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第5章ー9

 鉄道改軌問題だけを見ると、軍部は原敬首相率いる立憲政友会に敵対的だったように見える。

 しかし、実際には軍部は立憲政友会の施策について是々非々の態度を執っている。

 もし、単純に立憲政友会に軍部が敵対しているだけなら、原首相は世論に訴えて、自らの施策を軍部が妨害していると訴えることもできたし、立憲政友会も一丸となって対応していただろう。

 だが、軍部は、原首相の視点からすれば、狡猾にも一部の施策には反対、一部の施策には積極的に賛成と言う態度を執った。

 そのために、立憲政友会所属の代議士も、己の所属する立場に応じて、軍部の主張に激しく反発する者、軍部の主張に媚びる者と対応がそれぞれ微妙に分かれることになった。


 このことによる影響は多大なもので、原首相率いる立憲政友会による政党政治が、原、高橋是清の2代で潰れてしまったのは、軍部への対応で立憲政友会が割れてしまったのが大きい。

 そして、このことは立憲政友会に対する世論の失望を招き、政党内閣の復活も1924年のことになり、立憲政友会に対する世論の不信から、加藤高明率いる憲政会主導で政党内閣が復活することになる。

 立憲政友会は、陸軍を取り込むことで、何とか復活を果たし、1927年に田中義一総裁が首相に指名されることで、完全な立て直しに成功するが、このことは、吉野作造らに立憲政友会は初心を完全に失ったと嘆かれることにもなった。


 実際、田中総裁の死後、犬養毅が後継総裁になるが、犬養毅は立憲改進党結成時からの立憲改進党党員であり、中国進歩党、憲政本党、立憲国民党等と渡り歩いたが、基本的には反自由党、立憲政友会を唱え続けた存在で、立憲政友会に当時所属していたのも、長年の同志の今後を託すために止むを得ず、当時率いていた革新倶楽部の同志と共に立憲政友会へと合流したというところがあった。

 本来から言えば、犬養は立憲民政党に政治的な立場からすれば所属するのが相当なのだが、憲政本党所属時代の因縁等から、近親憎悪が高じてしまい、立憲民政党の前身である憲政会も犬養もお互いに宿敵視するようになっており、最終的には、1925年に犬養は立憲政友会に長年の同志と共に参画することになったのである。

 そんな外様の犬養が1929年には立憲政友会の総裁になり、後に首相にまでなることになる。

 立憲政友会の1920年代の混迷が如何に酷かったか、如実に物語るに足りる話の1つである。


 さて、話を戻すと、軍部と立憲政友会がまず仲良く進めたのが、産業の拡充だった。

 何故なら軍部にしても、世界大戦のような国家総力戦に突入した際のために、今後の産業の拡充が必要不可欠なことは認識していたからである。

 また、これは世界大戦後の反動不況対策と言う側面もあった。

 戦争という特需が無くなってしまったのだ、その反動から世界的な不況に落ち込み、それに日本も巻き込まれることは止むを得なかった。

 それに対処するために、原内閣は、産業及び通商貿易の振興を掲げ、軍部もそれに積極的に賛同した。


 そして、国防の拡充という点については、特に本来の陸軍について、量よりも質的な充実が叫ばれた。

 何しろ、目の前に世界大戦の英仏米の兵器等の無償供与により、完全自動車化され、戦車等も装備できた海兵隊が存在するのである。

 陸軍も海兵隊並みの装備を持つべきだ、とブリュッセル会所属の陸軍若手士官達は叫んだし、それに多くの陸軍の将官も賛同した。

 そして、産業の拡充と協働して、英仏米等と質的に同等の兵器の大量生産能力をいざという時には持てるようにということが、主に陸軍内から求められた。

 原首相は、この要求を受け入れ、積極的な産業改善策を採用した。

 史実からかなり変わっているはずなのに、内閣の流れが何故か史実通りぽくなっていてすみません。

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