第3話 旅路の仲間
新キャラの登場です。
訓練の内容を聞かされてから約三ヶ月経った。訓練内容は大体5種類に分かれて教えられ、座学・適正武器・適正魔法・基礎・模擬戦の順番にみっちりと教えられた。ただし、座学には基礎体力をつけるための運動や自分のスキルの把握等もしなければいけなく楽には終わらなかった。
座学は、歴史や生活上で必要なものを教えられ、適正武器では各々にあった武器を見つけ鍛え、適正魔法では魔力を知り、それぞれの属性ごとに集まり鍛え、基礎では武器と魔法を使いっての動き等を、模擬戦では呼んで字のごとく1対1だけでなく集団戦や、1人対数人と模擬戦をしたりと、怪我の絶えない生活をしていた。
怪我が絶えないとはいえど、その都度魔法で回復されるため傷が残るようなことなどはなかった。
そして今全員がこの世界で生きていくうえで最低限の力は身につけられただろうと判断され、旅に出るかこのまま残るかを決めるために、訓練の説明をされた大教室にやってきている。
旅に出るのならある程度の賃金と周辺の地図、武具、飲食物等が渡される。残る場合は訓練を続けたり、国の警備等をしてもらうそうで、残った場合でもいつでも外に出ることは可能らしい。
外に出るものは前に行くそうなのだが、見渡す限りおよそ全体の一割が前に行っているようだ。
もっとも、残りの座っている人の中には目にひどい隈ができているものから目が死んでいるもの、何かぶつぶつ言っている者までいる。
あれ、これ大丈夫なの。と思わなくもないがそれは半分も満たないの人で、他は恐怖心等が理由でここから出ないようだ。
永護と凛は外に出たいので前に行き現在並んでいるのが、ふと目の前にこちらに来てから何故か見かけることがなかった親友の姿が見えて声をかけた。
「あれ?もしかしてヒロ?」
「っげ」
「あらら、最後の最後で見つかっちゃったね」
永護が声をかけた相手、広末雪はうめき声を上げて壊れた機械のようにこちらを向いた。
ユキの横にいるのは、唯風真央という名前でよくアキと一緒にいる。
その真央はアキの肩を叩いてはドンマイと言って笑っている。
「はぁ、やっぱりお前か」
「なんだよその顔は、まるで俺が嫌われているみたいじゃないか」
「嫌うも何も、お前といると厄介事が僕にも降ってくるから嫌なんだよ」
ユキはそう言うとまた一つため息を付いた
「でも、見つかったんだからかけは私の勝ちだね」
「覚えてたのかよ。はぁ、分かったから好きにしてくれ」
「賭け?」
永護と同じく会話についていけなかった凛が疑問を投げつける
「えっとね、賭けの内容はここを出るまでエー君とりっちゃんに見つかるかどうかで勝負して負けた方は勝った方の言うことを一週間聞くんだよねー」
「そんでもって、今お前たちに見つかったというわけだ」
「なんでまたそんな賭けをしたんだ……」
「だってさ、ユイがお前らと一緒に外行こうって言うじゃん?でも行ったら確実に厄介事あるじゃん?巻き込まれるじゃん?」
「人を疫病神みたいに言うなよ」
「納得」
「っちょ、凛まで!」
「っと、いうわけで私達もついて行っていい?」
「おう」
こうして永護の旅路に新たなメンバーが加わった。
「そういえばなんで俺はお前らを見かけなかったんだ?」
翌日の早朝、太陽が顔を見せ始めた時間帯に国を出て草原を歩いている中ふと疑問に思ったことを聞いてみた
「あぁ、僕の場合は多分隠形とかの上位スキルのおかげだな」
「私は隠形と注意をそらすスキルおかげだと思うよ-」
「てことは2人とも常に使ってたんだね」
「まぁ、確かに自分の部屋以外では使ってなかったな」
「よくやるなお前ら、疲れないのか?」
「「いや?全然。いつも通りだし」」
索敵ほどではないが隠形も自分に合っていないだけなのか何時間も使用するのは精神的厳しい。
ましてや、この2人ときたら隠形の上位スキルや違うスキルも併用してるのに平気ということは、やっぱり性格とかも関係有るのだろう。
実際俺自身、息を潜め続けたりするのが苦手なわけだし。
「そういえば、ユキの武器ってなんなんだ?」
「ん?何ってこれだけど?」
そう言うとユキは現在もなお杖として使っているものを見せる
「杖?」
「杖で合ってるよ。ホントは素手か棒が良かったんだけだな-」
「なんだっけ、棒は槍の先端を折ったものしかなかったんだっけ?素手に関しては手甲のサイズが合わないとかなんとか」
「あー確かになさそうだなサイズ」
「うるさい!僕はまだ成長期が来てないだけだ!そもそもユイだって同じ理由じゃないか」
「私は女の子だからいいんですぅ」
ユキの怒声は反響するわけでもなく、ただ虚しい時間を作っただけだった
ユキの身長は高校二年生なのだが156cmしかなく、手となると小学生高学年と同じぐらいの大きさしかない。
ちなみに永悟が178cmで凛が166cmもあり真央が155cmでもう少しでユキは真央に抜かされてしまう。
そんな身長の兵士がいるわけもなく手甲はお預けとなった
