 次に問題となったのは、空母の取り扱いだった。

 戦艦に準じたトン数比率で、各国が保有することは早々に決まったが、その内容で大揉めに揉めた。

 特に日米は、建造中の戦艦を空母に改装することにこだわった。


「何としても伊勢級戦艦2隻を、空母として保有することを我が国に認められたい。我が国の国力を振り絞って建造し、進水までしているのだ。空母を0から建造する費用や手間を考えると」

 伊勢級戦艦を空母に改装して保有することについて、加藤友三郎海相は、演技では無く、実際に会議の場で、涙の余り、絶句して訴えたという。

 この点に関しては、米国も同様だった。

 コロラド級以下の建造中の16隻の戦艦を全て建造中止にして廃艦にするのは、米国の海軍軍人にとって断腸の思いだった。

 せめて、1隻でも空母として、この世に生まれさせたかった。


 1万トン以下の空母は枠外とする(これによって、世界で初めて空母として建造され、完成した日本の空母「鳳翔」は、ワシントン条約の対象外となった。)。

 また、建造中の戦艦を空母に転用することは2隻まで認め、その場合、1隻が3万3000トンまでであれば、1隻2万7000トンの枠を超えてもよい。

 外交上の荒技(裏技)を入れまくり、日本は伊勢級2隻を、米国はレキシントン級2隻を空母に転用して保有するという妥協が何とか成立した。

 そうしないと、伊勢級も空母にするにはきつかったし、レキシントン級に至っては空母として保有できない公算が大きかったからである。

 また、航空戦艦と言う代物にされないために(実際に、加藤寛治提督は、実際には発艦できない偽装甲板を伊勢級に搭載して、14インチ砲8門を搭載した空母だと言い張って保有しようと提案し、加藤海相に叱り飛ばされた。)、空母に搭載する主砲は8インチまで等の制限も掛けられた。

 最終的に日本の空母の対米比率は5割となった。


 全ての妥協が成立した夜、加藤海相はほっと一息を吐いて、やっと安眠の夜を迎えることが出来た。

「これで、日本は安泰だ。日英同盟も実際には維持できたしな。海軍の主力艦の規模は、財政規模からいうと、日本にとってこれが妥当な範囲だろう。外交によって日本は独立を護るべきなのだ」

 加藤海相はしみじみと言った。 

 ワシントン海軍軍縮条約における戦艦と空母の保有比率が決まりました。

 次話からは、中国を中心とする東アジア問題について、日英同盟を中心とする各国の対応が中心になります。

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