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第6章ー6

 どこまで主力艦(戦艦)の保有が認められるのか。

 各国の駆け引きが行われます。

 英米日仏伊の5か国の主力艦の保有数を決める会議は開始早々に大荒れになった。

 各国それぞれの思惑が食い違っていたからである。


 現状で最も超ド級戦艦を保有しているのは言うまでもなく英国だった。

「現状の超ド級戦艦の保有数、またはトン数に応じて保有比率を決めるべきだ」

 表向きは、英国の代表団は主張した。

 だが、英国経済が世界大戦の結果、疲弊しきっているのは公知の事実だった。

「英米対等が落としどころだろうな」

 英国の代表団は、内心でそう考えており、各国も英国の腹の内をそう見透かしていた。


 米国としては、建造中の16インチ主砲搭載の超ド級(巡洋)戦艦をできる限り保有したがった。

 既にかなり建造が進んでおり、完成の暁には質量共に世界を圧倒できる戦艦群である。

 また、米国の経済力はその保有を苦も無く可能にしていた。

 だが、米国以外の各国がそれを呑むわけが無かった。

「冗談ではない。金剛級をあらゆる面でしのぐレキシントン級巡洋戦艦に、長門級が歯が立たないサウスダコタ級戦艦を米国が保有することを認めたら、日本海軍内の強硬派が激怒して、ワシントンから私を呼び戻すに決まっている」

 日本の代表団の一員として参加している加藤友三郎海相は、知人の英海軍の軍人にこぼした。

 その想いは、米国以外の海軍軍人全てが共有するものだった。


 日本の立場は微妙だった。

 日本は諸般の事情から準ド級戦艦から超ド級戦艦へと一足飛びに戦艦の質を改善させていたからである。

 強硬派の顔を立てるために、加藤海相は加藤寛治提督をワシントンに同行させていた。

「ある程度は、金剛級より古い河内級戦艦等を保有して、対米比率を挙げるべきだ」

 加藤提督は、加藤海相にそう主張したが、加藤海相はいい顔をしなかった。


「河内は爆沈して、摂津しかなく同級艦がないので、使い勝手が悪い。鞍馬級や筑波級も主砲数が少ない。そんな戦艦を保有するくらいなら、英米に対して更なる軍縮を迫った方がよい。コロラド級戦艦を戦わずして沈める方が日本にとってマシだ」

 加藤海相は、加藤提督らにそのように言って、量より質の維持に腐心することにした。


 仏伊もいろいろと主力艦への制限に不満を示した。

 特に仏は伊と同数の保有と言うことに感情的な猛反発を示す有様だった。


 上記のような事情が絡み合い、各国代表団は、各国の保有する主力艦の保有数、比率につき甲論乙駁の激論の日々を送ることになった。

 お互いの激論に疲れ、少しずつ妥協されていく中で、最大の難関になったのが、米戦艦メリーランドの保有を米国に認めるかどうかだった。


「メリーランドは既に完成しており、何としても我が国の保有戦艦として認められたい」

 米国の代表団は挙って主張した。

「世界最大最強の16インチ主砲を搭載した戦艦を米国だけが保有する等、許されるものではない」

 米国以外の英日仏伊の代表団は一致団結して、メリーランドの廃艦を主張した。


「メリーランドの廃艦を米国が呑むのならば、我が国は扶桑級戦艦2隻、金剛級戦艦4隻にまで積極的に軍縮に応ずるつもりである。米国は海軍軍縮に応じるつもりはないのか」

 加藤海相は、米国代表団に主張し、日本の暗号解読疑惑を逆用して、米国世論に対して、日本が軍縮に率先して応じているのに、米国代表団は軍縮会議を主催しながら、軍拡を進めようとしているというイメージ戦略に打って出た。

 この様子を見て、米国世論から、メリーランドの廃艦に応ずべきとの声が挙がり出した。

 軍縮会議の主催国が、自国の軍拡を主張して、軍縮会議を決裂させるのはどういうことだ、ということである。

「分かりました。メリーランド廃艦を呑みましょう」

 終に、米国は止む無く廃艦に応じた。

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