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第2章ー5

 この世界では、韓国は独立国で、第一次世界大戦で連合国の一員で参戦し、日本の青島要塞攻防戦に援兵を押しかけ派遣等しています。

 第3部で少ししか描写ができず、本当にすみません。

 実際、ヴェルサイユ条約は独にとって過酷極まりない条約だった。


 独の国土の13パーセントが、ヴェルサイユ条約により仏、ベルギー、ポーランドに割譲されることになった。

 失われる人口こそ10パーセントに過ぎなかったが、農業生産では15パーセント、工業地帯に至っては20パーセントを独は失うことになった。

 せめて、オーストリアと合邦できれば、と独政府は思っていたが、ヴェルサイユ条約は独とオーストリアとの合邦を禁じていた。

 つまり、民族自決主義を訴えて、オーストリア=ハンガリー帝国を解体しながら、独が民族統一国家をつくることは禁止するという、米英仏等の連合国は二枚舌を公然と使ったのである。


 また、独帝国が築き上げてきた海外領土と植民地は全て没収された後、国際連盟の統治下におかれ、更に日本等に委任統治されることになった。


 独に科せられた賠償金は、ヴェルサイユ条約調印時では結論が出ずに青天井状態で、1921年5月1日にようやく決まったが、その額は1400億金マルクに達した。

 これは、日本や韓国までが、独からの賠償金の支払いを求めたためである。

 日露戦争で賠償金を得られなかったことから、国民が暴動寸前になったのを覚えていた日本政府としては、この際、独に充分な賠償金の支払いを求めざるを得なかった。

 また、韓国もシベリア出兵の戦費に窮しており、独からの賠償金でシベリア出兵の戦費の埋め合わせをしようと言う目論見があった。


 更に、独にとって深刻だったのは、軍備を大幅に制限されたことだった。

 陸軍は10万人以下、全部で10個師団以下とされ、小銃や野砲等の数や銃砲弾の数まで細かく制限が掛けられた。

 栄光に輝く参謀本部は完全解体され、消滅させられることになった。

 言うまでもなく、戦車や装甲車、毒ガスの保有も禁止である。

 海軍も1万5000人以下、準ド級戦艦6隻を筆頭に魚雷艇まで含めても36隻に軍備は制限された。

 つまり、ド級戦艦や潜水艦の保有は禁止である。

 そして、軍用航空機の保有は禁止された。

 つまり、独は空軍の保有が許されないことになったのである。

 それだけでは安心できないとして、独では航空機のエンジンや部品に至るまで製造や輸入は禁止と言う措置が取られた。

 これでは、独国内で大規模な暴動が起こった際に、最終的に軍を投入することによる国内の治安維持さえもできかねないと言う事態をもたらしていた。

 当然のことながら、これを遵守していては、仏どころか、チェコとの戦争でさえ独は必敗である。


 こういったヴェルサイユ条約の詳細が独国民に判明するにつれ、愛国心から独国民の間でヴェルサイユ条約に対する憤激や怨恨は高まる一方と言う事態を、ヴェルサイユ条約は生み出すことになった。

 英仏を中心とする連合国が、独をいじめているという被害者感情が、独国民には高まる一方となった。

 こういったことが、独軍の再軍備を独の国民の多くが暗黙の裡に支持するという事態を生み出した。


 そして、余りにも高額な賠償金の支払いは、独にハイパーインフレをもたらした。

 更にそれに対する対応策が十二分に講ぜられて、独経済が回復する前に世界大恐慌が起こった。

 こうしたことが、独国民にますます恨みと復讐心を高めることになり、終には1930年代にナチスの台頭と言う事態を独にもたらし、第二次世界大戦を最終的に引き起こすことになる。


 フォッシュ将軍と林忠崇元帥は、まだそこまでのことは当然、予測していない。

 だが、余りにも苛酷な条件を相手に突きつけることは逆効果になることを軍人の感覚から理解していた。

 そのために2人はヴェルサイユ条約の将来に不安を高めつつ、会議の場を去ることになるのである。 

 これで、第2章は終わりです。

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