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第4章ー陸軍と海兵隊の改革

第4章の始まりです。

 世界大戦で大量の血を流した経験から、大規模な再編制に陸軍と海兵隊は取りかかっていた。


 まず、海兵隊は4個海兵連隊を基幹とする小規模なものになる予定だった。

 その代り、全ての常設部隊は完全自動車化される。

 機動性の高い部隊で紛争発生時(具体的に主な任務として想定されているのは中国での邦人保護)に柔軟に対処する。

 だが、その規模では対処しきれない場合もある。

 陸軍に協力を求めることになるだろうが、中国で泥沼の紛争に突入することも考えられた。

 いろいろと考えられた末、海兵隊は世界大戦時と同様に最大時4個師団に拡張できるようにせねばならないということになった。

 だが、いろいろと頭の痛い問題をこの事は引き起こした。


「予備役下士官は、退役時に伍長勤務上等兵となる兵を増やすことで対処するとしても」

「問題は予備役士官だな」

 黒井悌次郎軍令部次長と鈴木貫太郎海兵本部長は会話していた。

「士官をそうそう増やすわけにはいかないが、世界大戦時に被ったような大損害をもし被るような事態を想定するとなると、予備役の士官もある程度は海兵隊自身で抱えておかないと」

「世界大戦時には、陸軍が欧州に基本的に赴かなかったので、陸軍から士官を派遣してもらって何とかなったが、中国で泥沼の紛争に突入するという最悪の事態が発生した場合、陸軍も派遣されるでしょうから、海兵隊自身で何とかしないと」

 黒井軍令部次長と鈴木海兵本部長は頭を抱え込んでしまった。


 ちなみにこの世界では、陸軍の階級呼称を、基本的に海軍も採用している。

 海兵隊が陸軍と共同行動することが多いので、陸軍と海軍の階級呼称は共通化されたのだ。


「同じようなことを陸軍も危惧しているのでは?」

「確かにそうだな」

「秋山好古参謀総長の下で、世界大戦の戦場を経験した士官の声が陸軍内で高まっていると聞く」

「田中義一陸相はともかく、秋山参謀総長は欧州で共に共闘した仲だ。秋山参謀総長に相談してみるか」

 黒井軍令部次長と鈴木海兵本部長は、秋山参謀総長にも相談してみることにした。


 相前後して、秋山参謀総長は陸軍の大再編制に取り掛かっていた。

 当時の陸軍19個師団全てに戦車1個中隊、自動車化歩兵1個大隊を配備しようとする計画である。

 当然、費用が掛かるが、人員削減で対処するつもりだった。

「各師団から歩兵1個連隊を削減し、その部隊を戦車1個中隊、自動車化歩兵1個大隊に置き換えるというのが基本的方針だ」

 秋山参謀総長は、田中陸相に説明した。

「全部で19個歩兵連隊を削減しようというのか」

 田中陸相は目を剥いた。

「軍旗返納となると大騒動になるぞ」

「軍旗と近代化と、どちらが大事だ」

 秋山参謀総長は、田中陸相を叱り飛ばした。

「しかしだな」

 田中陸相は唸った。


 軍旗は、各連隊ごとに天皇陛下から賜るもので、天皇陛下の分身とされるものである。

 連隊を廃止するとなると、その軍旗は天皇陛下に返納される。

 だが、そうなるとその連隊に所属等して関わりのある士官達から自分達の連隊は残せ、と強い反対論が予想されることから、田中陸相も躊躇うことになったのである。


「師団という箱は残すのだから、それでいいだろう。文句を言う奴には、削減される歩兵連隊は近く偵察連隊に改編されるとかいって誤魔化してしまえ」

「確かにそうやって言いくるめるか」

 田中陸相は取りあえず納得した。


 陸軍内もそんな感じで、いろいろと大規模な改革を進めようとしていた。

 

 鈴木海兵本部長が海兵隊を代表して、秋山参謀総長の下を訪ねたのは、お互いに世界大戦の戦訓を踏まえた改革試案を、上記のように検討している1919年の晩秋のある日の事だった。

 秋山参謀総長は、鈴木海兵本部長を歓迎した。

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