草原のど真ん中、と言っても舗装された道路から少し外れた場所に4人の人間がいた。言わずもがな永護たちである。
永護は少し明るい黒色の髪を短めに切っていて、鋭い目つきと鍛えられた体格に加え、程よく焼けた肌が威圧感を助長している
初対面の人が自分を見てビクビクして接されるのが最近の悩みらしい。武器は片手剣では少し軽かったようで両手剣を腰に差している
凛は腰に届くほどの黒の髪をくくることなく後ろに流している。整った顔立ちと発育の良さから綺麗という印象を与える
学園祭で友人に頼まれ教室の前で動くことなく座っていた所、もともと白い肌のせいか人形と勘違いされ少し傷ついたとか。武器は小さめ の片手剣で同じく腰に差している
真央は凛とは対照的に黒に近い茶色をした髪をセミロングと言われる長さで整えて、性格もそうだが見た目もさっぱりしている。出る所が出ておらず、少し焼けた肌をしているためにスポーツ少女という印象を与えている
実はスポーツは基本的に好きではないのに運動部の勧誘が止まないことが悩みらしい。武器は本人が合気道や柔道を習っていたことから、 基本的には素手なのだが手甲のサイズがないようなのでメイスを手に持ってユキと同じように杖のようにして歩いている
そしてユキは金に近い茶色の髪を真央と同じぐらいまで伸ばしており、いつもどこか気だるそうにしている。雪のように白い肌や体格もそうだが声も中性的な声をしているためよく少女と勘違いされる。
女と間違えられるのは慣れたようだが時々、小学何年生?と聞かれるのと男子トイレが中々使えないことが悩みのようだ。本人曰く、成長期が来ていないとのことだが内心では諦めており、来世に期待している。武器は仕方がなく杖を使っているが歩くときに便利ということに気づき気に入っている
はたから見れば男1人に対して女3人のパーティは話を続けながらも草原を歩いていた。ユキのスキルによると2時間ぐらい歩いているようで一旦休憩をとっている。
目指す場所は2つ離れた国でなぜそこを選んだのかというと外に出る殆どの人が1つ隣の国に行くというのでそれならばということで真逆のしかも2つも離れていれば滅多に目的地が被ることはないだろうと考え目的地となった。
目的地の名前は別名、傭兵の国と呼ばれているイルビ。永護が図書館で調べた所このイルビという国が傭兵の国と呼ばれているのは、傭兵を育てる機関が充実しており、たくさんの傭兵を育て他の国へと派遣したりするところからその名がつけられたようだ。傭兵と言っても荒事専門の者たちではなくどちらかと言うと何でも屋という認識が強いようだ
永護たちは当分の間そこを拠点として活動をしてできたらその教育機関に入学できたらいいなと考えている。
「あっ永護、1回これ飲んでみて?一応水なんだけど」
これからどうやってお金を稼ごうか悩んでいる所、ユキが何かを思い出したように水筒に入った水を差し出してきた
「ん?あぁいいけどって、なんだこれ!なんで水がこんなに美味いんだ!?」
「おいしい」
「なんでこんなに美味しいんだ?」
出て行く時に貰った水はただの水でこんなに美味しくはなくなぜただの水がここまで美味しいのか首を傾げる2人
その2人を見ていたずらが成功したかのように笑うユキは残り少なくなった水筒に手をかざした
「この水はね、僕の魔法なんだよねーほら」
そう言うとユキは見やすいように水筒から手を離すと手のひらから水を球状に出した
「水魔法の一種で飲水を出せるんだ。便利でしょ?」
「いや、たしかに便利だが……」
「ユッキーはこういう子なの」
便利ではあるがせっかくの魔法をそんなことに使っていいものか分からず悩んでいた永護に真央が悟ったかのように呟いた
「よっし、それじゃさっさと行くか」
「そうだね」
「ういー」
「ほら、立ちなさい」
1時間ほどの休憩を取り全員の疲れがある程度取れたところで再び歩き出した
「あっちょっと待って」
目的地まで後3分の2もあるので気を引き締めるために永護が一声かけようとすると急に立ち止まり、制止の声を上げたユキが急に姿を消した
「おい!ユキ!?」
「ユキちゃん!?」
「あー大丈夫、これがユッキーのスキルだから」
急に消えたユキに驚いて大声を上げてしまった2人だが真央の説明のおかげか少し冷静になった所にユキが現れる……手に何か狼のようなものを持って
「拾った」
「「「捨てなさい!!」」
「んで、何があったんだ?」
正座しながらも尚、狼を抱え撫で続けているユキに永護が問いただす
「えっと、歩こうとしたら索敵スキル?で弱ってるこの子を発見したから、行ってさっきの水与えたら懐かれた」
狼に顔を舐められ楽しそうなユキを見ている一同はここで捨てろと言うのに罪悪感を感じ躊躇っていると真央がユキに近づいた
「はぁ、ちゃんと面倒見なさいよ?後名前をつける」
「やったね、んーよしっルーでいい?名前」
「ウォン!」
ルーと名付けられた狼はしっぽを振りながら大きく吠えた
こうして一行に新たな仲間?が増えた
遠目から見たら、というか近くでも見てもハーレム?