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第6章ー5

ワシントン会議の背景説明回です。

 さて、ハーディング米大統領が1921年秋にワシントンで各国の外交団を集めて会議を開こうとしたのは、主に2つの理由があった。

 第1に、海軍の軍拡競争に歯止めを掛けたいという想いである。

 第2に、中国を中心とする東アジアの秩序維持である。


 1917年以降、米国はダニエルズ・プランに基づき大量の戦艦、巡洋戦艦の建造を計画していた。

 議会とのやり取りの末に、戦艦10隻、巡洋戦艦6隻(全て16インチ砲を主砲とする)を3年間で建造しようとしたのである。

 つまり、毎年5隻以上の戦艦又は巡洋戦艦を建造するのである。

 そして、米国でその予算は成立した。


 これを見て慌てたのが、日英だった。

 英国は当時世界第一位の数の戦艦を保有していたが、15インチ砲を主砲とする戦艦が最大で、16インチ砲を主砲とする戦艦を持っていなかった。

 そして、第一次世界大戦の戦費は、英国経済をガタガタにしていた。

 何とかして、米国の軍拡を止めたかった。


 また、日本も、第一次世界大戦で陸海軍を欧州に派兵したために疲弊しており、毎年、戦艦を5隻どころか、2隻を作るのがやっとだった。

 それでさえ、議会からもう少し減らせないのか、という声が挙がる有様だった。

 4年に渡る世界大戦が終わり、平和になって軍事費が減り、減税と言う平和の配当が与えられる筈が、戦艦整備のための軍事費の更なる増大のためにもっと増税するとあっては、日本国民の多くも、さすがに軍拡には消極にならざるを得なかったのである。

 原敬内閣は、米国に対して軍拡を止めるよう、訴えるようになった。


 そして、米国自身も、無制限な軍拡には世論が反発するようになった。

 こういった背景から、英日米三国の政府は主力艦の数に制限をお互いに掛けようということになった。

 こうして、英日米の三国の思惑が一致したことから、仏伊も参加しての海軍軍縮会議がワシントンで開かれることになった。


 一方、中国を中心とする東アジア情勢については、米英日の思惑はある程度、一致していた。

 米国は門戸開放宣言を宣言しつつ、日米による満鉄共同経営等を行っていた。

 日本の軍事力を背景にして、日米で満州、韓国を経済的植民地化していたのである。

 そして、日米は、その食指を山東半島を新たな拠点とすることで、華北にも延ばそうとしていた。

 英国は、香港を拠点として、華南、華中を既に事実上の勢力圏としている。

 つまり、英米日にとって、中国は乳と蜜の流れる土地として、事実上分割されていたのである。

 そして、袁世凱の死後、名目上は中国の正統政府となった安徽派、直隷派、奉天派といった軍閥諸勢力を英米日は表看板とすることで、中国利権の維持を図った。

 だが、異分子が起こりつつあった。


 孫文率いる中国国民党や、陳独秀率いる中国共産党の出現である。

 彼らは中国の民族主義者を基盤とし、ソ連等の援助を受けて、英米日を排除し、中国の民族統一国家を建設しようとした。

 義和団事件や五四運動を見てきた英米日は、彼らを抑え込む必要を感じた。

 下手に中国に手を出すと、義和団事件の経験からすると泥沼になりかねない。

 火種は火種の内に消せる限り、消してしまおうと考えたのである。

 この動きに、中国に利権を持つ他の諸国も乗った。

 また、軍閥諸勢力も英米日をバックに就けられることから、この動きに噛むことにした。


 最終的に中国問題につき、英米日以外に、フランス、イタリア、ポルトガル、オランダ、ベルギー、韓国の6か国の代表団もワシントンに集うことになった。

 また、上記の理由から軍閥諸勢力から成る中国政府も代表団をワシントンに送った。

 この動きに、当然のことながら中国国民党や中国共産党は猛反発を起こすことになる。

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