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第6章ー1 ワシントン会議

 新章になります。

 この世界のワシントン会議は、どうなるでしょうか。

 1921年秋、原敬内閣は近々開かれるワシントン会議の基本方針を決めるための閣議を開いていた。

 軍部の意見も重要なために、参考人として秋山好古参謀総長や山下源太郎軍令部長も特に同席している。


「主力艦の保有数をどう定めるかが重要な論点の一つとなっている。海軍の存念を伺いたい」

 原首相の問いかけに、山下軍令部長と目で会話した後、加藤友三郎海相は答えた。

「海軍としては、英米両海軍といえど無視できないだけの主力艦の確保を求めます」

「具体的には、どのくらいを考えているのか」

「おそらく、英米の主力艦数は対等と言うことになるでしょう。その主力艦数の4割は最低でも必要です。それだけの主力艦を、日本海軍が確保できれば、日本は大国として発言力を発揮できます」

 加藤海相は、そのように言った。


 さて、このように加藤海相が発言した背景には、日本の戦艦数が極めて現状では劣勢であるという認識があった。

 海軍内の加藤寛治提督以下の対米戦に備えた戦艦を整備すべきと言う派閥に言わせれば、日本が世界大戦に参戦した結果、日本海軍は極めて劣勢な状況に置かれてしまっていたのである。


 1921年秋、本来ならば日本は超ド級戦艦、または巡洋戦艦を10隻保有している筈だった。

 金剛級巡洋戦艦を4隻、扶桑級戦艦を2隻、伊勢級戦艦を2隻、長門級戦艦を2隻である。

 更にそれ以上の戦艦、又は巡洋戦艦を4隻建造中の筈だった。

 だが、世界大戦で日本が欧州に陸海軍を派兵したことが、その予定を大幅に狂わせた。


 世界大戦で軍関係の予算が払底した結果、不急と考えられた戦艦や巡洋戦艦の建造は大幅に遅れた。

 具体的には、扶桑級戦艦の2番艦「山城」の建造は世界大戦終結まで停止となり、伊勢級戦艦以下は着工もされなかった。

 世界大戦が終結したことで、直ちに海軍は遅れていた戦艦の建造再開を求めたが、予算がすぐに全て通る訳もなく、世論も世界大戦終結に伴う平和の配当を声高に求めた。


 そのために1921年秋、金剛級巡洋戦艦4隻、扶桑級戦艦2隻は何とか完成させていたものの、伊勢級戦艦2隻は何とか進水段階で、長門級戦艦2隻は着工したばかりという惨状に日本海軍はあった。


 こうした状況の下、加藤海相は山下軍令部長と話し合い、このワシントン会議において、日本海軍の規模を対英米4割とすることにしたのである。

 実際問題として、現在、各国で保有している戦艦の量に応じて、戦艦の比率がワシントン会議で決まる可能性が高かった。

 本来的には、伊勢級戦艦や長門級戦艦も入れた比率を日本海軍は主張したかったが、それを行うと、米海軍は建造中の16インチ砲(巡洋)戦艦16隻を、米海軍の保有枠として認めるように主張する可能性が高かった。

 コロラド級戦艦は、当初14インチ砲を主砲として考えられていたが、英国が15インチ砲戦艦を主力としていたために砲力不足と言う指摘があり、16インチ砲を主砲として採用している。

 その後の米国の(巡洋)戦艦は、全て16インチ砲を主砲として採用していた。

 そうなると日本海軍は16インチ砲戦艦2隻を保有するのに対し、米海軍は16インチ砲戦艦10隻に加えて、16インチ砲巡洋戦艦6隻を保有するということになる。

 特に金剛級巡洋戦艦は、砲力、速力共にレキシントン級巡洋戦艦よりは劣位の巡洋戦艦になってしまうので、どう考えてみても、日米海軍の戦力比は、日本海軍にとってより不利になってしまう。

 加藤寛治提督らを宥める為にも、日本海軍が伊勢級戦艦や長門級戦艦を保有することを諦める代償として、米海軍に16インチ砲戦艦の保有をしないように求めるのが妥当である、と加藤海相らは考えたことから発言していた。

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